2010年7月、米国ではリーマンショック以降の金融危機の反省を踏まえて健全な市場への復活を目指し、金融制度改革を図るドット・フランク法(ウォール・ストリート改革および消費者保護法)が成立。この法案は金融改革の為の規制監督の強化などを中心に15項目からなるもので、そのうちの一つに「ボルカー・ルール」があります。
元FRB議長のポール・ボルカー氏の起案であることから命名されたボルカー・ルールは、自己勘定取引(銀行や証券会社などが自分の資本で行う高リスクの取引)を銀行に対して規制することと、リーマンショックの反省から「大き過ぎて潰せない」銀行をつくらないようにする、という2本の柱からなるものです。
このボルカー・ルールについては、FRB(米連邦準備理事会)などによる調査期間を経て具体的な規制を策定して公表、移行期間をおいて適用、という予定となっていました。しかし、厳し過ぎる規制内容(米国の金融機関が外国の国債を買うことも難しくなる等)への批判が国内外で高まり、2012年7月21日の実施が困難となり、2012年4月時点でFRBは適用先送り(2年間延長)を決定。
米銀行大手、JPモルガン・チェースも銀行の利益が上がらないことを理由にこの規制に反対していました。
ところが2012年5月に同行の巨額損失問題(金融派生商品の取引の失敗で44億ドルの損失を計上)が発覚。
後日バーナンキFRB議長は、もしボルカー・ルールが施行されていれば、違った結果になっていた可能性があると指摘。
しかしながら、過度の規制は銀行の資金抱え込みを促進し、新興国などからの資金引き上げや、ひいては世界経済停滞の促進につながってしまう危険性を孕んでいる、という見方もあります。
なお、統廃合の進む米銀行数は2007年末の8,500行から2012年3月には7,300行へと減少しているのに対し、大手4行(JPモルガン、シティ、バンカメ、ウェルズファーゴ)の総資産合計は6.1兆ドルから7.8兆ドルへと増加し、米銀行全体に占める割合も54%から60%へと拡大しています。
「大きくて潰せない」銀行化は進んでいるようです・・・
以上2012年7月16日作成
以下、2013年12月11日追記
米規制当局は2013年12月10日、ボルカー・ルールの最終案を公表。
銀行の自己勘定取引は禁止され、一方で顧客のために行うマーケットメーキングは例外として妥当な範囲内で認め、特定のリスクをヘッジする取引もそれを証明することで認められることに。また、外国政府が保証する証券や海外中央銀行が発行する証券も適用除外。
外国銀行については、リスクの所在が米国外であることを条件に自己勘定取引を認め、米国機関との取引については特定の状況に限り認めることなどを決定。
連邦準備制度理事会(FRB)や証券取引委員会(SEC)など関係5機関全てが承認し、2014年4月1日規制施行、順守期限は2015年7月21日に。
最終更新:2013年12月11日
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