更新日:2015年8月1日(土)
米労働省が発表した4-6月期の雇用コスト指数(ECI)は前期比+0.2%。予想の+0.6%を下回り、統計開始後で最低の伸び率となりました。予想外の大幅鈍化にマーケットの流れは一時、大きく逆流することになりました。
この雇用コスト指数(ECI:Employment Cost Index)、イエレンFRB議長が重視している指標ということで最近注目度が高まっている指標で、米労働省から四半期毎に発表され、前期比伸び率の数値が注目されます。雇用コストの7割を賃金が占めると言われており、賃金上昇率とも密接な関係にあります。6月には、5月分の雇用統計で平均時給が上昇傾向を示したことを受けて、イエレン議長は「雇用コスト指数の伸び率拡大と平均時給の上昇は明るい兆し」と発言していました。これが先日のFOMC声明文での労働市場への評価引き上げの背景の一つとなっていたはずです。
雇用コスト指数は、世界金融危機となった2009年第1四半期に過去最低の前期比+0.3%に落ち込み、それ以降は2000年代前半の好調時の最低水準0.6までの間で揉み合う状態での低迷が続きました。賃金上昇率が2%前後で低迷しているのと同じ状況です。
2014年第2四半期には、雇用コスト指数は低迷期上限の0.6を超える0.7まで上昇し、2015年第1四半期までこの水準が続いたことが「明るい兆し」につながっていました。しかし、今回発表された2015年第2四半期分が過去最低水準を更新する急落となったことで、「明るい兆し」が再び遠のいてしまう兆しにもなりかねない状況となってしまいました。雇用コストの伸び率鈍化は賃金上昇率鈍化を招き、インフレ上昇圧力鈍化へとつながることになります。
この雇用コスト指数はしばしば乱高下し、今回の急落も一時的との見方もあるようです。しかし、第3四半期の数字を確認するなら利上げは12月。FRB内部からも聞かれ始めている9月利上げに向けては明らかな逆風となり、イエレン議長の判断にも影響が及びそうです。
31日のNY金相場は0.6%高となり4日ぶりの反発。米GDPの見直しで上半期の経済成長がまずまずの好調だったことを背景に9月利上げの声も高まり、欧州時間にかけてのドル高進行で金は下落。7月24日につけた終値ベースの今年安値1085.5ドルを下回ると、一時1080ドルのサポートラインも下抜け、今年最安値1072.3ドルを記録した24日以来1週間ぶりの安値となる1079.1ドルまで下落。しかし、雇用コスト指数の予想外の結果に急反発。今度は戻り高値となった7月27日終値1096.4ドルを超え、一時1100ドルの上値抵抗水準も突破して1102.8ドルまで上昇。2時間ほどの間に上下の節目を突破する乱高下を経てレンジ内に収束。この夏5回連続5度目の安値更新は回避も、この夏初の戻り高値更新にも失敗し、レンジブレイクの攻防は8月へ持ち越し。
週間ベースでは+9.4ドル(0.87%)の小幅高となって6週間ぶりの反発。月間では-76.9ドル(6.56%)の大幅続落。
プラチナ相場は0.49%の反落。金に連れ安の流れでは1週間ぶりの安値水準となる973ドルまで下落し、一時的に970ドル台半ばのサポートライン割れ。反発局面では抵抗水準になりつつある990ドルラインを超えて一時995.7ドルまで上昇。結局、上下の節目トライ後に元の水準へ。急落再開リスクを抱えた状態でのゆるやかな反発基調のまま8月へ。
週間では+4.3ドル(0.44%)となり、4週間ぶりの小反発。月間では-93.6ドル(8.68%)の大幅安で2月から6カ月続落。
ドル円は4日ぶりの反落となる0.19%のドル安円高で124円割れ。雇用コスト指数下振れで124円30銭台から123円50銭台まで80銭もの急落後は再び124円近辺へと持ち直して7月を終了。124円台前半のレジスタンスラインを超えられず、123円台前半のサポートラインにも支えられる状態のまま8月へ。
週間ベースでは+0.1円(0.08%)とわずかにドル高円安。月間ベースでは+1.41円(1.15%)の反発。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場7/31終値とチャート
2015年8月1日(土)時点の相場
国内金:4,653 円 7/31(金) ▼38(0.81%)
国内プラチナ:4,235 円 7/31(金) ▼3(0.07%)
NY金:1,094.9 ドル 7/31(金) ▲6.5(0.60%)
NYプラチナ:985.0 ドル 7/31(金) ▼4.9(0.49%)
ドル円:123.91 円 7/31(金) ▼0.23(0.19%)
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