更新日:2016年12月15日(木)
12月FOMCでは、市場予想通りFF金利0.25%引き上げを全会一致で決定し、今後のFF金利見通しも引き上げられる結果となりました。
GDP見通しは2016年が前回9月時点の1.8%から1.9%へ、2017年も2.0%から2.1%へ、2019年も1.8%から1.9%へと引き上げ、2018年の2.0%と長期見通し1.8%は変わらず。失業率は既に4.7%まで低下していることから、2017年から2019年も全て4.5%までの低下予想となり、長期見通しは4.8%維持。失業率では完全雇用の状態がしばらく続くとの見込みです。また、インフレ予想については9月から変わらずPCE、コアPCEともに2018年には目標水準2.0%到達が見込まれています。
声明文でも経済活動の判断が11月の「わずかに拡大」から「緩やかに拡大」へと若干引き上げられた形となり、今後の利上げ見通し引き上げを裏付ける結果につながったようです。FF金利予想中央値の推移を見ても、昨年12月FOMCから一方的に引き下げられ続けた見通しは、11月FOMC後の大統領選を転機に反発したことを示しています。結果的に今後の利上げペースは年3回となっています。
FF金利予想ドットチャートを見ても、前回からは全般的に上方シフトされ、中央値でも平均値でも全て上昇しています。
なかでも、2017年から2019年までの最低水準にプロットされたドットの位置が、9月には0.625%だったものが、今回は0.875%へと0.25%引き上げられています。今回12月の利上げで上限金利が0.75%となったことにより、2017年には追加1回の利上げで0.75-1.00%となることを予想し、それ以降2019年までは据え置き予想となります。
2017年の2ドットのうちの一つと、2018年と2019年の単独ドットはセントルイス連銀のブラード総裁によるもので、6月からハト派に転じて以降、一貫して当面1回の利上げで十分、との発言を繰り返していました。
しかし、従来の主張を貫くなら、今回の利上げでその1回が実現したことにより、2017年以降のドットは0.625%の位置にプロットされるべきですが、さらにもう1回の利上げで十分?にトーンダウンしたことになります。
イエレン議長が会見で「一部参加者は(トランプ次期政権による)財政政策の変化を考慮に入れた」と発言したように、ブラード総裁もその影響を受けた一人となったようです。
また、イエレン議長は「財政政策の変更は経済見通しに影響を与える可能性」もあり、「経済政策の詳細が判明し次第、調整が必要になる可能性」についても言及したものの、財政政策の変更による金融政策への影響については言及を避けました。財政政策を含むトランプ次期政権の政策自体がまだまだ不透明感に覆われているため、当然でしょう。
従って、今回のFF金利見通しについても不透明感がつきまとい、来年度からはFOMCメンバーの入れ替え、欠員していたFRB理事2名の追加指名も予想されることなどから、今後の見通しも大きく変動することも有り得そうです。
トランプ期待の影響を受けた今回のFOMC、さらにもっと影響を受けた今回のドル高の反応は、やや行き過ぎの可能性もありそうです。
14日のNY金相場は0.41%の反発。引け後のFOMC声明文では予定どおりの利上げを確認し、1150ドルへと10ドルほどの急落。イエレンFRB議長会見を経て下値模索の展開となり、さらに10ドルの下落、下値目安1140ドル近辺にもしっかり到達、今朝時点でも1140ドル台前半を推移。通常、NY引け後の日本時間早朝のイベントなどにより相場が急変した場合、ロンドン・NY市場にかけてその流れが増幅するケースが多いものの、今回は利上げ見通し引き上げもある程度想定の範囲内であり、価格変動も目安水準にも達していることなどから、いったんは材料出尽くしと予想するが・・・。
NYプラチナ相場は0.44%の小幅高で3日続伸。引け後のFOMCを受けてやはり20ドルほどの急落。900ドル台前半の広めのレンジ上限付近から中ほどまでの下落にとどまっており、今後もう少し売られたとしても900ドルラインを維持する可能性は高そう。一服感からの反発でも950ドルの節目突破にはもう少し時間を要しそうな状況か。
ドル円は1.62%の大幅続伸。米11月の小売売上高や鉱工業生産などが予想を下回る低調となったことで114円70銭台まで下げた後は、FOMCに向けてジリ高推移、ややフライング気味のドル買いで115円台前半へと上昇後、声明文発表で116円40銭台まで急騰。上値目安と見ていた116円半ばに一瞬にして到達すると、イエレン議長会見後には2月5日(117.43)以来、10カ月ぶりのドル高円安水準となる117円30銭台まで上昇。終値では2月3日(117.87)以来の水準となり、今朝の東京市場では日経平均の一段高とともにドル高円安の流れ再加速の気配も。水準的には昨年高値から今年安値の61.8%戻しの115円半ばを完全に上抜け、次の目安は76.4%戻しとなる119円半ばも?
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場12/14終値とチャート
15日の国内金価格は0.41%の反発。材料出尽くしでのドル高失速とNY金反発方向へと流れが変わり始めることを予想していたが、今朝時点ではその逆の流れ。ドル高の勢いが想定以上に強く、ドル円の上昇が止まらず、結果的にNY金の下げ幅を相殺する形での円安進行となり、国内価格は小幅高の状況。ゆるやかな上昇基調へと向かい始めた可能性も見え隠れする状態で4580-4620円のレンジ上限トライへ。
プラチナ価格は0.67%高となって3日続伸、9月12日(3748)以来3カ月ぶりの高値水準。FOMC後の流れとしては予想どおり金に追随する展開、しかしこれまでの勢いの差が上昇幅の違いとなって表れ、金との価格差は9月7日(864円)以来3カ月ぶりの水準をさらに縮小し、868円に。目先の上値目安3740円台にもほぼ到達した形となり、ドル高円安の流れとともに一服感は出やすいところだが。なお、水準的には7月高値から10月安値の半値戻し(3712)を達成しており、次の上値目安は61.8%戻しとなる3797円。
※参考:金プラチナ国内価格12/15とチャート
2016年12月15日(木)時点の相場
国内金:4,607 円 12/15(木) ▲19(0.41%)
国内プラチナ:3,739 円 12/15(木) ▲25(0.67%)
NY金:1,163.7 ドル 12/14(水) ▲4.7(0.41%)
NYプラチナ:940.8 ドル 12/14(水) ▲4.1(0.44%)
ドル円:117.04 円 12/14(水) ▲1.86(1.62%)
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