利上げを可能にした労働指標の回復=イエレン・ダッシュボード
更新日:2015年12月09日(水)
米労働省が発表した雇用動態調査(JOLTS:Job Openings and Labor Turnover Survey)で、10月の求人件数は538.3万件となり、市場予想の550万件を下回りました。しかし、統計開始の2001年以来の最高水準を更新した4月以降、530万件超の高水準を7カ月連続で維持。年間平均では531.9万件となり、2013年の391.8万件、2014年457.9万件から大幅増で過去最大水準を更新中。
求人件数については、半年以上前から既に利上げに向けてのサポート指標となっていた状況です。
イエレンFRB議長が労働市場の回復状況を見極めるために注目してきた
イエレン・ダッシュボードの2015年12月版では、9指標中4指標で回復率100%を達成。
リセッション前の水準に100%回復しているのは、非農業部門雇用者数(前月比増加数3カ月平均)、失業率、求人率、解雇率。
イエレン・ダッシュボードとして注目を集めた1年半前の時点と比較すると、米労働市場は全般的にそれなりの回復傾向が続いています。
2014年5月時点で既に100%回復となっていたのは、非農業部門雇用者数と解雇率の2指標のみ。
失業率:2014年5月の6.3%から5.0%まで低下し、回復率74%から100%に到達。
長期失業者の割合:35.3%から25.7%まで低下し、回復率では38.2%から74.8%まで上昇。
U6失業率:12.3%から9.9%まで改善、回復率は58.3%から86.9%まで上昇。
求人率:2.9%から3.6%へ改善、回復率92.9%から142.9%へ。
退職率:1.8%から1.9%へ小幅改善、回復率は62.5%から75.0%へ。
採用率:3.4%から3.6%へ小幅改善、回復率は60%から80%へ。
労働参加率は62.8%から62.4%まで低下し、62.5%へと上昇した状態。最低水準からは2.7%の回復もリセッション前の66.1%には程遠く、低迷が続きます。
ただし、米労働省の見通しによれば、人口高齢化によって労働参加率は低下傾向にあり、2024年には60.9%まで低下すると予想されています。
この影響により労働年齢人口の伸びも鈍化傾向が予想されており、状況が変わりつつあることで、過去の目安となる水準にまで全ての指標が回復するかどうかは微妙なところです。失業率はすでに完全雇用と言われるレベルに達していることもあり、数年後には上昇も予想されます。
100%到達済指標の極端な鈍化傾向がないこと、長期失業者、U6失業率、退職率、採用率のさらなる改善傾向が見られるかどうかなどが、来年の利上げペースの判断材料の一部となります。
8日のNY金相場は前日からほぼ変わらずの0.1ドル高。戻り売り優勢の流れも、最近の安値揉み合いレンジ上限付近でもある1060ドル台半ばまでで反発。原油の一段安に伴う株安ドル安のリスク回避的な流れで買われる展開へ、しかしこれも限定的。わずかに上方向優勢の流れで上限突破なら1100ドル台を試す可能性も、しばらくは1050ドルから1080ドル台までのレンジ内推移継続優勢か。
NYプラチナ相場は1.93%の大幅続落。リスク回避的な流れでの金の反発に対しては追随できずに下方向へと逆の流れ。ドル高新興国安の流れでも売られやすく、資源安欧州株安などの流れでも売られやすい現状からは、大きな流れが変わる為にはもう少し時間が必要か。短期的にはまだ上値トライへと向かう可能性も残されるものの、徐々に下押し圧力が強まる状況に。下方向へと再加速し、安値更新の場合には800ドル台が視野に。
ドル円相場は0.36%のドル安円高となり、3日ぶりの反落。とまらない原油安を懸念したリスク回避的な株安の流れに円高圧力が高まる流れにも、下値は122円70銭台では底堅さも。このまま123円台前半へと水準を戻し、上値トライ再開へと向かうことができなければ、保ち合い継続へ。この場合、保ち合い長期化に伴い次回ブレイク時には大幅変動の可能性も。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場12/8終値とチャート
9日の国内金価格は前日から3円安でほぼ変わらず。今年最安値圏トライに向かう直前、11月半ばの安値4550円台で下げ止まりの兆し。この近辺を下限に4600円までのレンジ構成となれば、再び上値トライをうかがうチャンスも。NY金の底堅さ継続でドル高の流れ再開となれば4600円台半ばへと水準を切り上げる可能性。
国内プラチナ価格は1.07%の大幅続落。直近の上値目安3630円を下抜けたことで下げ止まりの可能性も高まる水準。しかし、NYプラチナの下値トライ再開への警戒感もわずかに高まりつつあり、加速した場合には多少の円安ではサポートし切れない状況も。目先は3530円まででサポートされる可能性のほうが高いと予想されるものの、もしここを割り込んだ場合には3450円台が次の安値メドに。
※参考:
金プラチナ国内価格12/9とチャート
2015年12月09日(水)時点の相場
国内金:4,551 円 12/9(水)
▼3(
0.07%)
国内プラチナ:3,611 円 12/9(水)
▼39(
1.07%)
NY金:1,075.3 ドル 12/8(火)
▲0.1(
0.01%)
NYプラチナ:846.5 ドル 12/8(火)
▼16.7(
1.93%)
ドル円:122.93 円 12/8(火)
▼0.44(
0.36%)
12/8(火)のその他主要マーケット指標
2015年を象徴した資源安を牽引してきたプラチナと原油 12/10(木)労働市場情勢指数(LMCI)はプラス維持も減速、今後の懸念材料に 12/08(火)国内金プラチナ価格差も過去最大水準から縮小の兆し 12/07(月)好結果の雇用統計にもドル高は限定的、ドラギショックの影響も? 12/05(土)
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