更新日:2014年12月28日(日)
<2014年最初の市場混乱要因、新興国通貨安リスク>
2013年12月のFOMCでFRBがテーパリング開始を決定したことを受け、1月末のFOMCでは1回めの量的緩和規模縮小が行われました。テーパリング開始が市場の懸念材料となっていた前年5月以降、フラジャイル・ファイブと呼ばれた脆弱な5カ国を中心に対ドルでの新興国通貨売りが進行しやすい状況となっていました。そんな背景から、アルゼンチンペソの急落を引き金に新興国通貨安が進行。1月末にはトルコ中銀の4.50%から10%への大幅利上げなど、新興国では通貨防衛策としての政策金利引き上げが相次ぎました。
<長期リスク要因となったウクライナ問題>
EU圏とロシアとの間に位置するウクライナでは従来から親ロシア派と親EU派との対立があり、親ロシア姿勢を強めたヤヌコビッチ政権への反発から首都キエフでは親EU派による反政府デモが前年末から続いていました。2月に政権崩壊という形でデモが収束したのが、ウクライナ問題拡大と長期化へのきっかけにもなりました。3月にはロシア系住民が多いクリミア半島をロシアが併合。さらにウクライナ東部でも親EU派と親ロシア派との衝突が激化。ウクライナ上空でのオランダ航空機撃墜などの巻き添え事故もあり、親ロシア派への後方支援をするロシアへの西側諸国の非難は高まり、経済制裁合戦へ。
クリミアの住民投票が行われた3月16日の翌日、17日にはNY金相場は一時2014年高値となる1,392.6ドルまで上昇。
<南アフリカのプラチナ鉱山スト>
近年では恒例になりつつある、南アフリカの鉱山労使問題のこじれからのストライキ。今年は1月末から6月末までの5カ月間と異例の長期間、この間プラチナ相場は上昇傾向に。スト終結直後の7月10日、プラチナ相場はこの年最高値1,523.8ドルを記録。ここから年末にかけて1,200ドル前後へと急落。
<歴史的小動きが続いたドル円相場と新たな労働指標続出>
為替は年初の1ドル=105円40銭台からドル安円高傾向でスタートし、2月4日にはこの年最安値となる100円75銭を記録。約1ヶ月間で記録した高値と安値を更新することなく、101円台から103円台までの狭いレンジでの値動きが8月まで継続。長期金利の低迷も続き、米国の雇用統計での好結果にもドル買いがそれほど進まず、ニューノーマル、ニューニュートラル、長期停滞論なども話題に。また、2014年1月からFRB議長に就任したイエレン氏は労働市場のたるみを指摘。ペントアップ賃金デフレが懸念され、U6失業率などの詳細指標を含めたイエレン・ダッシュボードと呼ばれる、米雇用状況の判断材料をまとめた指標が注目されました。さらに、これまでFRB内部指標とされていたLMCIの公開も決定。新たな労働指標によって、好結果が続いた雇用統計への注目度を分散させようとしていたかのようにも見えるイエレンFRB議長の言動は、マーケットの過熱感を警戒していた様子も。
<QE終了と早期利上げ観測台頭+日銀追加緩和とGPIF>
テーパリング終了が見込まれていた10月が近づき、その後の利上げフェーズへの移行時期への注目度が次第に高まる夏場。8月後半にはFOMC議事要旨の内容から、利上げに向けた議論が判明したことでドル高の流れがようやく再開。月末にはドル円相場が1月以来7カ月ぶりの104円台へと上昇。と同時に金相場はこの年最後の1,300ドル台割れへ。
9月に入ると日本の内閣改造、ECBの利下げ、米国の早期利上げ観測台頭などを背景にドル高円安が一段と進行し、月末には109円台へ。金相場は1,200ドル割れ目前へ、プラチナ相場は5年ぶりの1,300ドル割れへ。
10月末には予定どおり米国のテーパリング完了、さらに黒田日銀の追加緩和にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオ変更という円安要因も重なり、ドル高円安の流れが加速。
<日米金融政策ギャップと原油相場急落>
1年弱かけて量的緩和政策を縮小・終了し、2015年には政策金利の引き上げ開始へと向かう米FRBと、量的緩和政策を継続・拡大した日銀との金融政策ギャップが拡大したこの1年。さらに欧州景気の低迷も続き、ECBでも利下げや緩和政策を進め、年明けには国債購入へも踏み切る可能性も示唆。円安にユーロ安も加わり、ドル独歩高の流れに。
ドル高の流れが急速に進んだ年後半、11月初旬には金相場はこの年最安値1,130ドルまで下落。
ドル高に伴って下落したのは金相場だけではありませんでした。原油相場も夏以降、米国のシェールオイルの台頭などに伴う需給バランスの崩れから下落基調が進み、11月末のOPEC総会で原油減産が見送られるとさらに急落。対象的に上昇したドル円は121円台の高値まで上昇、しかし原油急落に伴うロシア・ルーブルの急落、経済危機懸念にリスク回避の流れも。なお、ロシア中銀が政策金利を10.5%から17%へと緊急大幅引き上げするなど自国通貨防衛策に奔走していた影で、やはりフラジャイル・ファイブを中心とする新興国通貨安も進行していました。とりわけ経済情勢が弱いブラジルや南アランドの通貨は年初来10%超の下落に。節目節目で新興国通貨安リスクは必ず発生します。
12月の米FOMCでは2015年半ば以降の利上げ開始の可能性が示唆され、日米金融政策ギャップをさらに拡大させる結果に。反発基調にあった金もプラチナも急反落、マーケットがやや混乱状態となっら12月後半には、プラチナ相場は年初来安値を更新する1,170ドル台まで下落しました。
米国の金融政策転換へと向かう流れと、これに伴う新興国不安や相次ぐ地政学リスクなどが交錯した2014年。前者の影響によるリスクオン傾向優勢の状態で新年を迎えます。
2014年12月28日(日)時点の相場
国内金:4,880 円 12/26(金) ▲11(0.23%)
国内プラチナ:4,938 円 12/26(金) ▲24(0.49%)
NY金:1,195.3 ドル 12/26(金) ▲21.8(1.86%)
NYプラチナ:1,218.5 ドル 12/26(金) ▲27.4(2.30%)
ドル円:120.39 円 12/26(金) ▲0.24(0.20%)
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