更新日:2017年7月13日(木)
「最後の議会証言となるかもしれない」と自らも続投の意思を否定したイエレンFRB議長が臨んだ半期に一度の議会証言。
事前に公表された証言原稿テキストでは、「経済に対するインフレの反応が重要な不確実性」となっていることが意識され、自然利子率に到達するまで、金利を「それほど引き上げる必要はないだろう」などの内容から利上げ観測後退。
緩和姿勢を良しとする米株と金は急騰で反応し、NYダウは過去最高値を更新。金利上昇ペース鈍化懸念で米ドルと米10年債利回りは急落の反応、6月末から反発基調が続いていた米10年債利回りは6月30日以来、半月ぶりとなる2.30%台まで下落。
実際の議会証言と質疑応答では、FRBとFOMCのデュアル・マンデートの一つ、インフレに関連する内容も多く、最近の低インフレへの懸念が象徴された格好。
イエレン議長は、「FOMCはインフレ目標の達成に注力している」ことを強調し、最近一部で言われている「2%を超えるインフレターゲットへの変更は議論のテーマにはなっていない」と一蹴。「雇用市場のひっ迫はいずれ賃金の圧力に」なるものと推測され、「インフレが2%目標に向けた上昇軌道にないと判断するのは時期尚早」であると明言。
そして、現状は携帯電話利用料金や医薬品の値下げなど、一時的要因による低インフレが続く状態との見方から、「インフレは一時的な要因が払拭するまで低水準」となる可能性があることを指摘し、もし 「インフレの低迷が続いた場合、政策方針を変える」 必要性が生じることも認めた様子。
デュアル・マンデートのもう一つ、雇用情勢が好調を持続していることから、半年間の任期を残すイエレン議長と市場の注目はインフレ動向に絞られそうな状況となってきました。
FRBのインフレ目標、前年比+2%の基準指標となるコアPCE(個人消費支出関連物価指数)は5月に前年比+1.4%と3カ月連続低下中。先行指標となり、PCEの牽引役となるコアCPI(消費者物価指数)は5月に1.7%で4カ月連続の低下中。これらとの連動性はそれほど見られないものの、上昇基調はサポートとなるはずのコアPPI(生産者物価指数)は5月に2.1%と4カ月続伸中。
今週末にかけて発表される6月のPPIとCPIがまずは注目されることになりますが、市場予想は今のところ、一時的要因継続見込み。
低インフレによる不確実性もまだ、しばらくは続くことになりそうです。
12日のNY金相場は0.36%高となって小幅3に日続伸。東京市場でのドル安の流れで1220ドル付近まで上昇後、欧州市場では軟調気味の展開に。警戒感もあったイエレン議会証言はハト派色が強かったことから1210ドル半ばから1220ドル半ばへと10ドルほどの急騰。これがこの日の高値となって今朝の時間外では1220ドル割れも。この日はカナダ銀行が約7年ぶりの利上げを決定し、北米から欧州にかけての金融政策正常化の動きが意識されたことも金の反発力の阻害要因に。目先、下げ止まった1200ドル台を下限として1230-40ドル辺りを上限に保ち合い形成の展開か。週末にかけての米インフレ指標への注目度が高まる状況。
NYプラチナ相場は2.26%の大幅高で4日ぶりの反発。前日に短期下値目安900ドル割れまでしっかり下落したことに伴う達成感が、イエレン証言テキスト公開時の金上昇に連れての急騰局面加速に貢献。6月30日(923.7)以来の水準へと反発し、金との価格差も300.1ドルと節目の300ドル割れ目前となり、5月16日(299.4)以来2カ月ぶりの水準に。ただし、高値でも反発目安となっていた920ドル台までで失速し、この水準にはまだ抵抗感も。920ドル後半以上へと水準を切り上げることができれば6月半ば高値圏、950ドル近辺までが次の目標水準に。流れはほぼ好転の状況も、急反落の展開で安値更新となった場合の下値目安は880ドル前後。
ドル円は0.68%のドル安円高となって続落、6月30日(112.43)以来の円高水準。6月半ば以降の堅調推移の流れで5月高値水準に到達したことによる調整局面は、イエレンFRB議長の議会証言で一段安となり、一時113円割れまで急落。調整局面としては112円半ばまでの円高余地を残し、114円が目先の抵抗水準に。6月の米インフレ指標で改善傾向が見られるようなら上値トライへ。114円を超えると3月高値圏115円が次の目標水準に。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場7/12終値とチャート
13日の国内金価格は0.19%の小幅続落。円高による下落分をNY金の控えめな反発ではカバーし切れず、3月24日(4762)以来3カ月半ぶりの安値水準。下値目安4680円台を目指す下落トレンドがゆっくりとスタートし始めた様子も、NY金の下げ止まりと、ドル円調整局面でも下値は限定的と見られる現状からは、国内金価格の大幅下落の展開は予想し難いところだが。
プラチナ価格は3日ぶりの反発で1.07%の大幅高。金との価格差は節目の1200円を割り込む1180円へと急縮小で5月30日(1177)以来1カ月半ぶりの水準。価格差とプラチナ価格との逆相関性から、価格差縮小でプラチナ価格上昇局面入りへの可能性も高まるところ。しかし、今年安値圏での鍋底状態からの脱出への判斷には3600円超えが必要。
※参考:金プラチナ国内価格7/13とチャート
2017年7月13日(木)時点の相場
国内金:4,762 円 7/13(木) ▼9(0.19%)
国内プラチナ:3,582 円 7/13(木) ▲38(1.07%)
NY金:1,219.1 ドル 7/12(水) ▲4.4(0.36%)
NYプラチナ:919.0 ドル 7/12(水) ▲20.3(2.26%)
ドル円:113.16 円 7/12(水) ▼0.78(0.68%)
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