金プラチナ短期相場観
米輸入物価指数が示す長期インフレ停滞と短期減速局面入り
更新日:2019年3月15日(金)
米労働省が発表した2月の輸入物価指数は、前月比では+0.6%となって市場予想を上回り、昨年5月(+0.9%)以来9カ月ぶりの大幅な伸び率となりました。
しかし、前年比では-1.3%となり、3カ月連続の前年割れ。1月には前年比-1.6%と2016年8月(-2.2)以来、2年5カ月ぶり低水準となっていました。
長期的な推移を見ると、輸入物価指数自体が上値を切り下げて振幅幅も縮小傾向。最近では2016年以降の上昇傾向も昨年10月の128.3ポイントで頭打ちとなり、12月には124.4まで急低下。1年2カ月ぶりの低水準となっていました。今年に入ってからはわずかに反発した状態にとどまります。
これに合わせて前年比伸び率も長期的には振幅幅を縮小し、金融危機以降はインフレ加速も減速もそれほど極端には進まない状態となってきています。
輸入物価指数の伸び率はリーマンショック直前には過去最高となる前年比+20%超まで加速しましたが、その次のピークは2011年7月の前年比+13.74%。
2012年3月以降は前年比+5%を超えることはなく、2018年7月の前年比+4.83%が近年最高、6年5カ月ぶりの高水準。
足下での前年比マイナスの状態が今後も続くとは限りませんが、インフレ加速傾向となった場合でも前年比+5%ラインが長期的な抵抗水準にもなりそうです。
世界の主要国が低インフレ状態となるなかでは、米国の輸入物価も低インフレがもうしばらく続きそうな状況でもあります。
上流の輸入物価指数でのインフレ減速が続けば、中流の生産者物価指数(PPI)も減速状態となりやすく、下流の消費者物価指数(CPI)も低インフレの影響を受けやすくなり、FRBのインフレ判断指標となる個人消費支出物価指数(PCE)も低インフレ状態が続くことになります。
14日のNY金相場は3日ぶりの反落で-14.2ドル、1.08%の大幅安。右肩下がりの20日移動平均線(1311.1)が抵抗線となって急反落。英国では前日の「合意なき離脱を回避する案」可決に続いて離脱期限の延期についての可決も見込まれて市場の警戒感も後退、ポンド買いも一服し、ドル買いと米長期金利上昇の流れに転じたことで時間外から軟調な流れとなったNY金は欧州時間に1300ドル割れ。NY朝には一時1290ドル台前半まで下げて1290ドル半ばに収束。目先は1290ドルから1310ドルまでが短期主要レンジとなり、20日移動平均線を上限に下方シフトしやすい状況にも。下限割れの場合には8月安値から2月高値までの38.2%戻し(1280)が次のサポートにもなりつつ50%戻し(1258.5)付近、1260ドル前後までが下値目安となる可能性も。FOMCに向けて1310ドル超へと反発の流れとなった場合には1340ドル台へ、今年高値再トライへも。
NYプラチナ相場は-14.6ドル、1.73%の大幅安で3日ぶりの反落。金に連れて軟調推移の展開となり、欧州時間にはゆるやかに上昇する20日移動平均線(835.2)にサポートされて下げ渋る状態も、NY朝にはこれを下抜けたことで830ドル割れへと一段安。目先は810ドル台から840ドル台までが主要レンジとなり、下限を割り込むようだと2月安値780ドル近辺までが下値目安に、逆に上限突破できれば今年高値更新トライで880ドル台が上値目標にも。
ドル円は40銭弱のドル高円安で反発、1週間ぶりの高値水準に。日銀金融政策会合でのフォワード・ガイダンス変更への思惑などもあり、東京時間から円安の流れとなって111円60銭台まで上昇。欧州時間は保ち合い推移の展開で111円70銭台まで上昇も米1月新築住宅販売件数が予想を下回る60.7万件と3カ月ぶり低水準ににとどまり、111円50銭近辺まで下押し。NY時間には米10年債利回りが一時2.64%まで上昇したことにも連れて111円80銭台まで反発。今朝の東京市場でも日銀発表前時点では111円80銭台の高値圏推移。112円の節目を超えることになれば、今年高値更新で昨年12月前半までの保ち合い水準113円手前辺りまでが上値目標にも。円高方向には20日移動平均線(111.17)が当面のサポートとなり、これを割り込むようだと110円割れも。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場3/14終値とチャート
15日の国内金価格は-29円、0.58%安で3日ぶりの反落。21日移動平均線(5007)に上値を押さえられる形にもなり、上値目標5020円台を目指した流れは5012円までにとどまっての折返し。5010円台と4940円台が上下の節目となり、FOMC前後に向けて上下どちらかへブレイク、トレンド形成への可能性も。上方向へと抜け出せば5060円近辺までが上値目標に、下方向に抜け出した場合には下落トレンドの勢いが増す可能性もあり、4870円辺りまでが次の下値目安にも。
週間ベースでは+36円(0.73%)で3週ぶりの反発。
プラチナ価格は-55円、1.71%の大幅安となって4日ぶりの反落。9日移動平均線(3178)から90日移動平均線(3153)までが集中するレンジ上抜けに失敗した形にもなり、水平状態の90日移動平均線をはさんで上下動を繰り返すトレンドレス状態も継続。目先はこの90日線を維持できるかどうかもポイントに。下方向には3110円台を割れると3050円近辺までが次の下値目安にも。上方向には3220円台を超えることができれば3300円の大台回復トライへも。
週間ベースでは+40円(1.28%)の反発。
※参考:金プラチナ国内価格3/15とチャート
- 2019年3月15日(金)時点の相場
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国内金 : 4,983 円 3/15(金) ▼29(0.58%) 国内プラチナ : 3,170 円 3/15(金) ▼55(1.71%) NY金 : 1,295.1 ドル 3/14(木) ▼14.2(1.08%) NYプラチナ : 827.1 ドル 3/14(木) ▼14.6(1.73%) ドル円 : 111.66 円 3/14(木) ▲0.36(0.32%)
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