更新日:2019年8月24日(土)
ジャクソンホールがあるワイオミング州を管轄し、シンポジウムを主催するカンザスシティ連銀が発表した8月の製造業活動指数は-6。5カ月連続の低下で2カ月連続のマイナス圏、2016年3月(-7)以来、3年5カ月ぶりの低水準。新規受注(-16)は2016年1月(-26)以来3年7カ月ぶり、雇用者数(-7)も2016年5月(-10)以来3年3カ月ぶり低水準。ただし、半年先の見通しを示す期待指数は3年1カ月ぶり低水準となった7月の9から8月は11へと小幅に反発。
NY連銀やフィラデルフィア連銀では下げ渋り、反発傾向となっていたのとは対称的に、カンザスシティ連銀管轄地区内の製造業はまだ減速傾向が続きますが、期待指数は底打ちの可能性も示す状態に。
7月FOMCでは利下げに反対票を投じ、タカ派で知られるカンザスシティ連銀のジョージ総裁は、7月FOMC前から「リスク顕在化なら利下げも支持」すると表明していた結果、7月末FOMC当日の判断ではそうならず、後日「米経済の弱さが確認できれば、FRBの政策変更を指示する」との発言。今週時点でも、FF金利は「現行水準維持」を支持することを表明していました。
この日には、クラリダFRB副議長が「景気後退リスクが高まっているとは思えない」、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁 は「我々は今行動する必要はない」、クリーブランド連銀のメスター総裁に至っては「据え置きを望む」など、異口同音に追加利下げには否定的な見方を示し、最近ではボストン連銀のローゼングレン総裁、ダラス連銀のカプラン総裁なども利下げ回避を望むような発言をしていました。
パウエルFRB議長が明確に追加利下げを示唆しなかった背景には、FOMCメンバー内で意思統一が図れていないことも影響していそうです。
それでもパウエルFRB議長は「経済は望ましい状況だが、リスクが迫っている」、「世界景気にはさらに減速の証拠がみられる」など警戒感を示し、「景気拡大を維持するために、適切に行動する」と従来どおりながらも柔軟に利下げも辞さない姿勢も見せました。
しかし、これにはトランプ大統領が怒り心頭で「FRBは相変わらず何もしていない」と痛烈批判ツイート。
さらに、パウエルFRB議長講演前には中国が米国への報復関税(対中追加関税第4弾への報復として、米国からの輸入品750億ドル相当に対し、9月1日から原油に10%、12月15日からは自動車や自動車部品へ25%課税を再開)を表明しており、これに対する怒りも収まらず、米企業に対して中国からの事業撤退を要請し、「我々に中国は必要ない、中国がいないほうがマシ」などの暴言ツィートも。
なお、トランプ大統領は中国への対抗措置として、10月1日から2500億ドル相当の輸入品の関税を25%から30%に引き上げ、先日発表した追加関税第4弾の税率を10%から15%へ引き上げることなども表明。
米中関税合戦が泥沼化の様相を呈して株価急落を誘引し、結果的には9月利下げもやむ無し、という方向へと向かっているように見えます。
23日のNY金相場は+29.1ドル、1.93%の大幅高となって3日ぶりの反発。上昇幅としては歴史的節目を超えて1400ドル手前まで急騰した6月20日(+48.1ドル、3.57%)、6年4カ月ぶり高値1500ドル超へと急騰した8月7日(+35.4ドル、2.39%)に次いで今年3番目の大幅上昇。ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演待ちではややタカ派ムードを警戒する見方もあり、欧州時間に1503ドルまで下げる軟調推移。NY朝、講演スタート前に中国の対米報復関税が発表されたことを受けて1510ドル台半ばへと急騰。パウエル議長講演では明確な利下げ示唆こそなかったものの、従来どおり「適切に行動する」基本方針には好感する形で堅調推移。さらにトランプ大統領の中国への対抗措置表明で米中対立激化への警戒感から一段高。1540ドルにワンタッチし、2013年4月11日(1564.9)以来、6年4カ月半ぶりの高値水準となる1530ドル台後半へ。
流れとしては調整局面入りの様相となっていた状態から、米中対立再激化懸念によって1500ドル割れを回避、切り返して上値再トライの展開へ。当面の上値目標は1560ドル近辺まで。
週間ベースでは+14ドル、0.92%高となって4週続伸。
NYプラチナは-6.6ドル、0.77%安で3日ぶりの反落。中国の対米関税発表には株安とともに860ドルから850ドル前半へと下振れ、パウエル講演には好感して株高とともに上振れて2週間ぶり高値となる870ドル台へと急騰。しかし、対抗措置へのトランプツイートには株安とともに急反落。金の急騰にもわずかに下支えされる格好にもなり、元の水準860ドル付近ではやや下げ渋り。870ドル台の抵抗水準トライは乱高下のなかでのワンタッチで終え、長めの上ヒゲを残して20日移動平均線(860.1)上抜けにも失敗。抵抗水準を860ドル台に切り下げて840ドルまでが目先の主要レンジに。あらためて上方ブレイクできれば7月高値圏900ドル付近が目標に、下方ブレイクなら7月安値圏810ドル付近が下値目安に。
週間ベースでは+3.8ドル、0.45%の反発。
ドル円は1円のドル安円高となる大幅続落。パウエル講演前には長期金利上昇とドル高優勢の流れで106円70銭台までジリ高推移。しかし、8日連続で106円60銭近辺の抵抗水準に上値をしっかり押さえられての急反落へ。パウエルFRB議長が明確には追加利下げを示唆しなかったことはある程度予想どおりでドル高サポートへの思惑の背景にも。しかし、予想外の(というか、忘れていた)中国による報復関税措置発表とこれに対するトランプ大統領の反応によってジャクソンホールのイベントがかき消される状態に。
8月に入ってからの保ち合いを下抜ける形となり、反発優勢の状態から形勢逆転となって下値トライ再開へ。105円を割り込むようなら大幅安へと向かう可能性も高まり、103円台が意識されるような展開にも。
週間ベースでは-0.97円、0.91%の反落。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/23終値とチャート
2019年8月24日(土)時点の相場
国内金:5,470 円 8/23(金) ▼32(0.58%)
国内プラチナ:3,154 円 8/23(金) ▲12(0.38%)
NY金:1,537.6 ドル 8/23(金) ▲29.1(1.93%)
NYプラチナ:855.3 ドル 8/23(金) ▼6.6(0.77%)
ドル円:105.41 円 8/23(金) ▼1.01(0.95%)
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