実質実効為替レートではドル高に追随する円高
更新日:2021年09月21日(火)
BIS(国際決済銀行)が公表している実質実効為替レート(世界主要61カ国を対象に主要貿易相手国との為替レートを貿易額に応じて加重平均、物価調整を含めて指数化)では、今年夏以降はゆるやかなドル高基調が続きます。6月FOMCでのタカ派見通しをきっかけに、早期テーパリングとインフレ高騰懸念、さらには早期利上げ観測への思惑などが背景となってきました。
2021年に限れば、実質実効為替レートでは年初から9月13日までの時点で米ドルは3%程上昇、日本円は4%余りの下落。ドル高円安が進行しています。ただし、明確に方向感が別れたのは年初から3月まで。ワクチン格差を反映する形で米国の景気回復の勢いも意識され、日本の出遅れ感との格差拡大がそのまま実質実効為替レートの上昇と下落に反映された格好に。
ただ、その後米ドルと日本円は3月以降、ほぼ連動しての推移となっています。
2020年1月1日を100とした指数で推移を比較すると、コロナショック時のピークの若干のズレはあるものの、2020年夏までは米ドルと日本円はほぼ連動して推移してきました。
2020年夏以降は、米国の感染拡大とで気回復遅延も懸念されてドル安が進行したのに対し、感染拡大が比較的低水準にとどまった日本円は高止まり状態が続いて格差拡大。しかし、2021年序盤には米国でのワクチン先行スタートでドル高、ワクチンで出遅れて感染者も急拡大した日本円は急速に円安へ。そして連動状態へと至ります。
今年夏以降は、米国の景気回復とインフレ、金融政策正常化に向けた思惑からゆるやかにドル高が進行しているのに対し、出遅れていた日本のワクチン摂取も急速に進行していることなども円高をサポートしているようです。
9月FOMC通過後には、早期利上げ観測などを睨んでのドル高基調の加速も警戒され、円高基調がどこまで追随できるか。格差拡大ならドル高円安となってドル円にトレンド形成も、という展開も想定されましたが、ここに来てリスク回避の円高先行の可能性とドル高がどこまで追随できるか、格差拡大ならドル安円高でのトレンド形成へ、もしくは円高ドル高でトレンドレス状態継続へ、という展開も想定されそうな状況にもなってきました。
20日のNY金相場は+12.4ドル、0.71%高となって4日ぶりの反発。FOMC直前の週明けは早期利上げ観測などへの警戒感から売り先行、先週末の1750ドル台を割れると小幅に急落となって8月11日(1724.6)以来、1ヵ月半ぶり安値となる1740ドル付近まで下落。しかし中国不動産開発大手、中国恒大集団(エバーグランデ)のデフォルト懸念が強まったことでリスク回避の流れが急速に進行。米10年債利回り急低下と株安の流れに連れて反発した流れでロンドン市場までに1750ドル台へ、NY市場で1760ドル台を回復するとダウが一時1000ドル弱下げたこともあり、高値では1770ドル手前まで上昇。ただ、このタイミングでこの流れがさらに続くかどうかは微妙。FOMCへの警戒感再燃との交錯で上下に振れる展開にも。目先、上方向には1790ドル付近に抵抗感、その上には1810ドルが強めの抵抗水準。これらを上抜けることになれば流れも好転へ。下値サポート1750ドルを維持できなくなれば、まずは1730ドル前後までの一段安、さらには8月安値1670ドル台までが下値警戒水準。
NYプラチナは-31.4ドル、3.37%の大幅反落。下げ幅としては今年の平均騰落値幅17.3ドルの2倍弱、今年10番めの急落となって昨年11月13日(896.0)以来、10ヵ月ぶりの安値。週明け時間外序盤はNY金の軟調推移に連れると930ドル台から加速、920ドルの下値サポートを割り込むと一段安となって一時900ドルの大台割れ。920ドル割れに伴う下値目安900ドル前後までを達成後は、中国恒大ショック懸念によるNY金の反発基調に追随も、920ドル台では失速。NY市場にかけては米株急落にも連れる形で下値再トライとなって再び900ドルの大台割れ、890ドル台ではなんとか下げ渋ってNY引け後には大台を回復。下値目安にしっかり到達しての反発基調では930ドルが抵抗水準に、突破できれば950ドル台辺りまでの一段高も。下値再トライとなれば昨年秋の保ち合い下限850ドル近辺までが下値警戒水準。
ドル円は60銭程のドル安円高、0.54%安となって3日ぶりの反落。敬老の日の祝日で東京市場が休場となった週明け、朝には先週末からの110円トライが続くも110円台維持には失敗。それでも東京市場の時間帯までは109円90銭近辺までの小幅保ち合い推移で静かな展開。その後は中国恒大ショックへの警戒感から株安・円高の流れとなって欧州時間までに109円60銭台、NY朝には109円40銭台へと下落。その後も米株の一段安などにも連れて安値では109円30銭付近まで下落。しかし、保ち合い下限でこれまで何度も下値をサポートしてきた109円30銭を割れることはなく、今朝の東京市場では109円50銭台へと反発の兆しにも。目先、いったんはFOMCへと主要テーマは移行、タカ派傾斜なら110円の上限トライへ、超えると今年高値更新を目指す流れとなる可能性。予想外にハト派なら下限再トライへ、割れるようなら4月安値圏107円台半ばを目指す流れにも。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場9/20終値とチャート
21日の国内金価格は+23円、0.34%高で3営業日ぶりの反発。FOMC前に3日続落で一段安となる可能性もあった状況を中国発リスクオフの流れで救われた格好にも。先週末の急落からはいったん下げ渋る形となり、8月安値6710円からの二番底と見ることも可能な範囲で反発への準備態勢。反発方向へは6900円の大台回復の可否がポイントに、6760円割れへと一段安トライなら8月安値近辺までが下値目安。
プラチナ価格は-78円、2.16%の続落で昨年12月1日(3486)以来、9ヵ月半ぶりの安値。先週末の3620円台の安値更新に伴う短期下値目安3580円近辺を突き抜け、連休中のNYプラチナの軟調推移を反映する形で3500円台前半へと一段安。やや一方的な下げ基調も、NYプラチナの一服感とともに下げ止まるのにも程良い水準にも。下げ止まらない場合には昨年11月の押し目形成水準3500円割れがサポート候補にも。
※参考:
金プラチナ国内価格9/21とチャート
2021年09月21日(火)時点の相場
国内金:6,787 円 9/21(火)
▲23(
0.34%)
国内プラチナ:3,536 円 9/21(火)
▼78(
2.16%)
NY金:1,763.8 ドル 9/20(月)
▲12.4(
0.71%)
NYプラチナ:899.2 ドル 9/20(月)
▼31.4(
3.37%)
ドル円:109.38 円 9/20(月)
▼0.59(
0.54%)
9/20(月)のその他主要マーケット指標
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