更新日:2016年12月9日(金)
欧州中央銀行(ECB)は8日、主要政策金利を0.00%、下限(中銀預金金利)-0.40%、上限(貸出金利)0.25%全て据え置きを決定。債券購入は2017年3月までの予定を12月までへと9カ月延長、2017年3月までの月額800億ユーロから4月以降は600億ユーロに減額することも決定。
ファースト・インプレッションは「減額」、市場はテーパリングに対してユーロ買いで反応するとユーロドルは1ドル=1.0800ドル近辺から1.0870ドル台へと瞬間的に70ベーシスポイントの急騰。しかし、期間延長は予想された6カ月ではなく9カ月、テーパリングよりも緩和政策継続重視とみた市場は一転、ユーロ売り。
ユーロドルは行って来いとなって、ほぼ数十秒の間に元の水準へ、さらに下値を切り下げるユーロ売りドル買いの展開となりました。
ドル円はユーロドルの急騰・急反落を確認するとドル買い急進、これを受けて金は小幅に急落、直後には小反発。
結果的にはユーロドルが前日比1.2%超のユーロ安ドル高に対して、ドル円は0.25%のドル高円安、金は0.4%の反落といずれも影響は限定的とはなりましたが、久々にユーロ主導の乱高下状態に巻き込まれ、かつてのドラギマジックを彷彿とさせる日となりました。
今回、ECBは資産購入の減額と期間延長を決めましたが、ドラギ総裁も会見で「市場が理解しているテーパリングではない」、「資産購入規模をゼロにすることは選択肢にない」、そもそも「テーパリングは本日議論されていない」と釈明しています。
イタリアの国民投票で今後の政局不安が台頭し、来年のユーロ圏主要各国の選挙・政局動向への不透明感も高まり始めた矢先に平然とテーパリングを敢行するほどECBも無神経ではなかった、ということでしょう。来年のユーロ圏内の政治的混乱による影響も考慮するからこそ、資産購入プログラムの延長を決定し、ドイツの選挙後までを十分にカバーする12月まで、ということでしょう。
そして、期間を延長するためには減額せざるを得ない、という台所事情(購入可能な国債不足)にも配慮した、というところでしょうか。
日銀が9月に「新たな金融政策の枠組み」と称してイールドカーブ・コントロール政策を導入し、債券購入の重要度を下げる試みを始めているのと同様に、ECBでも量的緩和延長をアピールし、必要ならいつでも増額するから規模の縮小は重要ではないとの主張。体のいい、テーパリングの事前準備段階に入った状態と見ることもできるかもしれませんが。
ともあれ、ユーロドルは2003年来の安値圏で2015年3月と11月、そして今年6月と今月も下値を支えられた1.05ドルの歴史的重要ラインから急反発した流れが逆流し、再び1.05ドルトライに向かう可能性も高まってきました。
日米欧の株高の流れは続くなかでも、為替市場ではドル高の勢いが失速傾向となり、金の下落傾向にも歯止めがかかり始めていた状況が、ドラギマジックによって捻じ曲げられようとしています。為替や金市場でもトランプ相場継続への警戒感が再び高まってきました。
8日のNY金相場は0.43%の反落。保ち合い上限1180ドルまで小幅に上昇したところでECBの発表を受けて1170ドルまで急落、乱高下状態を経て1170ドル前半へと収束。上下の値幅は10ドル弱にとどまる小動きで概ね横ばい推移の展開が継続。流れ好転へと向かい始めたところで失速、ドル高基調再開の兆しもあり、下値トライ再開への警戒感も高まる状況に。下値を固めつつある1170ドルラインを割り込み、1160ドル半ばの節目割れへと向うようなら1140ドル近辺まで下値を切り下げる展開も。逆に1180ドル再トライで上抜けできれば1200ドルの大台回復をかけた流れへ。
NYプラチナ相場はわずかに0.06%の小幅続伸。この日の高値も953ドル付近まで、3日連続で950ドル突破をトライして失敗、結果的に950ドルを上限とした保ち合いへと移行中の様相。下値を930ドル付近までにとどめて保ち合いを維持できれば再び上方トライのチャンスも、まずはある程度の押し目形成も必要か。ドル高再開の勢いに押されると900ドルラインまでは明確なサポートラインはなし。
ドル円は0.25%のドル高円安となって114円台へと反発。ECBの結果を受けて対ユーロでのドル買い急進によりドル高の流れ再開、113円台前半へと軟調推移となっていたドル円も114円台へと急騰すると、その後は114円を挟んでの揉み合い状態を経て114円台を維持する状況。結果的に113円半ばの節目割れで調整局面進行へと向かいかけていたところをドラギ総裁に救われた形となり、114円半ばまでの保ち合いレンジを維持。足下では三角保ち合い傾向となり、再び大きく動き始める準備段階の様相に。流れは下方向へと傾斜中、114円半ばを超えられない状態が続くようなら、113円半ば割れで調整局面加速、112円割れへと向うような展開も。114円台半ばを突破できれば高値更新へ、115円台半ばが次なる上値目安に。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場12/8終値とチャート
9日の国内金価格は0.22%安となって3日ぶりの小反落。概ね4580円から4630円までの保ち合いレンジを形成しながらも、少しずつ、着実に上値を切り下げ、下値も切り下げ傾向の展開が続く、ゆるやかな下落基調が継続。ズルズルと下値を切り下げるような展開も予想され、短期的には最大4510円近辺までの下落リスクも継続。4630円の節目を突破できれば流れは好転、いずれ4700円台後半を目指すような流れへと発展する可能性も。
週間ベースでは-14円(0.3%)で小幅続落。
プラチナ価格は0.7%の反落。やや行き過ぎ状態となりつつあった流れから、ようやく調整局面形成。それでも90日移動平均線を下回らず、もう一段の調整があってもおかしくはない。目先、急上昇する9日移動平均線の3636円辺りまででサポートされれば堅調推移も維持。3700円の節目を突破できれば3750円付近が次の上値目標に。
週間ベースでは+68円(1.89%)となり、3週続伸の堅調推移。
※参考:金プラチナ国内価格12/9とチャート
2016年12月9日(金)時点の相場
国内金:4,585 円 12/9(金) ▼10(0.22%)
国内プラチナ:3,672 円 12/9(金) ▼26(0.70%)
NY金:1,172.4 ドル 12/8(木) ▼5.1(0.43%)
NYプラチナ:943.8 ドル 12/8(木) ▲0.6(0.06%)
ドル円:114.02 円 12/8(木) ▲0.28(0.25%)
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