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「LIBOR不正操作」
英金融大手バークレイズの前CEOダイヤモンド氏の辞任などで騒ぎが大きくなったLIBOR不正操作の問題。
問題はLIBOR(London Inter-Bank Offered Rate:ロンドン銀行間取引金利)を不正に操作したことで米英当局が6月末にバークレイズに対して2億9千万ポンド(約360億円)の課徴金を科した、というだけのことではなく、その裏に根深く、大きな問題を抱えているようです。
LIBORの金利は、ドルだけでなくユーロや円など多数の通貨においても算出され、当該通貨毎に英国銀行協会(BBA)が指名した有力銀行、十数行から自主申告を受け、申告された金利の内、上下4行を除外して残りの金利の平均値を計算、これを当該通貨の「LIBOR金利」として公表する仕組み。
従って単独犯行は不可能です。
この問題が単なるスキャンダルに終わらない理由の一つは、LIBORを基準とする金融資産が莫大に存在するからです。
正確な数字は不明ですが、世界のあらゆる資金取引、デリバティブ取引などの基準金利となっており、銀行間の取引はもちろん、企業や個人が変動金利でお金を借りる場合の基準になっていることも多いようです。米国ではLIBOR関連の住宅ローンやクレジットカードもあり、日本でも投資信託や社債の一部はLIBORに関連。
BBAや国際決済銀行(BIS)などが推計値を出していますが、その規模は360兆ドル(約2京8千兆円)とも504兆ドル(約4京円)以上とも言われ、世界の国内総生産(GDP)の69兆ドル(約4600兆円)をはるかに凌ぐ数字となっています。
その莫大なLIBOR関連資産のうちの大半を占めるのが金利スワップ取引。米地方自治体や年金基金では金利の変動リスクを抑える為にLIBORを基にしたスワップ取引を利用しており、そこに不正操作があったとなれば黙ってはいられません。訴訟も起き始めています。いずれ巨額の集団賠償訴訟へと発展していく可能性も否定できません。しかし、複数行による共謀の事実や、不正操作された時点のLIBORの適正金利を証明することが至難の業であることもまた事実。
LIBOR不正操作は2005~2009年頃にかけて行われていたとも言われますが、少なくとも2008年4月には、米ニューヨーク連銀では事実を認識しており、マスコミなどでも騒がれ始めた経緯もあります。2008年のリーマンショックによる金融危機対応に追われて不正操作問題はなおざりにされ、4年後の今年になって事態は急転。しかし4年の放置期間が実体解明をより困難にしていることも間違いなさそうです。
今になってNY州とコネチカット州では共同調査を開始し、米司法省も複数の金融期間を調査し始めています。
イングランド銀行(BOE:英中央銀行)総裁にまで波及する疑惑は前代未聞の一大金融不祥事に発展。
FRBのバーナンキ議長をして「構造的な欠陥がある」と言わしめた「LIBOR」。
現状ではLIBORに替わる指標金利はない、とする専門家も多いようです。
9月にバーゼルで行われる各国中央銀行総裁会合でLIBOR改革、廃止も議論される予定のようですが、
金融市場の混乱はそう簡単には収集しそうにありません・・・
最終更新:2012年07月25日
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