ユーロ圏周辺の金融政策事情:金融緩和の流れは欧州全土へ拡大中
更新日:2014年11月25日(火)
少し前まで英国経済の力強い成長を背景に、米国よりも先に、主要先進国のなかで最初に低金利政策を解除し、政策金利の引き上げに踏み切るのではないかと見られていたイングランド銀行。その動向には注目が集まりますが、暗雲も垂れ込めてきています。イングランド銀行によれば、成長率予想の下方修正とともに、インフレ率見通しも目標の2%を下回り、1%弱へと低下する可能性もある、とのこと。ユーロ圏のディスインフレの影響は思いのほか大きいようで、利上げ時期の見通しは2015年前半から後半へとずれ込み始めています。
通貨ユーロは使用せず、EU離脱も噂される英国といえども、ユーロ圏の低インフレと金融緩和の影響からは、逃れられないようです。
英国と同様、EU加盟国の非ユーロ圏での金融政策動向を見ると、
スウェーデン:10月末に中央銀行のリクスバンクは政策金利を0.25%から0.00%への引き下げ。インフレが明確に引き上がるまで現在の金利水準を維持し、利上げ開始時期は従来の2015年末から2016年半ばまで遅れる見通しであるとの見解。
デンマーク:9月のECB利下げを受けて政策金利を0.05%からマイナス0.05%に引き下げ。デンマークでは2012年にもマイナス金利を導入し、今年の4月に解除したばかり。しかし、ユーロペッグ維持の為、やむを得ず引き下げたもの。
チェコ:2013年1月以降、2014年11月現在まで政策金利は過去最低の0.05%を維持。
ポーランド:ポーランド中央銀行は10月に政策金利を2.50%から2.00%へと大幅に引き下げ、過去最低水準を維持。ロシア・ウクライナ問題の影響も大きく、インフレ目標2.5%を下回り続けるリスクがあれば追加利下げも辞さず。
ルーマニア:11月に3回連続での政策金利引き下げを決め、過去最低の2.75%に。ユーロ圏の景気回復の弱さの影響でインフレ率が低下、さらなる利下げの可能性も。
ハンガリー:中央銀行のハンガリー国立銀行は今年7月まで2年間、24回連続で政策金利を引き下げ続けて過去最低の2.1%に。景気支援のため来年末までこの水準を維持する見通し。
さらに、EU非加盟国では、
ノルウェー:2012年3月以降、政策金利を1.5%の低水準に据え置き、2015年末まで継続見通し。今年6月時点では景気が一段と低迷すれば利下げの可能性も示唆。
スイス:2011年8月以降、政策金利は0-0.25%、いわゆるゼロ金利継続中。2011年9月からはスイスフラン高対策として1ユーロ=1.20スイスフランを防御ラインとする無制限介入政策を維持。2013年には1ユーロ=1.23-1.24スイスフラン台へとややユーロ高スイスフラン安傾向となっていたものの、2014年には再びスイスフラン高が進行し、この11月には再び1.20フランの防御ライン付近。中央銀行であるスイス国立銀行としては、外貨準備の20%を金で保有している場合ではないことを主張。
ユーロ圏の低インフレと金融緩和の影響は、既にEU圏から欧州全土に波及しています。
24日のNY金相場は0.17%の小反落。先週末の中国の利下げを受けた反発の流れも長続きせず、1,200ドルの抵抗線を瞬間的に試すことはあっても完全に上抜けることが出来きない状態。下値は1,190ドル付近でサポートされ、狭いレンジでの揉み合い状態に終始。時間の経過とともに上昇トレンドの勢いも除々に後退することに。早めに1,200ドルのレジスタンス超えに成功できれば次の目標水準は1,230ドル近辺。1,190ドルのサポートライン割れなら1,160ドル台付近までの調整見込み。
プラチナ相場は1.61%の大幅反落で先週末の急騰を帳消し。しっかりと底値を固めて反発基調に転じたかに思われたプラチナ相場の地合いの弱さは予想以上。チャートからは目先の上値目標1,250ドル近辺を目指す可能性は残るものの、その確率はかなり後退したと見るべきか。半月間継続した1,190-1,220ドルのレンジ内に再吸収されたことにより、仕切り直しとなる可能性。1,190ドル台後半のサポートライン割れなら1,150ドル台までの下値余地浮上へのリスクに警戒感も。
ドル円相場は0.41%の反発。20日高値118.90銭台からの調整局面は21日安値117円30銭台まで1円60銭ほどの値幅でピークを過ぎた可能性。11月の急騰相場中に時折見られた調整局面の平均的な値幅の範囲内に収まったことで再びドル高円安の流れ再開への可能性が高まる状況。118円30銭台以上を維持できれば、上値目標120円近辺への到達時期も予想以上に早まる可能性も。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場11/24終値とチャート
3連休明け、25日の国内金価格は0.54%高となり2営業日続伸。連日の年初来高値更新で昨年5月15日以来の高値水準に。短期的には買われ過ぎの状態が継続、上下に大きく振れやすい不安定な状態に陥りやすい状況。中長期的には4,900円近辺が上値抵抗となりやすい水準、4,700円近辺がサポートライン候補。
プラチナ価格も0.47%の続伸。上昇トレンドの目標水準クリア後の勢いで9月30日以来約2カ月ぶりの4,900円台を回復。3カ月以上下方乖離が続いた90日移動平均線が4,945円に迫り、この近辺は上値も抑えられやすい水準に。NY市場と為替の振れ幅が大きい状態が続き、乱高下となりやすい状況。
※参考:
金プラチナ国内価格11/25とチャート
2014年11月25日(火)時点の相場
国内金:4,862 円 11/25(火)
▲26(
0.54%)
国内プラチナ:4,909 円 11/25(火)
▲23(
0.47%)
NY金:1,195.7 ドル 11/24(月)
▼2.0(
0.17%)
NYプラチナ:1,207.5 ドル 11/24(月)
▼19.8(
1.61%)
ドル円:118.26 円 11/24(月)
▲0.49(
0.41%)
11/24(月)のその他主要マーケット指標
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