更新日:2021年8月28日(土)
ジャクソンホールでのパウエルFRB議長講演では、既に事前織り込み済となっていた年内のテーパリング・スタート、QE縮小開始を示唆。と同時に、QE縮小がその後近いうちの利上げスタートを示唆するものではないことも指摘。QE縮小が利上げシグナルではないことを強調することにより、前のめりとなりがちな市場解釈を牽制する形にもなったようです。
また、パウエル議長はインフレ高止まりについても、一過性にとどまるとの従来からの姿勢を崩さず、「比較的狭い範囲の財・サービス分野の上昇」が要因であることを指摘、賃金上昇が過度のインフレを誘発する「賃金・物価スパイラル」の兆候がほとんど見られないことにも言及。
前日の3名の主要FOMCタカ派メンバによる早期テーパリング支持発言に続き、この日もパウエル講演前に関係者発言が続きました。アトランタ連銀のボスティック総裁(タカ派、今年投票権)は「雇用が引き続き堅調なら10月のテーパリング開始」を支持し、「利上げは2022年末」との従来からの強気発言。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁(タカ派、投票権なし)は「インフレ圧力が一時的ではないかもしれない兆候」についても指摘。6月まで慎重姿勢だったクリーブランド連銀のメスター総裁(タカ派、来年投票権)も「9月FOMCでのテーパリング発表」を支持する豹変ぶり。
前日からの一連のタカ派メンバ発言から、パウエル発言は十分ハト派的とも解釈され、パウエル講演と前後してのFRB理事からは慎重発言も。少し前までは10月までの縮小開始を予想していたウォラーFRB理事は「早い段階」でのテーパリングを期待するとぼかし、クラリダFRB副議長は「インフレは大部分が一時的」であり、「雇用市場拡大進展ならテーパリングを支持」と条件つき支持発言。
なお、この日発表された7月のPCEインフレは総合指数で前年比+4.17%。市場予想の4.1%を上回り、8ヵ月続伸で1991年1月(4.48)以来、30年半ぶりの高水準。
変動の激しい食品とエネルギー関連を除いたコアPCEは前年比+3.62%。市場予想どおりで5ヵ月続伸、1991年5月(3.65)以来、30年2ヵ月ぶりの高水準。
PCEインフレは30年ぶり高水準での高止まり状態となりつつあります。
ただし、ダラス連銀発表のトリム平均PCE(上下一定割合の除外して算出)は前年比+2.04%となり、2020年3月(2.04)以来1年4ヵ月ぶりの高水準にとどまります。
クリーブランド連銀発表のメディアンPCE(価格変動分布50%台のみで算出)では前年比+2.25%。昨年9月(2.25)以来、10ヵ月ぶりの高水準にとどまっています。
「比較的狭い範囲の財・サービス分野の上昇」がインフレ高止まり要因となっていることを裏付ける状況が続いています。
27日のNY金相場は+24.3ドル、1.35%の大幅続伸で8月2日(1822.2)以来、4週間ぶりの高値水準。上昇幅では今年の平均12ドルの2倍超、ミシガン大消費者信頼感指数8月速報値が予想外に急低下した13日(+26.4ドル、1.51%)以来、2週間ぶりで今年11番めの急騰。この日はミシガン大消費者信頼感指数8月改定値が予想に反してわずかな上方改定にとどまったことも押上げ材料の一つに。そのミシガン大の指標発表と同時にスタートしたジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長講演では、事前織り込みの範囲内でそれほどタカ派的でもなかったとの解釈から米株急騰となってドル安の流れから金買いも急進。一時的に1790ドル割れへと下振れる場面もありながら1800ドルの大台を回復し、1810ドル台へと急騰、NY引け後には1820ドル台へとさらに上値を試す状態に。1810ドルの節目突破に伴い、3週間ぶりに90日移動平均線(1816.5)を超え、1ヵ月ぶりに200日移動平均線(1812)も上抜け。短期上値目標1830ドル近辺までもう少しの上昇余地も残す状態に。
週間ベースでは+35.5ドル、1.99%高で3週続伸。上げ幅としては5月17日からの週(+38.6ドル、2.1%)以来3ヵ月ぶりの大幅上昇。月初の急落分を取り戻し、月間騰落でもプラス圏を回復して残り2日の最終週へ。
NYプラチナは+31.0ドル、3.18%の大幅高となって4日ぶりの反発。騰落率では今年の平均1.55%の倍以上、3%超の上昇は2月以来、半年ぶりで今年6番めの急騰。それでも3日前の終値水準1010ドルには惜しくも届かず。前日安値970ドル台前半が直近安値となっての反発基調が継続、ロンドン時間までに980ドル台を回復するとNY朝には米株と金の急騰局面に追随、1000ドルの大台を回復してNY引け後には1010ドル手前まで上昇。下ヒゲで2度つけた8月安値950ドル台でダブルボトム形成への可能性を残す形で反発局面再開へと切り返した形にもなり、目先は1020ドルの節目を超えることになれば短期上値目標1040ドル近辺を目指す流れとなり、並行してダブルボトム完成トライとなって当面の底打ちをかけた攻防にも。
週間ベースでは+12.3ドル、1.24%の反発。
ドル円は23銭のドル安円高、0.21%安となって4日ぶりの反落。前日からのFOMCタカ派メンバの発言はこの日も続き、年内テーパリング支持の事前織り込み進行とともにドル高円安の流れがゆるやかに進行、欧州時間からNY朝までに110円をはさんでの保ち合いから110円20銭台まで上昇して上値トライは失速。パウエル議長講演スタートとともに織り込み範囲内との解釈からの期待はずれ感もあり、反落すると109円90銭近辺まで30銭余りの急落。ただし90日移動平均線(109.79)に下値を支えられる形にもなり、109円80銭台では下げ渋り。目先は110円10銭台がやや強めの抵抗水準となり、次週雇用統計でポジティブ・サプライズがあれば上抜けも可能か。この水準を突破できれば8月高値110円80銭までが当面の上値目標に。
週間ベースではわずかに+6銭、0.05%の小幅続伸。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/27終値とチャート
2021年8月28日(土)時点の相場
国内金:6,929 円 8/27(金) ▲10(0.14%)
国内プラチナ:3,792 円 8/27(金) ▼53(1.38%)
NY金:1,819.5 ドル 8/27(金) ▲24.3(1.35%)
NYプラチナ:1,006.5 ドル 8/27(金) ▲31.0(3.18%)
ドル円:109.85 円 8/27(金) ▼0.23(0.21%)
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