ハード・ブレグジット懸念後退vsトランプ・リスク継続
更新日:2016年11月04日(金)
日本の祝日で東京市場休場のウィークデーにはリスク回避の流れが加速し易い、という今年のアノマリー、もしくはトレンドとも言える現象はまだ健在だったようです。
3日、文化の日には英国発のハード・ブレグジット懸念と米国発のトランプ・リスクという長期と短期のリスクが交錯する日となりました。
この日、ロンドン高等法院は英国のEU離脱に向けたリスボン条約50条発動には議会承認が必要との判決を下しました。英国政府側は上訴を予定しており、来年3月までにと言っていた離脱交渉開始時期が遅延する可能性も出てきました。(メイ首相は否定していますが)
高等法院の判決が支持された場合、英国への移民制限を優先し、EU単一市場へのアクセスを失い、ロンドンの金融街シティーの崩壊懸念にもつながるハード・ブレグジットを回避できる可能性も、という見方も浮上してきたようです。
これにより英ポンドが急騰、ポンドドルは3週間ぶり高値をつけてポンド円も上昇し、休日のリスクオフの円買いの流れを食い止める要因の一つとなったようです。
さらにこの日はスーパーサーズデーと呼ばれる英MPC、イングランド銀行(BOE)の金融政策会合の日で、追加利下げを見送り、経済見通しでも2017年のインフレ、成長率見通しともに引き上げ。
EU離脱決定に伴うリスク材料となってきたポンド安が続いたことが、逆に景気を下支えし、インフレ見通し上昇にもつながりました。
そもそも英国は、EU離脱決定前までは、米国に続いて利上げ局面を迎える2番めの先進国になるものと見られていました。それが6月を境に状況が一変し、緩和政策へと舵を切るハメになりました。BOEの対応が功を奏したからかどうかはともかく、状況は改善しつつあるようで、今後も追加緩和見通しが徐々に後退し、従来の引き締め見通しが台頭し始める日も意外とそう遠くはないのかもしれません。
少なくとも、ハード・ブレグジット懸念が後退する可能性が示されただけでも、今後の長期的なリスク材料のひとつが緩和されるかもしれない、との安心材料となった可能性はありそうです。
一方、短期リスクとしてのトランプ・リスクはまだ健在のようで、休日のリスクオフ材料として機能しました。米大統領選の世論調査では複数の調査でクリントン氏が優位に、とも伝えられてはいますが、不透明感払拭には至りません。NYダウは6日続落となり、NASDAQは2015年末から年明けにかけて以来の8日続落。S&P500も8日続落で2008年の金融危機以来で最長。日本株もドル円も上値の重い状態が続きます。
これも次週8日、日本時間9日の結果判明まであとわずかの辛抱、となるかどうか。
今年、世界じゅうを不安に陥れた2つのリスクのうち、一つは来年以降へ持ち越され、残る一つがようやく解消するか否か、その期限が迫ります。
3日のNY金相場は3日ぶりの反落で0.37%安。日本時間早朝、NY時間外のFOMC後の反落で1300ドル割れとなった後、東京市場休日の円買いドル売りの流れを受けて1308ドルまで反発。しかしFOMC直前高値1309ドルと当面の抵抗水準1310ドルラインが意識されて失速、ロンドン時間にかけてはハードブレグジット懸念後退などによる英ポンド急騰に連れてドル売りも巻き戻され、リスク回避の巻き戻しムード。NY市場では10月のISM非製造業景況指数が54.8と市場予想の56.0に届かなかったことなどもあり、この流れも続かず。結局、金は1280ドル台半ばまで大きく下げて反発すると再び1300ドル台を回復、長めの下ヒゲ陽線となってさらなる上値トライへの可能性も示した形。ただし目先は雇用統計の結果次第、1310ドルの節目ライン超えなら1330ドル付近までの上昇も見込まれ、下方向にはこの日の安値1280ドル台までは下げやすい状況。
NYプラチナ相場も0.74%安となって3日ぶりの反落。時間外からNY市場朝にかけての反落局面では3日ぶり安値となる975ドル台まで下落。NY市場での反発局面では1000ドルの大台ラインを僅かに超えるも一時的、今朝にかけても1000ドルの節目ラインとの攻防継続。雇用統計通過後に節目ラインを突破できれば1020ドル前後までが目先の上値余地。好結果に反落の流れなら、この日の安値970ドル台までは下げやすい水準。
ドル円は0.32%安となって3日続落、10月7日(102.96)以来ほぼ1カ月ぶりの103円割れ。今年前半に何度も目にした「祝日の東京市場での円買い」の流れが再現、朝の103円40銭台から正午過ぎの102円50銭台まで1円弱の急落。トランプリスク継続も背景に、103円半ばの節目割れに伴う円買いドル売りが加速。ロンドン市場ではポンド円急騰にも連れてドル円も103円台回復もISM非製造業景況指数下振れで失速。雇用統計の結果が思わしくないようだと12月利上げ観測後退にもつながりかねず、ドル売り加速で円高進行へ。ネガティブ度合いが強ければ下値目安101円近辺までは大統領選挙前にも到達の可能性も。ポジティブな結果でも当面の抵抗水準105円台前半までは大統領選挙前には届きそうにもない。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場11/3終値とチャート
4日の国内金価格は0.3%の続伸で9月26日(4643)以来、5週間ぶりの水準を回復。急落前の9月後半保ち合いレンジ4600円台前半に位置し、落ち着きやすいところ。米大統領選直前の雇用統計への市場反応は限定的となる可能性も、しかし為替はやや円高バイアスが強めの状態となり、目先は乱高下気味の展開も予想される。上方向には90日移動平均線の4660円から7-10月の半値戻し4665円辺りまでが目安となりやすく、下方向へは水平状態の21日移動平均線4540円辺りまで。
週間ベースでは+22円(0.48%)で3週続伸。
プラチナ価格は休日前から変わらず。7営業日続伸後の横ばい推移でRSIは80ポイント超えの過熱状態となり、反落の可能性もさらに高まる。円高圧力が反落を後押しする可能性もあり、21日移動平均の3450円近辺までは当面の下値警戒水準に。上方向には9月末高値で10月までの下落幅の38.2%戻し水準3620円台辺りが目安に。
週間では+41円(1.17%)の続伸。
※参考:
金プラチナ国内価格11/4とチャート
2016年11月04日(金)時点の相場
国内金:4,624 円 11/4(金)
▲14(
0.30%)
国内プラチナ:3,554 円 11/4(金) +-0(0.00%)
NY金:1,303.3 ドル 11/3(木)
▼4.9(
0.37%)
NYプラチナ:994.4 ドル 11/3(木)
▼7.4(
0.74%)
ドル円:102.98 円 11/3(木)
▼0.33(
0.32%)
11/3(木)のその他主要マーケット指標
米10月雇用統計、賃金上昇率は7年ぶり、U6失業率は8年ぶりの水準 11/05(土)雇用統計の先行指標としての精度を増した?ADP雇用は下振れ 11/03(木)世界的な製造業底入れの兆しを吹き飛ばすトランプリスク 11/02(水)インフレ上昇の兆しもPCE目標2%未達は4年5カ月連続 11/01(火)
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