更新日:2020年1月4日(土)
総じて低調だった12月の各地区連銀製造業PMIの結果から、ISM製造業景況指数も低調となる可能性も警戒され、それが米株の最高値更新にストップをかけるきっかけにもなりうるか、と想定していました。
結果としては12月のISM製造業景況指数は想定どおり、市場予想を下回る低調な結果となりましたが、米株の最高値更新にストップをかけたのはそれではなく、その結果も霞む、中東での地政学リスクでした。
米国とイランとの対立はこれまでも警戒されてはいましたが、米国がイランの司令官を空爆で殺害という、実際に軍事的な行動を起こしたことでにわかに緊張感は高まりました。トランプ大統領は「戦争を止めるために行動した」と発言してはいるものの、イランのハメネイ師は報復を表明し、米国は米国民に対してイラクからの即時退去を命じるなど、さらなる対立激化、事態悪化への警戒感も続きます。
東京時間午前に伝わったこの報道をきっかけに米株先物は急落し、安全資産の円とドルと米国債券と金が買われ、リスク回避の流れが一服したNY時間に発表された12月のISM製造業景況指数は市場予想の49.0を大きく下回る47.2。2ヵ月連続の低下で10年半ぶりの低水準となり、節目の50割れは5ヵ月連続。
単独でも米株の高値更新にストップをかけるインパクトはあったかもしれません。
9月に47.8まで低下し、10月には48.3へと反発した時点で底入れも、と期待されましたがその後年末にかけて再低下。12月には米中第1段階合意もあったにもかかわらず、米国の製造業の回復基調はなかなか進んでいないことが示された格好です。
なお、構成指数では新規受注、生産、雇用などの主要指数が軒並み低調。新規受注は46.8となって2009年4月(46.0)以来、10年8カ月ぶりの低水準。節目の50割れは5ヵ月連続。
生産は43.2と11月の49.1から急低下、5ヵ月連続の50割れで2009年4月(36.7)以来、10年8ヵ月ぶりの低水準。雇用も45.1となって2016年1月(44.6)以来、3年11ヵ月ぶりの低水準で5ヵ月連続の50割れ。
そのなかで入荷遅延は54.6となって8カ月ぶりの高水準。2018年の60ポイント台から低下基調が続き、昨年10月には49.5まで低下した後は反発基調となり、景気減速傾向に歯止めがかかった可能性を示す結果にも。また、顧客在庫も41.1となって10カ月ぶりの低水準。2018年の40ポイント付近から上昇傾向となり、昨年10月には47.8まで上昇した後の急低下となり、需要減の流れも一服となった様子も。
その他、輸出は47.3で2カ月連続低下で2カ月連続50割れ、輸入は48.8で2ヵ月連続上昇も6ヵ月連続の50割れ。
目先は米国とイランの対立激化が警戒されますが、米製造業の回復に向けては中国との対立緩和と貿易拡大が重要であることには変わりません。
3日のNY金相場は+24.3ドル、1.59%の大幅高となって8日続伸。8日続伸は昨年6月初旬以来7ヵ月ぶり。上昇幅としては昨年9月3日(+26.5ドル、1.73%)以来4ヵ月ぶりの大幅上昇、水準としては昨年高値となった9月4日(1,560.4)以来、これも4カ月ぶりの高値。東京時間に伝えられた米軍によるイラクの首都バグダッドでのイラン革命防衛隊・精鋭組織司令官殺害事件により、米国とイランとの緊張感の高まりが警戒されてリスク回避の流れが急速に進行。欧州時間までに1550ドル台へと20ドル超の急騰、NY朝には一時1540ドル前半までの調整も、米12月ISM製造業景況指数の下振れを受けてNY午後には1556ドルまで上昇。昨年高値圏までの急騰でやや不安定な状態となっての乱高下の展開から高止まりの状態へ。中東情勢も不安定な状態から緊張感の高止まりへ。過去最高値更新が続いた米株も急落し、ボラティリティの拡大も予想され、今後の動向次第で再び乱高下の展開となって一段高への可能性とともに急反落の可能性も。
週間ベースでは+34.3ドル、2.26%の続伸。
NYプラチナは+5.3ドル、0.54%高となって4日続伸。2018年2月26日(1001.8)以来、1年10ヵ月ぶりの高値水準。時間外には一時前日高値を超え、9月の昨年最高値1000.8ドルもわずかに上回る1001.4ドルまで上昇。しかし、今回も大台を維持することはできず、NY朝には990ドルをはさんでの揉み合い状態へと逆戻り。結果的に10ドル程の行って来いの展開となって大台にはワンタッチしただけで長めの上ヒゲを残す形となり、ダブルトップの可能性を残しての急反落警戒感も。ただ、過熱感はそれほどないだけに足場固めができれば、いずれ大台再トライと主要レンジの上方シフトへの可能性も。
週間ベースでは+39.9ドル、4.2%の続伸。4ヵ月ぶりの大幅上昇。
ドル円は50銭弱のドル安円高となって5日続落。昨年10月31日(108.01)以来、2ヵ月ぶりの安値水準に。米軍によるイラン司令官殺害事件を受けて東京時間には108円ちょうど付近まで、60銭程度の急落。株安の流れが続くなか、円高の流れにドル高が追いつく形にもなって欧州時間にかけては108円前後では下げ渋り。108円20銭台まで反発したNY時間にはISM製造業景況指数の結果を受けて戻り売り、一時107円80銭台まで下落。地政学リスクの一時的な高まりだけに終われば急速に戻す展開も想定されるものの、イラン側は報復を表明し、米軍は増派の動きもあり、事態がエスカレートする可能性への警戒感も。強めのサポートを形成していた108円40銭を大きく割り込み、下値トライの流れが本格化した可能性もあり、週明け朝には日経平均の急落とともに一段安の展開にも。当面の下値目標は8月後半安値圏で長期三角保ち合い下限ライン付近にも相当する105円半ば。
週間ベースでは-87銭、0.8%の続落。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場1/3終値とチャート
2020年1月4日(土)時点の相場
国内金:5,790 円 12/27(金) ▲43(0.75%)
国内プラチナ:3,616 円 12/27(金) ▲27(0.75%)
NY金:1,552.4 ドル 1/3(金) ▲24.3(1.59%)
NYプラチナ:990.3 ドル 1/3(金) ▲5.3(0.54%)
ドル円:108.11 円 1/3(金) ▼0.45(0.41%)
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