更新日:2017年8月8日(火)
FRBは8月3日時点で労働市場情勢指数(LMCI)の更新中止を決定しました。4月3.8、5月3.3、6月1.5となっていた7月発表値が最終データとなり、2014年10月からイエレンFRB議長が市場とのコミュニケーション用に公開していましたが、任期満了を控えてのイエレン指標の公開終了に一抹の寂しさも覚えるところです。
賃金上昇率低迷など、LMCIの数値を大幅に悪化させる指標も目立ち始め、時代の流れとともに実態にそぐわない状況となってきたこともあり、LMCIはもはや米国の労働市場の情勢変化を的確に示してはいないと判斷した為、という趣旨のようです。
実際に毎月の発表データは過去全般に渡って修正が繰り返されていたこともあり、納得の決定と言えます。
労働市場関連指標として、比較的最近注目度が上がっているものに、「製造業雇用者数(前月比増減数)」があります。
トランプ大統領が製造業復活を大々的に掲げていることにより、その注目度が上がってきているのだろうと思われます。しかし、先進国の製造業では時代の流れとともに機械化やロボットの導入などによる省力化、効率化、工場の海外移転などでコスト削減を図ることが当然のように行われています。製造業の雇用者数自体が減少していくことは、ある意味必然の流れのようにも思われます。
米国の非農業部門雇用者数の総数の推移を見ると、今年7月時点で1億4661万5千人。そのなかで製造業雇用者数は1242万5千人。製造業の占める割合は8.47%。
総数ではリーマンショック時の減少分を全て回復し、過去最大更新が続いていますが、製造業では1980年頃がピークとなり、1990年代から2000年代にかけて急減し、その後さらにリーマンショックで急減。その後の回復傾向も極めて限定的となっています。
なお、製造業雇用者数のシェアでは、1943年にピークの38%、1981年12月までは20%以上で推移し、1984年には19%、1993年11月まで15%を維持し、2001年11月まで12%、2007年8月まで10%となり、これ以降は1桁台の推移が続きます。
トランプ大統領は今年2月に米国の製造業トップと会談し、「中国が世界貿易機関(WTO)に加盟(2001年12月)して以来、米国内で7万もの工場が閉鎖され、北米自由貿易協定(NAFTA)締結(1992年12月17日署名、1994年1月1日発効)以来、米製造業の3分の1の雇用が失われた」と批判し、製造業復活をかけて保護主義に走ります。
本格的に製造業の雇用者数増を目指すのであれば、ある程度の設備投資も必要となり、その効果が表れるまでには相応の時間も要することになります。
近年の非農業部門雇用者数(NFP)全体の前月比増減数の推移と、製造業雇用者数の増減数の推移を比較すると、明らかに製造業雇用者数の伸びは下振れやすく、低調な状態が続きます。トランプ就任後の2月には前月比+2万2千人と好結果を記録しましたが、それ以降は+1万1千人、+9千人、+-0人、+1万2千人、+1万6千人と伸び悩みが続きます。
いずれ、トランプ効果が出始めたとしても、製造業で失われた数百万人の雇用者数を取り戻すことはトランプ大統領の任期中には不可能と思われます。また、トランプ大統領の恫喝を受けて一部国内回帰する工場などは、トランプ大統領の任期終了とともに再び海外へと逆流することも考えられます。
製造業雇用者数の大幅増を図ろうとする政策は、時代の流れと現在の実態にはそぐわない政策であり、いずれこの、製造業雇用者数の数値自体もそれほど注目されなくなることになるのかもしれません。
7日のNY金相場は前週末からほぼ変わらず、わずかに0.01%高となって4日ぶりの小反発。月初のイベント通過後で夏休みシーズン入り、注目指標も少ない週明けは市場全体が静かに経過。セントルイス連銀ブラード総裁とミネアポリス連銀カシュカリ総裁の2大ハト派総裁からのハト派発言も従来からの主張どおりの内容で材料視されず。1260ドル台での小動きに終始したこの日の金の値幅4.3ドルは過去5年での最低水準。1240ドル台から1280ドルまでのレンジが目先の主要レンジで保ち合い推移の様相、上抜けなら今年高値更新トライへ、下抜けなら1200ドル台が意識される展開へ。
NYプラチナ相場は0.27%上昇し、8日続伸。8日続伸となるのは昨年7月以来、1年1カ月ぶり。4月21日(977.6)以来、3カ月半ぶりの高値水準到達もこの日の高値では前週末の高値を超えられず、短期上値目安となっていた970ドル近辺到達後の一服感も。さらに上値を伸ばすためにはいったん調整も必要となり、7月安値から8月高値の23.6%戻しとなる950ドル半ば辺りまでが程良い目安に。金との価格差は4月5日(288.9)以来4カ月ぶりとなる293.1ドルまで縮小。
ドル円は前週末からほぼ変わらずの110円70銭台で横ばい推移。上値は90銭台まで、下値も60銭台までと値動きは極めて限定的となり、30銭にも満たない値幅は6月23日以来で今年2番めの小動き。ドル安の流れに一服感はあるものの、完全に反転した状況でもなく、目先は110円から111円までの小幅保ち合いで水準的には上限付近に位置し、上方向へと抜け出せば112円近辺までの反発継続へ、下方向へ110円を割り込むようだとドル安の流れ再開で4月安値圏108円半ばまでが意識される展開へ。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/7終値とチャート
8日の国内金価格はわずかに1円高となって4日ぶりの小反発。4830円の節目を突破して4900円台を目指す上昇トレンドスタートへのトライはいったん失敗し、調整後の再トライに期待する状況に。ただし下押し圧力もそれほどなく、小幅保ち合いのなかで方向感を見出す展開へ。目先、大きくは4750円台から4830円までのレンジ内で4790円台から4810円台までが主要レンジとなりつつある状態に。
プラチナ価格は0.16%の小幅高で7日続伸。5月29日(3690)以来の高値を更新し、昨年11月の米大統領選前までに記録した11連騰に次いで9カ月ぶりの続伸記録。長期保ち合いブレイクに伴う上昇圧力はそれなりに大きく、目標水準3710円台までもうひと伸びの余地。ただしこれ以上の続伸は過熱感急騰も伴い、NYプラチナの一服感も気になるところ。
※参考:金プラチナ国内価格8/8とチャート
2017年8月8日(火)時点の相場
国内金:4,801 円 8/8(火) ▲1(0.02%)
国内プラチナ:3,683 円 8/8(火) ▲6(0.16%)
NY金:1,264.7 ドル 8/7(月) ▲0.1(0.01%)
NYプラチナ:971.6 ドル 8/7(月) ▲2.6(0.27%)
ドル円:110.73 円 8/7(月) ▲0.01(0.01%)
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