FRB緊急利下げも株価下支えに失敗、金価格は急騰
更新日:2020年03月04日(水)
G7財務相・中銀総裁電話会談では、事前に協調利下げは見送りとの観測が報道され、市場にはやや失望感もありました。それでもNYダウなどは前日に過去最大の上げ幅を記録した勢いを残し、比較的静かな反応。2週間後に開催される3月FOMCでの50ベーシスポイント(bps)=0.50%の利下げを100%織り込んだ状態で、催促相場の状態でFOMCを待つ姿勢。
実際にG7財務相・中央銀行総裁緊急電話会議をが行われ、米財務省が発表した声明では、「財政出動を含めた行動の用意」があることや、「経済や市場の安定に向けてG7は協力」し続けて「中央銀行は引き続き責務を全う」するとの宣言。要は協力体制ながら「今は何もしない」ことを宣言。
ただ、これも事前織り込み済でもあり、市場の反応も限定的となりました。
しかし、その後まもなくFOMCの臨時会合と0.50%の緊急利下げ発表。緊急利下げは2008年10月以来、リーマンショックの時以来。0.50%以上の利下げも2008年12月(1.00%から0.25%へ0.75%利下げ)以来、金融危機以来、11年ぶり。
新型コロナウイルス感染拡大を警戒し、過去最長となっている米国景気の拡大が失速することを予防するための対応で株価下支えの措置としてはやや違和感も残るところ。
むしろ、リーマンショック級のことが起きている?と市場の危機感を煽ることになったのではないか、とも思われるような強引なタイミングでの緊急利下げには、市場反応にも違和感。これを歓迎するはずの株価は一瞬の上昇にとどまり、NYダウなどは再び700ドル超、3%弱の急反落。
この対応にしっかりと反応したのは米10年債利回り。過去最低を更新し、1.0%割れへ、歴史的低水準へと急低下。
これに呼応するように、NY金も急騰。
週足では、先週の急落でその前の週の陽線ロウソク足の実体部を包み込む上ヒゲ陰線を形成し、ピークアウトの可能性が警戒される状態から、緊急利下げに救われて息を吹き返した状態に。
3日のNY金は+49.6ドル、3.11%の大幅続伸。上昇率としては昨年6月20日(+48.1ドル、3.57%)、利下げを示唆したFOMCの日、夏場の金価格急騰のきっかけにもなった日、
歴史的節目を突破して流れが大きく変わることになる起点となった日以来、8ヵ月ぶり。当時2%割れへと急低下した米10年債利回りは今や1%割れ。なお、上昇値幅としては2016年6月24日(+59.3ドル、4.69%)、英国の国民投票でEU離脱が決まった歴史的な日以来、3年8ヵ月ぶり。本日は米国でスーパーチューズデー。結果次第では、後で振り返れば歴史的な日にもなりかねない要注意日。
この日時間外に1600ドル台へと小幅に水準を切り上げていたNY金は、NY市場でのFRB緊急利下げ発表を受けて1640ドル台へと40ドル程の急騰。NY引け後にかけては1650ドルを試す動きも。2月24日につけた7年ぶり高値1691.7ドルから月末安値1564.0ドルまでの急落幅の23.6%戻し(1594.1)からの急騰で61.8%戻し(1642.9)を達成した状態。水準的には落ち着きやすいところながらも、市場のムードは落ち着かない状況。上方向への次の節目は76.4%戻し(1661.6)。
NYプラチナは+9.9ドル、1.15%高となって9日ぶりの反発。緊急利下げ発表後には860ドル付近から880ドル台へと20ドル強の急騰、しかしその後は米株の急反落にも連れる形で860ドル台半ばまで反落の展開に。ただし、NY引け後にかけては米株の下げ渋りとNY金にも追随する形で880ドル再トライの動きにも。今年安値となった2月末の846.2ドルを底値として、これ以降の3日間では下値を徐々に切り上げ、880ドル台前半で上値を押さえられる状態。この水準を突破することができれば、反発方向への流れへ、200日移動平均線(900.3)と900ドルの大台回復をかけた攻防へ。
金との価格差は2月27日の737ドルを超え、775.1ドルへと急拡大。
ドル円は1円20銭、1.12%のドル安円高で大幅反落。10月8日(107.07)以来、5ヵ月ぶりの安値水準に。東京朝には買い先行の展開で108円50銭台まで上昇も前日高値が超えられずに失速。G7財務相・中銀総裁の緊急電話会談が予定されながらも「現時点で協調利下げや財政出動といった具体的な政策対応は盛り込まない方向で調整」との報道もあり、上昇していた日経平均が反落に転じるとこれに追随する展開となって軟調推移。東京時間午後には107円60銭台まで下落する荒っぽい展開。NY時間の緊急利下げに対しては米株と同じような反応となって一瞬上昇した後は急落の展開となり、一時107円割れ。短期的には108円を割れたことに伴う
下値目安107円付近まで、一気に到達してしまった形。一服感から今朝の東京市場では107円30銭台まで小反発。株安と長期金利低下の流れが止まらず、円高圧力が再燃するようなら行き過ぎの目安としては長期三角保ち合いの下限付近、106円近辺まで。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場3/3終値とチャート
4日の国内金価格は+129円、2.12%の大幅続伸。1月8日(+130円、2.19%)、年初の急騰で40年ぶりに6000円台へと急騰した日以来、2カ月ぶりで今年3番めの大幅高(※今年最大は年初の日、1月6日の+137円、2.37%)。緊急利下げを受けてNY金の3%の急騰を1%の円高で一部相殺されて2%の上昇、従来のオーソドックスな展開に戻ってきた様子も。水準としては今年高値6397円から3月2日の6017円までの急落幅の半値戻し(6207)付近に到達。次の上方向への節目は61.8%戻し(6252)付近、下方向には38.2%戻し(6162)が目安に。
プラチナ価格は前日から変わらず。NY金の3%上昇に対してNYプラチナは株安に連れた分伸び悩んで1%の上昇にとどまり、1%の円高に相殺されて身動きがとれない国内プラチナ価格、という構図も従来から割と見られた展開。NYプラチナの下げ渋りにサポートされる状態でもあり、いったん底打ちとなる可能性も徐々に高まりそうな状況にも。いかんせん、市場の不安定さは続くだけに、予想外の乱高下にも要警戒、という状況でも。今年高値から安値までの23.6%戻し(3416)付近が上方向への目安となり、下方向に今年安値を割り込んでしまうと3210円台辺りまでが下値目安にも。
金との価格差は2月28日の2832円を上回り、2884円まで急拡大。
※参考:
金プラチナ国内価格3/4とチャート
2020年03月04日(水)時点の相場
国内金:6,204 円 3/4(水)
▲129(
2.12%)
国内プラチナ:3,320 円 3/4(水) +-0(0.00%)
NY金:1,644.4 ドル 3/3(火)
▲49.6(
3.11%)
NYプラチナ:869.3 ドル 3/3(火)
▲9.9(
1.15%)
ドル円:107.12 円 3/3(火)
▼1.21(
1.12%)
3/3(火)のその他主要マーケット指標
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