更新日:2016年8月5日(金)
Brexit後の混乱を警戒し、イングランド銀行(英国中銀、BOE)のカーニー総裁は夏場の追加緩和を示唆していましたが、7月時点では現状維持で8月緩和への可能性を示唆。今回は予想通りの利下げに加え、国債の買い取りプラグラム規模を3750億ポンドから4350億ポンドへと拡大。さらに投資適格級の社債100億ポンドの買い入れも決定。2009年3月以来7年5カ月ぶりの利下げと量的緩和の拡大、さらに社債も追加と、量・質・金利の3次元緩和を決断しました。
2年前には利上げも噂された状態から、めまぐるしく状況が変わり、遂には史上最低金利をさらに引き下げて3次元での金融緩和を決行。この間、カーニーBOE総裁の発言のブレも指摘され、猫の目発言などと揶揄されることも。
さすがに今回はBrexitによる影響も懸念され、実体経済への影響こそまだ表面化してはいないものの、今後始まるEU離脱交渉への警戒感なども考慮しての予防的意味合いも含めての迅速な決断、となるのかもしれません。
また、英国の金融政策委員会(MPC)の委員の過半数が年内0%水準への利下げを見込んでいるとされ、カーニーBOE総裁は「BOEは必要ならさらなる利下げができる」と、さらなる緩和も示唆。年後半にかけて、Brexitによる悪影響が見られ始めるようなら、すかさず追加利下げでゼロ金利付近までの利下げが見込まれることになります。
昨年12月以来、米国の政策金利据え置き状態が続いている間、世界の主要中央銀行は今年、全面緩和状態が続いています。
ECBは政策金利を年初の0.05%から0.00%へと引き下げ、中銀預金金利を-0.30%から-0.40%へとマイナス金利の深掘り。これに続いて日銀でも中銀預金金利の一部にマイナス金利を適用し、3次元緩和を推進。先日には質的緩和を拡大し、ETF購入枠を倍増。
オーストラリアでも先日の利下げで年初の2.00%から1.50%へ、2度の利下げで0.50%の引き下げ、かつての高金利通貨国も今は昔。ニュージーランドも2.50%から2.25%へと引き下げて、追加利下げの可能性も。
緩和政策の波は一部新興国にも波及し、インドでも年初の6.75%から6.50%へ、インドネシアは年初の7.50%から4度の利下げで現在6.50%でインドと同水準。ロシアでも11.00%から10.50%へと利下げ。
唯一、引き締めフェーズへの移行を模索する米国でも年内は現状維持となる可能性もあり、世界同時金融緩和政策は今年後半にかけても続き、追加緩和、追加利下げの可能性はあちらこちらで聞かれます。
世界的緩和全盛と実質ゼロ金利国拡大によって、ゼロ金利の金をサポートする状態はまだまだ続きます。
4日のNY金相場は0.2%の小幅反発。東京時間の日本株高・円安の流れに伴うドル高傾向に押されて1350ドル台半ばまで下落、調整局面進行の兆しを英国の3次元緩和に下支えされ、切り返して1370ドル台へと急反発。下ヒゲ陽線を形成し、9-21日移動平均線もゴールデンクロス、チャートだけを見れば高値トライ再開への意欲満々の状態。しかしこの週末は雇用統計次第で短期的な流れが一変する可能性も。予想を下回る結果となれば高値更新の可能性が高まり、1390ドル前後が当面の上値目標水準に。ネガティブ度合いが予想以上なら、勢い加速で1400ドルの大台トライ、当面の目標水準としては2013年後半高値1420ドル付近が意識される展開も。ポジティブな結果となれば1350-1330ドル辺りまでの反落も。
NYプラチナ相場は0.39%の小幅続落。BOEの緩和政策への反応では金に付き切れず、結果的に調整と呼べる最低水準の調整が進行。6月末から途中一服をはさんで1カ月以上続いた上昇トレンドの勢いも失速状態にあり、雇用統計でのポジティブな結果をきっかけに調整幅が拡大する可能性も。その場合の目安水準としては1130ドル前後から場合によっては1100ドル付近を目指すような展開も。逆の展開で高値更新トライに成功すると、目先の上値目安としては1190ドル前後。
ドル円は101円台前半を中心に揉み合い状態。東京市場では日経平均が寄り付きから300円下落して午後には元の水準以上へと切り返す展開に追随し、100円80銭台まで下げて101円60銭台まで反発。岩田日銀副総裁の「総括的検証の目的は早期2%達成のため、緩和縮小はあり得ない」などの発言に加え、日銀の追加緩和に伴い、ETFを前日の倍増となる約700億円買い入れていたことも株価を下支え。間接的に円高の流れを食い止めた可能性も。BOEの利下げに伴うポンド売りの影響での円高傾向も限定的となり、雇用統計待ちへ。低調な結果で100円80銭台を割り込めば100円割れを試す展開へ、好結果なら102円台前半が目先の抵抗水準、超えると103円台後半を目指す反発基調へ。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/4終値とチャート
5日の国内金価格は0.3%の小幅高で3日ぶりの反発。価格水準と90日までの移動平均線が上下80円弱のレンジに集中し、その下で平行推移状態の200日移動平均線まで含めてたレンジでも110円強という状態。ここから年後半にかけて大きな流れが発生する前兆となってきた可能性も。短期的にはゆるやかな下落トレンド進行中で4700円前後まで下落の可能性は残される状態。今回の雇用統計で極端な悪化は想定し難い状況で、移動平均線の収縮状態は今しばらく続きそうな気配も。しかしその先には、波乱の8月相場がいずれ訪れることにも。
週間ベースでは-52円(1.08%)で続落。
プラチナ価格は0.37%の反落。6月末から500円以上も水準を切り上げた短期急上昇トレンドはほぼ終息、高値圏での保ち合い形成のなかで下押し圧力も徐々に高まる状態へ。予想外のネガティブ材料などをきっかけに反発の可能性もあり、4050円の節目突破の場合には高値更新で4120円近辺への再トライへ。4000円の大台割れとなれば調整局面進行で目先の目安として3950円前後。
週間ベースでは-27円(0.67%)の小反落。
※参考:金プラチナ国内価格8/5とチャート
2016年8月5日(金)時点の相場
国内金:4,747 円 8/5(金) ▲14(0.30%)
国内プラチナ:4,020 円 8/5(金) ▼15(0.37%)
NY金:1,367.4 ドル 8/4(木) ▲2.7(0.20%)
NYプラチナ:1,165.0 ドル 8/4(木) ▼4.6(0.39%)
ドル円:101.21 円 8/4(木) ▼0.04(0.04%)
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