離職率上昇でも転職者と非転職者の賃金上昇率逆転!?
更新日:2018年10月20日(土)
米労働省が今週発表した8月のJOLTS労働異動調査で、自発的な退職者の比率を示す離職率は7月の2.4%と変わらず、横ばい推移。
2.4%という水準は2001年以来17年3カ月ぶりの高水準であり、イエレン前FRB議長が回復の目安とした2.1%を大きく超えており、単体で見れば全く問題のない水準です。ただ、流れとしてはゆるやかな上昇軌道が続いていると見ることも可能であり、伸び悩みの兆しとも取れる状況。
一方、アトランタ連銀が発表した9月の賃金上昇トラッカー(個人時給中央値の前年比、3カ月平均値)は+3.5%となり、8月から変わらず横ばい推移。
このうち、転職者の賃金上昇率は3.3%。8月の3.6%から低下し、直近では3カ月連続の低下、3月の4.4%をピークに低下傾向が続きます。
これに対して非転職者の賃金上昇率は3.6%。8月の3.3%から上昇し、足下3カ月は連続上昇、2月の2.3%をボトムに上昇傾向が続いています。
その結果、9月は遂に転職者と非転職者の賃金上昇率が逆転。
これまで、転職者が賃金上昇率の加速を牽引し、これを裏付けるように離職率の上昇が賃金上昇率を押し上げてきましたが、最近では離職率の伸びと賃金上昇率の伸びに乖離が見られ始めていました。そして、離職率が上昇しても賃金上昇率を押し上げない状態に陥ってしまったようです。
なお、転職者と非転職者の賃金上昇率逆転は2011年12月以来、6年9カ月ぶりのこと。この時は世界金融危機から脱して離職率も賃金上昇率も上向き始めた頃で、単月のみで0.1ポイント差、一時的な逆転に終わっています。それ以前では2010年8-9月の2カ月間、2009年1月から2010年6月までの1年6カ月間。金融危機の真っ只中でリセッションの時期、転職しても賃金は上がらず、非転職者ともに賃金減少期。
今回の逆転現象も一時的に終わる可能性も高そうですが、転職者の賃金伸び悩みは、賃金上昇率自体の伸び悩みにつながりやすく、低インフレ要因の一つともなる状況です。
また、転職者の賃金伸び悩み要因としては、企業側のニーズと一致しないこと、即ち人材不足がありそうです。
完全雇用に近い状況の現在では、この状況を打開するのは難しいとも考えられます。
となると、賃金上昇率の低迷状態は今後も続き、インフレもそれほど加速しない状態が当面続くことも予想されそうです。
19日のNY金相場は-1.4ドル、0.11%の小反落。時間外には一時1220ドル台半ばまで下げてNY朝には1230ドル半ばまで上昇、しかしいずれも一時的にとどまり、1230ドルをはさんでの揉み合い状態へと収束。上海総合指数が反発し、欧州委員会のモスコビシ委員は「イタリアの来年度予算を巡る対立を緩和したい」と発言、米株もダウが3日ぶりに反発、サウジ情勢も真相解明と世界経済への影響の有無に関しては時間を要するとの見方からリスク回避は一服。ただし、週末には財政悪化を懸念して
ムーディーズがイタリアを格下げ、サウジ記者殺害をサウジ国営通信が伝えたことで正式に認めた形となり、今後のリスク要因にも。方向感喪失気味のNY金は4月から8月までの下げ幅の38.2%戻し(1244.4)程度までの上昇余地を残しながら、90日移動平均線(1222.9)近辺がサポートラインとなる状態が継続。
週間では+6.7ドル(0.55%)となり、年初以来9カ月ぶりの3週続伸。
NYプラチナ相場は+4.3ドル、0.52%高となって3日ぶりの反発。中国株反発やリスク回避ムード後退などを好感する形で反発基調となってNY朝には840ドル付近まで上昇。しかし、2日前に割り込んだこの840ドルの節目を超えることはできず、抵抗水準に切り替わる可能性も残して830ドル台前半へと小幅に反落。810ドル台を下値目安とした調整局面は830ドルを少し割れただけで切り返し、830ドル付近が新たなサポート水準となる可能性も。この水準を維持できなくなれば、あらためて9月末水準810ドル近辺を試す展開にも。
週間では-4.0ドル(0.48%)で3週ぶりの反落。
ドル円は30銭超のドル高円安となって反発。ドル安円安でその他通貨高、ドル円では円安ドル高とリスク回避の巻き戻しのパターンとなり、クロス円の大幅上昇にも連れる形でドル円も上昇。日経平均の下げ幅縮小や上海株の上昇にも連れて112円台前半から半ばへ。ただし、米9月中古住宅販売件数が2年10カ月ぶり低水準となり、予想を下回る結果となったことなどもあり、米株の伸び悩みとともにドル円も112円60銭台では頭打ち。112円台半ばを中心に小幅保ち合いを形成する形となり、今週高値112円70銭台を突破できれば10月高値圏114円近辺を目指す流れとなる可能性、逆に112円を割れると9月初旬安値圏110円台後半までが意識されるような展開にも。
週間では+0.36円(0.32%)で3週ぶりの反発。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場10/19終値とチャート
2018年10月20日(土)時点の相場
国内金:4,734 円 10/19(金)
▼2(
0.04%)
国内プラチナ:3,197 円 10/19(金)
▼23(
0.71%)
NY金:1,228.7 ドル 10/19(金)
▼1.4(
0.11%)
NYプラチナ:836.0 ドル 10/19(金)
▲4.3(
0.52%)
ドル円:112.55 円 10/19(金)
▲0.35(
0.31%)
10/19(金)のその他主要マーケット指標
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