更新日:2017年11月10日(金)
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した「Gold Demand Trends Q3 2017」によれば、2017年第3四半期の世界の金需要は915.1トン。前期比-58.6トン(-6.0%)となって2四半期連続減、2015年第2四半期の922.8トンを下回り、8年ぶりの低水準へと減少。
・宝飾品需要は478.7トンで前期比-2.0%、3四半期連続減で5四半期ぶり低水準。※シェア52.3%
・産業用は84.2トン。前期比+3.5%、2四半期連続増となって3四半期ぶりの高水準。※シェア9.2%
・投資需要は241.2トン、前期比-21.6%で2四半期連続20%超の大幅減、3四半期ぶり低水準。※シェア26.4%
・公的機関は111.0トン、前期比+15.1%で2四半期連続増、3四半期ぶりの110トン超。※シェア12.1%
需要全体の5割以上を占める宝飾需要の小幅減少と、4分の1を占める投資需要の大幅減が全体需要を押し下げました。
投資需要の内訳では、コインやバーなど現物需要が222.3トンとなって前期比-8.5%、3四半期連続減、4四半期ぶりの低水準にとどまりました。
ETF関連は+18.9トンで3四半期連続の買い越しも前期比-70.8%。2四半期連続の大幅減となり、大幅売り越しとなった2016年第4四半期以来、3四半期ぶりの低水準。価格水準が前期の1256.6ドルから1277.9ドルへと小幅上昇にとどまったことにより、金ETFへの投資資金流入は停滞。好調が続く株式市場へと資金が流れたことも影響したようです。
金の宝飾品需要と現物投資需要を合わせた金消費需要としては、全体では701トンとなって前期比-4.1%、3四半期連続減少で4四半期ぶりの低水準。需要全体のうち、金消費需要のシェアは76.6%と3四半期連続75%超の高水準を維持しています。金価格急落でETFが大幅売り越しとなった2016年第4四半期には97.1%と跳ね上がりました。金価格が暴落した203年第2四半期にはシェア113.7%となり、近年最大となったETFの売り越し分をカバーし切れない状態となっていました。
国別の金消費需要ではインドと中国の2カ国合わせて全体の半分を占める状態が続き、中国は前期比で増加したものの、インドは減少。7月からスタートしたGST(税制改革)の影響によるインドの需要の弱さが、全体の足を引っ張りました。
金消費上位10カ国では、イランが圏外から6位にランクイン、前期8位だったUAEが15位に後退、11位以下はロシア、香港、パキスタン、スイスと続きます。
その他、相対的な規模はそれほど大きくないものの、産業用需要のなかではスマートフォンの普及に伴い、メモリチップの需要が増加しているようです。中央銀行の金保有量では、金準備全体量の順位には大きな変化はありませんが、第3四半期の増加量トップ5は、ロシア、トルコ、カザフスタン、ベラルーシ、カタールと9月末時点での前月比増減ランクトップ5と同様で、ロシアの増加量は群を抜いています。
また、供給側としてのリサイクルは価格上昇に伴い、4四半期ぶりの高水準となる315.4トンへと増加しています。
現時点での金価格の四半期平均は、第3四半期からほぼ横ばい推移の状態。金ETF全体の4割程度を占めるSPDRゴールドシェアのETF残高は第3四半期末から-20トンほどと既に売り越しの状態。
ここから年末にかけて、金価格が下落方向へと向かえば、金ETFは4四半期ぶりの売り越しが確定することになります。逆に金価格が上昇すると、ETFも買い越しへと反転する可能性も残され、インドの金消費需要の回復期待とともに、世界の金需要全体を押し上げることにもつながります。
9日のNY金相場は0.3%の小幅続伸。トランプ・ショックから1年後、日経平均は前場の大幅高を後場に帳消しとする急反落となり、NYダウも一時250ドル超の急落と株式市場は波乱の日。ただし、過度に一方的となっていた流れが自律的に巻き戻された面もあり、金市場は比較的落ち着いた反応。NY市場では米上院共和党が発表した税制改革案が1年先送りとなっていたことを受けて株安ドル安の流れが強まり、一時1290ドル手前まで上昇。わずかながら水準を切り上げ、保ち合い上抜けの兆しとなって上昇トレンド形成へとゆっくり動き始めた可能性も。流れが加速しそうな気配はまだ弱く材料的にも乏しいものの、方向感は着実に上向き始め、当面の上値目標として1310ドル近辺までを目指す展開へ。
NYプラチナ相場も0.29%の小幅続伸。10月16日(942.1)以来の940ドル台回復となり、保ち合い上抜けの兆しとなった途端にボラティリティは低下。流れとしては反発基調が続き、ようやく水準を切り上げようかという段になって勢いがやや失速した感も。今朝の時間外でも節目の940ドル付近での小康状態となり、再び保ち合い状態へと巻き戻される展開も否定できないものの、現時点では上昇基調スタートの可能性。当面の上値目標は980ドル近辺まで。
ドル円は0.35%のドル安円高となって続落。東京市場では日経平均の急落に連れての円高、NY市場では米株急失速に連れてのドル安急進という展開となり、10日ぶりのドル安円高水準に。税制改革案の先行き不透明感によるドル売りという面とともに、ドルインデックスは95ポイントの水準で頭打ちとなり、ドル円も114円台後半まで上値を試したことで短期トレンドのピークアウト感が強まり、戻り売り優勢の展開となってきた様子も。113円台前半へと水準を切り下げたことにより、もう一段の下値トライへと向う可能性が高まる状況に。当面の目標水準は10月安値圏となる112円前後まで。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場11/9終値とチャート
10日の国内金価格は0.16%の小反落。10月初旬から続いた長期保ち合い上方ブレイクの兆しがまたしても巻き戻されるのかという状況を、NY金の保ち合い上抜けの兆しがサポートする状態に。短期トレンドとしてはドル買い金売り優勢の状態から、保ち合いを経てドル売り金買い優勢へと転換したとの判断を維持。目先は上昇トレンドがゆっくりと進行する可能性が高まり、NY金の堅調推移が継続するようなら大幅高の展開となる可能性も。当面の上値目標として5100円台後半も視野に。ただし反落の展開で5000円を割れたらストップ。
週間ベースでは+4円(0.08%)と小幅続伸。
プラチナ価格は0.27%の小幅続伸。保ち合い上方ブレイクの兆しを維持し、NYプラチナの上昇基調スタートならこれにサポートされ、最大3800円近辺の上値目標を目指す展開が進行する可能性。3620円割れへと反落の場合には流れが逆転し、大幅下落を警戒する展開に。
週間ベースでは-5円(0.14%)と3週間ぶりの小反落。
※参考:金プラチナ国内価格11/10とチャート
2017年11月10日(金)時点の相場
国内金:5,020 円 11/10(金) ▼8(0.16%)
国内プラチナ:3,665 円 11/10(金) ▲10(0.27%)
NY金:1,287.5 ドル 11/9(木) ▲3.8(0.30%)
NYプラチナ:940.6 ドル 11/9(木) ▲2.7(0.29%)
ドル円:113.46 円 11/9(木) ▼0.40(0.35%)
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