更新日:2018年4月5日(木)
中国政府は4日、米国産大豆、トウモロコシ、小麦、綿花、牛肉、自動車、飛行機など計106品目に25%の関税をかける方針を発表しました。米国側は3日、通商法301条に基づき中国の知的財産権侵害に対する貿易制裁としてその対象品目の原案を公表していました。対象となる中国製品は1300品目、25%の関税で総額500億ドル。今回の中国側の関税対象規模も500億ドル。目には目をの対応で中国側もきっちり同規模の報復関税を翌日に発表する用意周到ぶり。
一時的には米中貿易戦争への警戒感が高まり、市場はリスク回避の流れとなりました。
リスク回避の流れでは買われる金に対し、プラチナは貿易戦争懸念で売り圧力が強まります。貿易摩擦の余波に巻き込まれ、自動車販売台数も減少することになれば、排ガス触媒としてガソリン車に使用されるパラジウムとともに、ディーゼル車に使用されるプラチナも需要減が連想されます。この結果、一連の米中関税賦課合戦にパラジウムとともにプラチナ価格の急落局面が続いています。
トランプ米大統領が鉄鋼輸入品に対して25%、アルミニウム製品には10%の関税を課す方針を表明した3月1日から、この流れは顕著となっています。この3月1日時点での金とプラチナの90日相関係数は0.96525。過去6年余りで最大値、近年で最も相関性の強い状態となっていました。
それから1カ月余り経過した現在、90日相関係数は0.82531まで急低下。FOMCもはさんだこの時期に金は乱高下しながらも上昇傾向を維持し、プラチナは一方的な下落局面を形成。直近30日間の相関係数では-0.16904とほぼ相関性なし、マイナス圏に落ち込んでむしろ逆相関よりとなっています。
この結果、金とプラチナとの価格差も急拡大。貿易戦争懸念が高まる前、今年2月までは370ドル台が価格差の過去最大水準となっていましたが、3月半ばにこの水準を突破するとさらに急拡大、23日に400ドル超え、4月2日には410ドルを超え、4日時点では422.1ドルまで過去最大水準を更新しています。
ただし、トランプ米大統領は「米中は貿易戦争には入っていない」とし、中国の高官からも「貿易戦争を行うつもりはない」「貿易摩擦は話し合いで解決すべき」と冷静なコメントも聞かれます。表面上はエスカレートしつつある米中貿易戦争の様相も、さらなる激化を懸念する向きは少なく、事態はいずれ収束方向へ、との思惑からも急落した株価は大きく買い戻される展開が繰り返されています。
急速に拡大し過ぎた金とプラチナの価格差も、いったんは縮小方向へと巻き戻される展開も予想されるところですが。
4日のNY金相場は0.22%の反発。日本時間夕方に中国が報復関税リストを公表、米中貿易戦争懸念による株価急落に伴い金は1340ドル台へと急騰。NYダウが500ドル超の大幅安でスタートしたNY市場朝には1週間ぶりに1350ドル台まで上昇。しかし、「トランプ米政権はこれ以上の対中通商関連措置を検討していない」とのホワイトハウス報道が伝わると株価は大きく買い戻され、NYダウは230ドル高まで700ドル超もの大幅上昇、金は急反落でNY引け後には1340ドル割れ。ほぼ行って来いの展開となり、1350ドルの保ち合い上限トライに失敗して長い上ヒゲを残す形に。目先は今晩の米2月貿易収支と明日の雇用統計が注目され、1320ドル台から1350ドルまでのレンジブレイクのきっかけにも。下方ブレイクなら1300ドル近辺までの下落も。
NYプラチナ相場は1.42%の大幅続落となり、12月19日(914.1)以来3カ月半ぶりの安値水準。米中貿易摩擦懸念で急騰した金にはほぼ追随できず、NY市場での急反落には追随する形となって920ドル割れへと一段安。短期下値目安920ドル台を若干オーバーランした形となり、NY時間外には920台へと戻す場面も。短期的な流れとしては下げ止まりやすい頃合いと水準に達しており、プラチナ価格を上回っていたパラジウムも下落基調が続き、この日は910ドルまで下げて一時価格再逆転、その後反発に転じており、パラジウムに追随する形でプラチナも反発局面へと向う可能性も。
ドル円は0.21%のドル高円安となって続伸。中国の報復関税リスト公表を受けて106円60銭台から106円ちょうど付近まで急落。一時106円を割り込む場面もあったものの、この水準での底堅さも確認する形となり、米3月ADP雇用の好結果やISM非製造業景況指数は予想を下回りながらも高水準を維持したことなどもあり底堅く推移、米株の大幅反発と米10年債利回り上昇にも連れてNY終盤にかけては106円80銭台まで上昇。上下の節目107円手前と106円割れの両方を試した形となり、トレンドはドル高円安方向へと傾きつつある様子も。上限突破に向けては貿易収支に波乱がなく、雇用統計での賃金上昇率が程よく加速ペースを維持することが必要か。107円台へと上昇できれば109円台に向けて大幅上昇も。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場4/4終値とチャート
5日の国内金価格は0.29%の反発。NY金と為替の乱高下の結果、ゆるやかな上昇基調を維持し、3月27日(4911)以来の高値水準。この3月27日の水準をしっかり超えることができれば、もう一段の反発基調継続への可能性が高まり、年初来下落幅の半値戻しとなる4960円近辺を目指す展開へ。下値は4850円が重要なサポート水準。
プラチナ価格は0.53%安となって5日続落。2016年10月24日(3352)以来1年5カ月ぶり安値水準での軟調推移が続き、2016年1月安値3334円と合わせて三番底を形成中。金との価格差も前日の1495円から1527円と急拡大、史上初の1500円超え。短期的な下値目安3360円台にもほぼ到達し、いつ反発してもおかしくはない状況だが。雇用統計などを通過後に行き過ぎの展開となった場合には二番底をつけに行く可能性も。
※参考:金プラチナ国内価格4/5とチャート
2018年4月5日(木)時点の相場
国内金:4,897 円 4/5(木) ▲14(0.29%)
国内プラチナ:3,370 円 4/5(木) ▼18(0.53%)
NY金:1,340.2 ドル 4/4(水) ▲2.9(0.22%)
NYプラチナ:918.1 ドル 4/4(水) ▼13.2(1.42%)
ドル円:106.78 円 4/4(水) ▲0.22(0.21%)
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