予想外の事がしばしば起きる英国、金融政策でも利下げ見送り
更新日:2016年07月15日(金)
英国の中央銀行、イングランド銀行(BOE)のカーニー総裁は、Brexit後の景気減速を懸念して追加緩和の可能性に言及していました。市場も早速この7月に利下げするものと予想していましたが、またも予想は裏切られました。政策金利は0.50%に据え置かれ、資産買い入れプログラムの規模も3750億ポンド据え置きが決定されました。これを受けてポンドが急速に買われたことによる影響で為替や株式市場でも若干の乱高下はあったものの、限定的に留まりました。
スーパーサーズデーとして同時発表されるようになった議事録では、大半の委員会メンバーが8月の金融緩和を見込んでいるとされ、3週間後、8月4日の委員会での利下げが見込まれることになりそうです。
Brexitによる影響が、今のところはそれほど懸念された状況でもない、ということも利下げ見送りにつながった可能性もありそうですが、それでもBrexit翌月に当たる今月、特に昨日からスタートした月後半にかけては英、欧、米、日と主要4通貨の金融政策会合が集中する金融政策ウィーク。
英国の追加緩和を皮切りに、必要に応じて他の中央銀行も、との思惑もなかった訳でもなく、BOEの利下げ先送りを受けて他の中銀がBOEよりも先に行動を起こすのも多少ためらわれるような雰囲気も。しかも8月にはBOE以外、日米欧の金融政策会合は予定なし。
米国の7月利上げ見送りについては確実な状況にはあるものの、日銀の追加緩和と政府の経済対策発表については既に織り込まれ、永久債やヘリコプターマネーなど、やや非現実的で過激な報道で市場を煽るような風潮も。
月末に日銀が予想を裏切るようなことにでもなれば、警戒感が薄れつつあるBrexit級程度のリスク再燃となり、Brexitの巻戻しが進行してきた株高・円安の流れも再び大きく逆流することも想定されそうです。
そして、予想外の事がしばしば起きる英国では、8月緩和見送りの可能性も否定できず、そうなれば世界の主要中銀ほぼ全てのゼロ金利・全面緩和政策に支えられての夏場の金相場ラリーへの思惑も剥落することになりかねません。
14日のNY市場では
ダウが5日続伸で3日連続最高値更新、S&P500は4日連続最高値更新と株高基調継続、対照的に
VIX指数は年初来安値更新とリスク選好地合い。NY金相場は0.85%の反落で6月30日(1320.6)以来2週間ぶりの安値水準。東京市場からの円安・株高基調に安全資産の金は売り先行、NY市場ではBOEの利下げ見送りを受けて一時1320ドルまで下落。NY市場終盤にかけては株価の伸び悩みとともに反発すると、サポートラインの1330ドル台をなんとか回復。しかし、下方バイアスが強まり調整局面拡大へと向いつつあり、再び1330ドル台を割り込むと一段安の可能性。目先の下値目標水準は1310ドル前後。一応まだ高値保ち合いの体をなしており、1340ドル台上抜けの場合には1370ドル台の高値再トライの可能性も若干程度は残される状況。
NYプラチナ相場は0.4%の小幅続伸。金に連れての軟調推移局面での下げ幅はこの日も1080ドル台までと限定的。欧米株の堅調推移にも支えられるように、金に先行して反発すると1100ドル台を回復。過熱感も異常に高まる状態のなか、1090ドル台から1110ドルまでを主要レンジとする高値保ち合いを形成。高値更新へと上抜けの場合には1130ドル付近を目指す展開へ、下抜けなら1070ドル付近が下値目安に。
ドル円は0.83%の反発で6月23日(106.15)以来3週間ぶりのドル高円安水準。東京市場午後には本田内閣参謀関与が4月訪米時に永久国債の発行をバーナンキ前FRB議長と議論したとの発言が伝わり104円60銭台から105円30銭台へと急騰、その後も欧州市場にかけて105円90銭台まで上値を切り上げ、NY市場にかけては反落基調。「財務省内ではヘリコプターマネーについて議論していない」報道などもあり、予想外のBOE利下げ見送り後の乱高下局面では105円20銭台まで下落。既にBrexit前の水準104円台を超えており、目先は106円程度までが上限となって保ち合い形成への展開も予想される。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場7/14終値とチャート
15日の国内金価格は0.29%の小幅高となり、4カ月ぶりの5日続伸。3月17日(4898)以来4カ月ぶりの高値水準となり、
上値目標上限4830円近辺にもほぼ到達。ヘリコプターマネー、もしくはそれに相当する経済対策と追加緩和への過剰期待による株高・円安が続く状態にあり、もう一段の行き過ぎへの可能性と期待剥落による急反落への警戒感とが交錯し始める状況に。下方向には4720円のサポートライン辺りまでが警戒水準、上方向には
ダブルボトムからの反発目安4850円台にも手が届きそうな状況に。
週間ベースでは+104円(2.2%)となって3週続伸。
プラチナ価格は1.27%の大幅高で2月以来5カ月ぶりの5日続伸。2カ月ぶりの年初来高値更新で昨年11月9日(3977)以来、8カ月ぶりの高値水準。RSIは昨年10月のピーク88.2を超える88.9まで上昇。すぐに急反落とはならない可能性もあるものの、目安としては6月末以降の上げ幅に対する23.6%戻しとなる3852円辺りまではいつ急落してもおかしくはない。ただ、あり得ないと思われるような急騰、急落局面が時折り見られることがあるプラチナ相場の場合、現在南アフリカで行われているプラチナ鉱山会社の労使交渉のもつれなど、供給懸念が高まるような事態が発生するとさらなる急騰となり、
可能性は極めて低いと思われた4070円台の上値目安が現実となる確率も数%程度に高まった可能性も。
週間ベースでは+216円(5.75%)となり、4週続伸。上昇率では1月25日からの週(+6.2%)以来半年ぶりの大幅上昇。4週続伸は2014年12月以来1年7カ月ぶり。
※参考:
金プラチナ国内価格7/15とチャート
2016年07月15日(金)時点の相場
国内金:4,825 円 7/15(金)
▲14(
0.29%)
国内プラチナ:3,974 円 7/15(金)
▲50(
1.27%)
NY金:1,332.2 ドル 7/14(木)
▼11.4(
0.85%)
NYプラチナ:1,104.6 ドル 7/14(木)
▲4.4(
0.40%)
ドル円:105.34 円 7/14(木)
▲0.87(
0.83%)
7/14(木)のその他主要マーケット指標
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