金プラチナ短期相場観
低インフレ懸念に製造業受注も3年ぶり低水準、金は1年ぶり高値
更新日:2017年9月6日(水)
米商務省が発表した7月の製造業受注は前月比-3.3%となり、2014年8月(-9.4)以来、約3年ぶり低水準となりました。市場予想どおりの結果とはいえ、大幅な落ち込みはドル売りが進行するきっかけの一つとなったようです。
なお、3カ月平均でも-0.1%となって1年ぶりの低水準へと落ち込んでおり、2014年末以降の上昇傾向が2017年には頭打ち傾向となっているのが見て取れます。
ただし、先日発表された8月のISM製造業景況指数は6年4カ月ぶり高水準へと反発し、米製造業の景況感は好調を示しています。また、8月の雇用統計でも製造業雇用者数の伸びは前月比+3.6万人となり、2013年8月以来4年ぶりの高水準を記録し、加速基調を強めています。
上下の振れ幅が大きくなりやすい製造業受注も、8月には大幅反発も有り得そうです。
一時的な落ち込みかもしれない7月の製造業受注がこの日、ドル売り材料となってしまったのは、ブレイナードFRB理事の発言によって既にドル売り基調が進行し始めていたことが大きく作用したものと思われます。
ハト派の代表格でもあるブレイナード理事は、インフレ率が目標2%を大幅に下回っていることへの懸念を示し、物価上昇の確信を得るまでは「利上げに慎重」になるべき、との発言。さらに、潜在的なインフレ水準は現時点よりもさらに低迷している可能性への警戒感も示しています。
ある程度予想されたハト派発言ながら、あらためて指摘され、追加利上げへの慎重姿勢を再確認したこと、さらに、悪化が予想されていた指標もそのとおりの結果を確認したことにより、やや一方的な流れが加速してしまった様子で、NY金は1年ぶり高値水準へと上昇することとなりました。
なお、その後ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も「FRBはインフレ見通しを引き下げるかもしれない」とのハト派発言、今朝にはダラス連銀のカプラン総裁も「年内の利上げも引き続きインフレ動向を見る必要」と慎重姿勢を示し、ブレイナード発言に同調した形となり、今朝時点でのCMEフェドウォッチの12月利上げ確率は33.8%まで低下しています。
地政学リスクが一時的に緩和されても、低インフレ懸念による利上げ観測後退が金価格を支える状況にあるようです。
3連休明けとなった5日のNY金相場は前週末比+1.06%の大幅高となって3営業日続伸。高値では昨年9月8日以来、1年ぶりとなる1350ドル目前まで上昇。北朝鮮リスクを受けて週明け時間外に1340ドル台へと水準を切り上げた後は調整の動きとなり、NY市場朝にかけて一時1330ドル付近まで下落。しかし、その後はブレイナードFRB理事のハト派発言を受けて米長期金利低下とドル売りが進行したことで1340ドル台後半へと反発。短期的にはやや一方的な上昇局面が続いて過熱感も高騰、調整も入りやすい状況に。この日の値動きからは、材料がなければ1330ドル程度までの調整はすぐにでも入る可能性が高いことを示し、値幅からはここまでの23.6%戻しとなる1315ドル近辺までの調整余地も。
NYプラチナ相場は前週末から変わらず横ばい推移。週明け時間外に1018ドルまで上昇し、半年ぶり高値更新後には1000ドル付近まで調整、もなんとか大台を維持。NY市場での反発局面では1010ドル台半ばまでと上値も限定的に。金との勢いの差が表れ、価格差も3カ月ぶりに330ドル超へと拡大。目先は1000ドルの大台維持できる限りは1020ドル台までの上値余地も残される状況。大台を完全に割り込むようだと970ドル前後までの調整局面入りも。
ドル円は0.82%のドル安円高となって続落、4月18日以来5カ月ぶりの円高水準に。東京市場午後に北朝鮮のICBM級ミサイルの移動が伝えられると109円20銭台まで円高進行後、NY市場ではブレイナード発言や低調となった7月製造業受注などもあり、109円割れ。109円台後半での小幅保ち合いを形成し始めていた状態からの急落となったことにより、下値目安109円割れ水準に到達。短期的には反発も想定されるところも、連休明けのNYダウが200ドル超の大幅安となり、米10年債利回りも10カ月ぶり低水準となる2.10%割れへと低迷していることなども上値の重石となり、今朝の東京市場でも108円70銭前後で低迷中。7月以降の下落トレンドチャネル内に回帰した状態となり、109円台へと反発できないようなら、円高ドル安圧力が再び強まる可能性も。週末にかけての北朝鮮の動向も警戒材料となり、水準としては8月末安値108円20銭台、今年安値108円10銭台も意識される状況に。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場9/5終値とチャート
6日の国内金価格は0.42%安で続落。過熱感解消を伴う適度な調整水準に入ってきた様子も、さらなる調整余地も。NY金は高値圏、ドル円は安値圏で短期的には調整濃厚となる水準に到達も、地政学リスクと米金融政策動向、その材料となる経済指標動向にも振られる非常に不安定な局面に。今回の急騰局面の23.6%戻しとなる4980円前後までの調整は十分想定され、5050円が上方向への当面の節目ライン。超えると5090円台が次の上値目標水準に。
プラチナ価格は0.76%の続落。適度な調整の範囲内で上昇トレンドは維持。今回の上昇幅の23.6%戻しとなる3751円、9日移動平均の3754円付近を下回るようだと短期上昇トレンドは終息へ。反発して3820円の上限を突破するようなら3860円台までが次の上値目標水準。
※参考:金プラチナ国内価格9/6とチャート
- 2017年9月6日(水)時点の相場
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国内金 : 5,008 円 9/6(水) ▼21(0.42%) 国内プラチナ : 3,768 円 9/6(水) ▼29(0.76%) NY金 : 1,344.5 ドル 9/5(火) ▲14.1(1.06%) NYプラチナ : 1,009.0 ドル 9/5(火) +-0.0(0.00%) ドル円 : 108.81 円 9/5(火) ▼0.90(0.82%)
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