更新日:2019年10月31日(木)
「予防的」利下げと言える最大値ともされる3回目、3会合連続の利下げを市場では98%超織り込んだ状態で迎えたFOMC。
果たして0.25%の利下げでFF金利誘導目標は1.50-1.75%へと引き下げられ、3会合連続利下げで1年5カ月ぶりの低水準となりました。
わずか1年半の間に3回の利上げと3回の利下げという慌ただしい金融政策の変更もこれで一服、となる可能性も示唆したようです。
声明文では、「今後の経済見通しに関する情報を注視し、景気拡大やインフレ目標達成に向けて「適切に行動する(act as appropriate)」」という一文が6月FOMCから7月、9月のFOMCまで毎回、3会合連続で明記されてきましたが、今回のFOMCでは「注視する」までにとどめて「適切に行動する(act as appropriate)」との部分をバッサリ削除。
3会合連続の利下げ予告フレーズが今回、削除されたことで次回のFOMCでは「適切に行動」しない見通しであることを予告したことになります。
利下げ打ち止め見通しをタカ派的と捉えて、一時的にはドル高と金利上昇、株価や金は小幅に急落の反応となりましたが、これも長続きはせず。
パウエルFRB議長会見では、「現在の金融政策は適切である可能性が高い」とし、「今回の利下げは米景気を大きく下支えする」と予防的利下げの効果をアピール。
「では、利上げは?」との問いに対しては「現在、利上げは検討していない」し、「利上げには著しいインフレ上昇が条件になる」として現状の低インフレではタカ派的スタンスも取れないことを滲ませ、あくまで「いったん中立」としたい意図のようにも。
米中部分合意に向けた進展や、合意なきブレグジットの可能性後退などで世界経済へのリスク要因が少しずつ緩和の兆しも見られ始めていることも、予防的利下げ打ち止めを促した様子ですが、事態がどう急変するか、景気減速懸念が再拡大しないとも限らない状況からは、むしろ可能性としては追加利下げの可能性も排除しない、という状況のようです。
この日発表された米7-9月期GDP速報値も、前期比年率+1.6%予想を大きく上回る+1.9%となり、個人消費支出も+2.6%予想に対して+2.9%と好調を示す結果となっています。
しかし、GDPと連動性の高いISM製造業景況指数は第3四半期平均で49.4となり、4四半期連続の急低下。3年半ぶりの節目50割れ、3年4四半期ぶりの低水準となっています。
9月に急低下したISM製造業景況指数は10月には若干の反発も見込まれそうですが、第4四半期に向けては中立状態を示す50付近に位置し、下げ止まって拡大基調へと反発できるか、減速基調継続となるのか、どちらに転ぶかわからない状況にもなっています。
30日のNY金相場は3日ぶりの反発で+6ドル、0.4%高。1490ドル付近での揉み合い推移となった時間外から、利下げが確実視されるFOMCに向けては徐々に買い優勢の流れとなってNY朝には1490ドル台半ばへと小幅に上昇。米GDPなどの上振れにも下値は限定的となったものの、FOMC結果と声明文発表後には一時1480ドル台前半まで急反落。しかし、パウエル議長会見で流れは反転し、1490ドル台後半へと急反発。FRBのスタンスを中立と見て上値も1500ドルに届かず、しかし下値も限定的となり、1490ドル台を中心とするレンジでの保ち合い推移延長戦入りの様相にも。年末に向けてタカ・ハトどちらかへ傾斜した方向へと徐々に流れが形成されていくような展開にも。ハト派傾斜で保ち合い上抜けなら1550ドル台が次の上値目標に、タカ派寄りとなって下抜けとなれば1440ドル前後までが次の下値目標にも。
NYプラチナは+5.5ドル、0.59%の続伸。FOMC前に930ドル台へと上昇したのがこの日の高値となり、FOMC後には金に連れて一時920ドル割れへと急落も、パウエル会見を経て再び930ドル前後まで買い戻し。小幅乱高下となって水準を切り上げるも910ドル台から930ドル台までの小幅保ち合いレンジ内での変動に終始。引き続き流れとしては若干上向き優勢という状態ながら、中立姿勢を取るFRBの今後の方向性に左右される金の方向感に連動しやすいプラチナの方向感もグレー。上方向なら950ドル台へ、下方向なら900ドル割れが意識される展開へ。
ドル円は前日からほぼ変わらず108円80銭台での横ばい推移。米7-9月期GDPの上振れに108円90銭台へと買われる場面も一時的にとどまり、概ね108円80銭台での膠着状態が継続。FOMC結果発表を受けて利下げ打ち止めも?との連想からタカ派的と捉える向きの買いで一時109円20銭台まで急騰も、パウエル議長会見からはタカ派的な捉え方はできずに急反落。上方向への行って来いとなって今朝の東京市場でも108円80銭台。結果的に200日移動平均線(109.04)超えも一時的にとどまり、このラインにしっかりフタをされた状態が継続。上値トライ再開への可能性も高まっていた流れも巻き戻される形となり、方向感はFRBと同様に中立へ。目先は雇用統計やインフレ指標、ISM指標などの結果を受けて上値再トライとなれば109円台後半へも、108円台前半へと調整へ向かえば107円台前半も視野に。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場10/30終値とチャート
31日の国内金価格は+27円、0.48%高となって3日ぶりの反発。FOMCでは利下げ打ち止めも示唆されてタカ派的との見方は一時的にとどまり、中立からむしろハト派姿勢維持との思惑も残る様子から株価や金を下支え。短期的な流れとしてはピークアウト感も強まる国内金価格もNY金の下げ渋りによって下支え。高値再更新への可能性もかなり後退していた状態から、目先の米指標結果などをきっかけにその可能性も否定できない状態にも。雇用統計やISM指標が予想外にネガティブな結果となれば高値更新再トライへも、次なる上値目標は5760円台程度まで。調整局面継続で5660円台に切り上げたサポート水準を割れると一段安の展開で下値目安は10月序盤の押し目水準5600円近辺まで。
月間ベースでは+130円、2.34%の反発。
プラチナ価格はわずかに+2円、0.06%の小幅続伸。高値保ち合いを維持する形も、短期上昇トレンドの勢いも失速気味に。3510円台への抵抗感も強まりつつあり、この水準を超えることができれば3560円台を目安に上値再トライにも。しかし、この水準で上値を押さえられる状態が続けば徐々に流れも逆転方向へ、3480円台のサポートを割れると3420円台までを目安に一段安の展開にも。
月間ベースでは+66円、1.92%高となって5カ月続伸。5カ月続伸は2010年4月(2009年10月から7カ月続伸)以来、9年半ぶり。
※参考:金プラチナ国内価格10/31とチャート
2019年10月31日(木)時点の相場
国内金:5,696 円 10/31(木) ▲27(0.48%)
国内プラチナ:3,506 円 10/31(木) ▲2(0.06%)
NY金:1,496.7 ドル 10/30(水) ▲6.0(0.40%)
NYプラチナ:930.6 ドル 10/30(水) ▲5.5(0.59%)
ドル円:108.87 円 10/30(水) ▲0.01(0.01%)
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