更新日:2018年1月11日(木)
日銀は2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入し、年間60-70兆円ペースでのマネタリーベース増加を決定し、2014年10月の追加緩和で国債買い入れペースを年間80兆円へと拡大しました。その後、2016年2月には当座預金の一部にマイナス金利を適用し、さらに2016年9月には10年債利回りを0%近辺に抑えるいわゆるYCC(イールドカーブコントロール)を導入しました。
その結果、現在の金融政策の枠組みは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という複雑怪奇な名称となっています。
次から次へと追加緩和政策を打ち出しながらも、残念ながら物価目標未達の状態は続き、そうこうしているうちに米国では金融政策正常化に向けて利上げフェーズが進行し、ECBでも量的緩和のテーパリングと出口が近づく状況となり、景気回復基調にある(とされる)日銀にも出口論が噂され始めます。
そんな状況下で日銀が9日の金融調節で超長期国債買い入れオペを減額したことをきっかけに、にわかに日銀のテーパリングや金融政策変更への思惑が台頭し、円高圧力も高まり始めました。
なお、日銀のマネタリーベースの増加量は2017年1月を最後に前年比80兆円を割り込み、2017年12月時点では前年比47.7兆円まで縮小しています。既に初期段階の「量的・質的金融緩和」の年間増加目標水準を大きく下回る水準まで減額されています。この1年間で、いわゆるステルス・テーパリングがかなり進行していることになります。
ただし、「量的・質的を含む長短金利操作による金融緩和」政策へと実態は変更され、「量的」部分は重要ではなく、YCCがメインの金融政策となっています。
今朝時点でおよそ半年ぶりに0.08%台まで上昇してきた日本の10年債利回りが0.1%台へとさらに上昇するか、あるいはETF購入の減額が検討されるようなら、本格的に出口に向けての政策変更が意識されることにはなりそうです。
いずれにしても、日銀の出口戦略も今年の主要テーマの一つとなる可能性はあり、市場の警戒要因の一つとして今後も度々円高圧力が高まる場面も訪れることにもなりそうです。
10日のNY金相場は0.43%高で3日ぶりの反発。1310ドル付近での揉み合い状態から、欧州時間に中国の米国債購入減額検討報道を受けて米長期金利が急騰。悪材料による悪い金利上昇との思惑からかドル売りが急進したことに反応してNY金は急騰。一時9月15日(1338.2)以来ほぼ4カ月ぶり高値となる1328ドルまで上昇し、1320ドル近辺まで戻して落ち着いた状態に。年初までの急騰の調整局面中に突発的な材料によって無理矢理押し上げられた格好に。ドル安基調がもう一段進行する可能性もあり、年初の今年最高値を更新したNY金は調整局面も早めに切り上げて上値トライ再開への可能性も視野に。1310ドルから1320ドル半ばまでの小幅保ち合いを形成し、上抜けできれば1340ドル前後までの一段高も想定され、逆に下抜けた場合には調整継続で1290ドル前後までが当面の下値目安に。
NYプラチナ相場も0.67%の反発。金の急騰に連れての上昇局面では8日につけた今年最高値979ドル台まで上昇。終値では今年高値更新も高値では更新出来ず、980ドル手前の水準を何度も試して押さえられる状況。今朝も970ドル台後半を維持して上値トライ継続の様子も見られるものの、980ドルラインに上値を押さえられ続けるようなら調整も。NY金が調整方向に動けばプラチナの調整目安は950ドル台辺りまで。
ドル円は1.08%の大幅ドル安円高となり、11月27日(111.09)以来1カ月半ぶりのドル安円高水準。東京市場では前日からの日銀テーパリングの思惑を受けての円高基調で112円前半へ、欧州市場スタートで112円割れ、さらには中国の動向報道をきっかけにドル安急進となって111円前半へと急落。NY市場での横ばい推移を経て今朝の東京市場では若干の反発も111円半ばの水準を超えられない状況。節目の112円を完全に割り込んでしまったことでドル安円高方向への流れがもう一段進行する可能性。下値最大目安は11月高値からのN計算値で109円台。(114円70銭台から11月安値110円80銭台までの値幅3円90銭、12月高値113円70銭から3円90銭下落すると109円80銭台)その手前、12月安値110円80銭台でサポートされるかどうか。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場1/10終値とチャート
11日の国内金価格は0.41%の続落。NY金の反発ではカバーし切れない円高となって調整局面継続。上昇幅の23.6%戻し(5065)を達成したことで調整レベルとしては適度な水準の範囲にも到達。円高ドル安基調がもう一段進行するか、NY金の高値保ち合いからの下振れなどで下方圧力が強まるようなら38.2%戻し(5025)近辺まで調整幅拡大も。
プラチナ価格は0.08%の小反発。地合いの強さを示すように下げ渋り、金との価格差は過去最大となった年末の1444円から1343円まで100円の急縮小。3750円の今年高値更新へと向うようなら次の上値トライ目標は3800円の大台ライン付近まで。もう一段の調整進行なら23.6%戻しの3672円近辺までが下値目安に。
※参考:金プラチナ国内価格1/11とチャート
2018年1月11日(木)時点の相場
国内金:5,057 円 1/11(木) ▼21(0.41%)
国内プラチナ:3,714 円 1/11(木) ▲3(0.08%)
NY金:1,319.3 ドル 1/10(水) ▲5.6(0.43%)
NYプラチナ:978.8 ドル 1/10(水) ▲6.5(0.67%)
ドル円:111.43 円 1/10(水) ▼1.22(1.08%)
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