金プラチナ短期相場観
インフレ2%超へと加速の兆候なし、パウエル発言で金加速
更新日:2018年8月25日(土)
ワイオミング州ジャクソンホールで24日、パウエルFRB議長は講演で米国の経済回復サポートと雇用の伸びを維持し、インフレ抑制に向けて着実な利上げが最善の策であることを明言しました。その一方で、「インフレ率が目標の2%を上回って加速する明確な兆候は見られない」とも発言。
トランプ米大統領がFRBの利上げに対して「気に入らない」と発言して以降、FOMCメンバのなかからは「自身の投票には影響しない」、「政治的影響力に関係なく金融政策を決定することが我々の仕事」などの発言も聞かれました。
一部ではこの日、パウエル議長からもそうした強気の発言が聞かれるのでは、との見方もあったようですが、立場上、一応トランプ大統領への配慮も見せたのかもしれません。
パウエル発言を好感した米株は上昇し、S&P500とナスダックが最高値更新。S&P500は21日に7カ月ぶりに最高値を更新し、強気相場が3452日となって過去最長記録に並んでいましたが、これをさらに更新したことになります。
12月の利上げ織り込み度は68%から63%へと低下、ドル安も進行し、反発基調となりつつあったNY金は急加速しました。
ドルインデックスは95ポイント近辺へと急落しましたが、この水準は5月末から7月末まで抵抗水準となり続け、8月にはこれを突破し、今度はサポートラインとなる可能性もある水準。NY金も8月の急落前の水準、1230ドル程度までの上昇は見込めそうですが、それ以上はドルインデックスの95ポイント割れが必須、ともなりそうです。
90日相関係数では対ドルインデックスの-0.838を上回る-0.978とかなり強めの逆相関を示す、人民元の対ドル為替レートも急速に人民元高方向へと反発しています。
管理変動相場の人民元は人民元安誘導されてきた、との見方もありますが、中国の実体経済の行方を反映しての人民元安という面もかなりあるのではないか、との見方もあります。
ドル安政策をとろうとしているトランプ米大統領は、中国の為替操作を批判していますが、足下の人民元高ドル安の流れも調整の域を抜け切れてはいません。
トランプ大統領の願いどおり、ドル高人民元安の巻き戻しがさらに進行するようなら、NY金の反発局面も一段と進行することにもなりそうです。
24日のNY金相場は+19.3ドル、1.62%の大幅反発。3月23日(+22.5ドル、+1.7%)以来5カ月ぶりの大幅上昇となり、8月10日(1219.0)以来2週間ぶりの高値水準に。前日からのドル高に伴う軟調な流れは時間外に一時1190ドルを割れたところで反転、ロンドンからNY朝にかけてはコンスタントな反発基調となって1200ドルを回復。ジャクソンホールでのパウエルFRB議長講演を受けてドル安の流れが急進し、NY金は1210ドル台へと急騰、一時1215ドルまで上昇。6月14日以来、2カ月ぶりに20日移動平均線(1209.5)を超え、抵抗水準となる可能性もあった1210ドルラインも突破したことにより、もう一段の反発局面継続へ。8月前半の急落局面直前の保ち合い水準、1230ドル近辺までが目先の上値目標に。
週間ベースでは+29.1ドル(2.46%)、3週間ぶりの反発で3月19日からの週(+37.6ドル、2.87%)以来5カ月ぶりの大幅上昇。
NYプラチナ相場は+11.0ドル、1.41%の大幅反発。金に連れての反発基調で780ドル台を回復するもNY朝時点では790ドル手前、パウエル講演後の急騰局面でも790ドル台半ばまでと金に比べて反発力は控えめ。結果的に800ドルの大台ラインにはタッチすら出来ず、790ドル台半ばの抵抗水準にしっかり上値を押さえられてしまった形となり、金との価格差は423.9ドルへと急拡大。過去最大となった7月2日の428.3ドル、4月11日の425.7ドルに次いで過去3番目の水準に。金の反発基調がさらに進行すればプラチナも抵抗水準突破となって急反発局面形成への可能性も。そうなれば急落前の保ち合い水準830ドルが上値目標。
週間ベースでは+12.1ドル(1.56%)で3週間ぶりの反発。5月21日からの週(+14.8ドル、1.67%)以来3カ月ぶりの上昇率。
ドル円は前日から10銭程のドル安円高となって4日ぶりの小反落。前日からのドル高の流れで東京市場午前には111円40銭台まで上昇すると、パウエル議長講演へのタカ派期待からか、この水準を維持しての小康状態に。ジャクソンホールはやや期待感剥落という面もあり、ドル安の流れが強まって111円10銭台まで下落。トランプ米大統領が来週予定されていたポンペオ米国務長官の訪朝を急きょ中止すると発表したことなども下げ要因に。ただしこの日の変動値幅は0.37円程度と今年の年間平均0.72円の半分ほどの小動き。ドル高円安方向への流れは一服となったもののまだ継続中と思われ、次週PCEインフレ上昇などがあればドル高再燃の可能性も。111円台を維持できれば短期トレンド継続で当面の上値目標は112円台後半まで。
週間ベースでは+0.76円(0.69%)で3週間ぶりの反発。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/24終値とチャート
- 2018年8月25日(土)時点の相場
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国内金 : 4,541 円 8/24(金) ▼12(0.26%) 国内プラチナ : 2,979 円 8/24(金) ▼47(1.55%) NY金 : 1,213.3 ドル 8/24(金) ▲19.3(1.62%) NYプラチナ : 789.4 ドル 8/24(金) ▲11.0(1.41%) ドル円 : 111.27 円 8/24(金) ▼0.10(0.09%)
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