金プラチナ短期相場観
在庫不足と価格上昇で伸び悩む米住宅市場に潜む社会問題
更新日:2017年10月27日(金)
全米不動産業者協会(NAR:The National Association of Realtors)が発表した9月の中古住宅販売成約指数は106.0で8月から変わらず。市場予想の前月比+0.5%を下回る結果となり、前年比では-3.5%となって3カ月連続の低下。8-9月の指数106.0は2016年1月(106.0)以来、1年7カ月ぶり低水準。この指数のピークは2016年4月の113.6と今年2月の112.3。ダブルトップを形成する形でそのネックライン水準まで低下している状況です。
中古住宅は販売成約後、1-2カ月で最終引き渡しとなり、その時点で中古住宅販売件数に計上されるため、全米の住宅販売件数の9割を占める中古住宅販売件数の先行指標となります。
今回、全米では横ばい推移となったものの、地域別ではシェア4割の南部が3カ月連続の減少となり、指数としては2014年7月(115.8)以来、3年2カ月ぶり低水準となる115.9まで低下しています。9月は他の3エリアが増加したことで南部の減少分をカバーしたことになります。
しかし、他の3エリアの今年の傾向としては、西部は上昇傾向にあるものの、中西部と北東部は低下傾向にあります。
先週発表された中古住宅販売件数は9月に小反発しており、南部の減少傾向も鈍化の兆しが見られましたが、9月の中古住宅販売成約指数の状況からは、10月以降も低調な結果が予想されそうです。
通常でも冬季に向けては在庫が減少傾向となる為、引き続き在庫不足の状態が続き、価格上昇と合わせて米国の住宅市場の伸び悩みも続くことになりそうです。
なお、住宅価格上昇の影響により、米国では最近ホームレスが増加しているようです。住宅価格の上昇は、賃貸の家賃上昇にもつながり、家賃を払えなくなってホームレス化する人も増えているのだそう。特に西部にその傾向が強く、サンフランシスコやサンディエゴなど主要都市でのホームレス増加が問題となっているようです。
テレビ報道によれば、最近サンディエゴではホームレスを中心にA型肝炎が流行し始めているとのこと。
上下水道などが整備されている先進国では激減しているはずのA型肝炎が、先進国ならではの住宅価格高騰の煽りを受けて、流行することになってしまう、なんとも皮肉な社会問題にもなっているようです。
26日のNY金相場は0.73%の反落。ECB理事会では資産買い入れ額を300億ユーロに減額して9月までとしながらも必要に応じて延長も、と緩和出口は緩やかなペースとの印象でユーロ売りが急進。ユーロ圏でもインフレ圧力が弱まっていることをドラギ総裁は懸念。相対的にドル高の流れが強まったことで金も売り優勢に。米国では次期FRB議長候補からイエレン議長が外れた?との報道に加え、下院で予算決議案が可決されて税制改革の進展が意識されたことで金利上昇、ドル買いの流れが加速。米10年債利回りは今年高値に迫る3月17日以来、7カ月強ぶりとなる2.46%台まで上昇し、NY金も8月8日(1262.6)以来、2カ月半ぶりの安値水準に。金利上昇に比べて下げ渋る状態とも言えるNY金は、少なくとも短期目標水準1250ドル台までもう少しの下落余地も。
NYプラチナ相場も0.5%の反落。既に今年安値圏付近に位置していることもあり、半月ぶりの安値水準ではやや下げ渋る状況。金の20日移動平均線が下落基調となって抵抗線化しているのに対し、プラチナのそれは水平状態を維持。ただし同様に抵抗線化の可能性は懸念される状況に。今のところは910ドル台では底堅さも見られ、流れとしては反発への可能性も残される状況だが。
ドル円は0.22%のドル高円安へと小反発。東京市場では113円30銭台までで下げ渋って反発へ。ドラギ総裁が「テーパリングではない」としながらもECBは既定路線のQE縮小を決定。しかし想定を上回るペースとはならず、むしろ緩和基調継続を強調したことでユーロ安がドル高を支え、ドル円は7月10日(114.03)以来3カ月半ぶりとなる114円まで上昇。FRB議長人事動向に伴い、来年のFOMCメンバ構成がタカ派寄りに傾斜しそうな公算が高まる状況、税制改革の進展が見込めそうな状況なども背景にドルインデックスも3カ月ぶりの水準へと上昇し、抵抗線となっていた94ポイントラインを突破。ドル高の流れ加速に伴い、ドル円も短期目標115円付近を目指す展開へ。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場10/26終値とチャート
27日の国内金価格は0.58%の反落。5000円台での横ばい推移から下放れ、小さなラウンドトップを形成して下方向への流れがスタートしそうな形状・展開に。しかし、18日の4976円を下回らず、保ち合い下限で踏みとどまる状態。ここを割り込んでしまうと下落基調加速の展開へ、10月安値4936円ではサポートされない可能性が高まり、4900円の節目も割り込んでしまうことも想定され、最大では4880円台辺りまでの下落も見込まれる状況に。しかし、意外と底堅いNY金と円安進行度合いによっては反発の可能性も残され、あるいは地政学リスク再燃などで逆流することも。5010円台に切り下げた抵抗水準を上抜けるようなら5100円超えを目指す展開にも。
週間ベースでは-30円(0.6%)となって3週ぶりの反落。
プラチナ価格は0.63%の下落。10月初旬の安値と中旬の高値を起点に三角保ち合いを形成し、そろそろ大きく動き出しそうな様相に。流れとしては上方向優勢ながら、NYプラチナが節目の910ドルを割り込んでしまうと今年安値更新へと大幅安の展開も警戒される状況にあることが懸念材料に。現時点では確率は低そうに見えるものの、もしそうなった場合には国内プラチナ価格も三角保合を下抜けることに。3590円台を割り込んだ場合には今年安値更新トライとなる3520円台が下値目安に。逆に3630円台をしっかり上抜けるようなら反発基調再開で目標水準は9月の下落幅の61.8%戻し、3716円前後まで。
週間ベースでは+15円(0.42%)で反発。
※参考:金プラチナ国内価格10/27とチャート
- 2017年10月27日(金)時点の相場
-
国内金 : 4,977 円 10/27(金) ▼29(0.58%) 国内プラチナ : 3,611 円 10/27(金) ▼23(0.63%) NY金 : 1,269.6 ドル 10/26(木) ▼9.4(0.73%) NYプラチナ : 922.1 ドル 10/26(木) ▼4.6(0.50%) ドル円 : 113.99 円 10/26(木) ▲0.25(0.22%)
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