マーケットでよく聞く、目にする、気になる新語、造語、トレンドワード集

トレンドワード一覧

「ユーロキャリートレード」

かつて一世を風靡した円キャリートレードは、その調達通貨を日本円から米ドルに鞍替えし、ドルキャリートレードと呼ばれ、今度はユーロを調達通貨とするユーロキャリートレードが流行の兆しに。

1999年、バブル崩壊後の日本銀行は政策金利を史上最低となる0.15%とし、世界に先駆けてゼロ金利政策をスタートさせました。その後一時的にわずかな金利引き上げを挟むものの、2000年代はほぼ、世界最低金利を維持し、キャリートレードの格好の調達通貨としての地位を築きました。
低金利の日本円を調達し、高金利の通貨を買ったり、円よりも高い利回りの通貨建ての株や債券を運用したりすることで利鞘を稼ぐ取引が流行し、円キャリートレードと呼ばれました。
FX(外国為替証拠金取引)が広まったことで、日本国内の個人投資家による円売り米ドル買いや豪ドル買い、英ポンド買いなどの取引も増加し、円安を助長することにもつながっていきます。

しかし、2007年以降、サブプライムショック、リーマンショックと続く世界的金融危機により円キャリートレードの巻き戻しが急速に進みます。日本円が一斉に買い戻されることで、今も続く円高へとトレンド転換していきます。
2008年12月には米FRBも政策金利を0~0.25%とするゼロ金利政策をスタート。日銀も同時期に0~0.1%とし、実質金利差のなくなった米ドルと日本円ではキャリートレードの意味がなくなり、日本円とともに米ドルも調達通貨とされはじめ、ドル売りユーロ買い、豪ドル買いなどのドルキャリートレードも増加していきます。

そして2011年以降のギリシャ危機から始まるユーロ債務危機問題の拡大により、通貨ユーロに対する不安も高まり、ユーロ売りが加速するなか、2012年7月になってようやくECBも政策金利を0.75%と史上最低レベルに引き下げ。
金利の数字だけを見ると米ドルや日本円に比べてユーロの政策金利はまだ高そうにも見えますが、民間の金融機関が中央銀行の当座預金に預ける際の金利は、米FRBが0.25%、日銀は0.1%、ECBは0%。それでなくとも金融不安拡大中のユーロ圏の銀行にとって追い打ちをかけるような仕打ちとも。
一部の資金は日米の国債などに流れる可能性も指摘されています。

ともかくゼロ金利となって以降、ユーロキャリートレードとも見られるユーロ売りは加速しており、対ドルでも対円でも年初来安値を更新し、対豪ドルでは史上最安値を更新するなどユーロ全面安の状態が続いています。その勢いは一時的なものかもしれませんが、ユーロ不安自体が収束方向に向かわない限り、ユーロ安の流れもそう簡単には収束しそうにありません。

ただ、ユーロキャリートレードが進めば進むほど、巻き戻しに転じた時のユーロ買いの勢いには要注意かもしれません。
かつての日本円のように・・・

最終更新:2012年07月17日

関連ワード
銀行同盟 ユーロ共同債 欧州安定メカニズム(ESM) 
関連記事
200日移動平均線をめぐる攻防で見る温度差(2015/08/27)
ユーロキャリートレード巻き戻しとなったユーロドルの場合は、方向は逆で8月21日に昨年6月以来、1年2カ月ぶりの上抜け。2...
生保の外債購入と円キャリートレードで1ドル100円は通過点か(2013/04/09)
ユーロキャリートレードに代わって、円キャリートレードが今年のトレンドとして復活しそうです。 週明けのNY市場、金は...
円キャリートレード拡大で円安の流れは継続か(2013/01/22)
ユーロキャリートレード」のように短命で終わることはないのではないでしょうか。 国内金価格はターゲット到達後の小動き...

マーケットを動かしたキーワード・トレンドワード、2014年回顧

2013年流行語大賞~マーケット編~

2012年流行語大賞~マーケット編~


ページの先頭へ