金プラチナ短期相場観
雇用統計NFP年次改定、1年間で51.4万人の大幅下方修正
更新日:2020年2月8日(土)
米1月の雇用統計では、雇用者数の伸びは市場予想を大幅に上回り、失業率は上昇も50年ぶり低水準となっていた3.5%から3.6%へとわずかに0.1%上昇しただけであり、労働参加率が12月の63.2%から63.4%へ、6年7ヵ月ぶり高水準へと上昇したことによる影響も。なお、U6失業率も過去最低となった12月の6.7%からは6.9%へと上昇。
長期失業者の割合は19.9%となって半年ぶりの低水準。
平均時給は過去データが全面改訂され、賃金上昇率としては2018年8月以降、18ヵ月連続の前年比+3.0%以上。ピークは2019年2月の+3.51%、8月までは+3.3%から3.4%近辺での推移も秋以降に鈍化。12月は前年比+3.01%で1年5カ月ぶり低水準、1月は+3.12%と小幅に上昇。好調期の節目3%以上をギリギリ維持しながらも、既にピークアウトした流れは継続。
総じて好結果、となりましたが市場反応はスルー。これまで米株市場が軽視してきた新型コロナウイルスへの警戒感も、ここに来て経済への悪影響も意識され始め、FRBも改めてこれを指摘したことなどもあり、リスク回避方向への流れが強まり、雇用統計の好結果を打ち消す格好にもなったようです。
なお、非農業部門雇用者数(NFP)も年次改定により、過去データ全般に修正が入っています。
そのなかでも、2018年4月から2019年3月までの1年間に限ると、NFPの伸びは51.4万人もの大幅下方修正となっています。
昨年前半までの雇用情勢の落ち込みは、想定以上に大きかったようです。米中対立リスクによる悪影響も大きかったということも言えそうです。
対照的に2019年4月以降は、1.2万人下方修正された8月を除く全ての月が上方修正。米労働市場が2019年後半に急回復した状況を象徴しています。
しかし、新たなリスク要因によって、この回復基調が今後も続くかどうかには疑問符もつきます。
米株市場に先行して市場センチメントが悪化していた為替市場では、既にリスク回避のドル高円高が進行し、新興国通貨や欧州通貨、オセアニア通貨などの売りが続く状態。アルゼンチン・ペソやブラジル・レアルは対ドルで過去最安値を更新し、比較的堅調だったカナダドルやロシア・ルーブルも2カ月ぶり安値、南アフリカ・ランドは3カ月ぶり安値、トルコ・リラは8カ月ぶり安値。年初からドル買いが続き、ドルインデックスは4カ月ぶりの高値水準に。
これに対して楽観的な見方が優勢となり、FRBをはじめとする世界の主要中銀による緩和政策を好感し、ハイテク株の好調などを原動力に欧米主要株式指数は高値更新が続いていたものの、ここに来てようやく調整が入った様子も。この日、FRBが半期に一度の金融政策報告書で「中国でのコロナウイルスの影響が新たなリスク」と指摘したことも株式市場への危機感にも。
7日のNY金相場は+3.4ドル、0.22%高で小幅に3日続伸。1570ドル付近での揉み合い推移が続き、NY朝には雇用統計の好結果を受けて売りで反応。1560ドル台前半へと小幅に急落も、株高の反応も続かず、むしろ米10年債利回りが再び1.6%割れへと急低下となった流れに牽引されてリスク選好の巻き戻し。切り返したNY金は1570ドル台後半へと急反発、しかしこれも続かず、行って来いの展開となって方向感は定まらず。ただ、NY午後にかけては米株の軟調推移にサポートされるように小幅に上昇。1550ドルから1590ドルまでの広めのレンジ中央付近に位置し、20日移動平均線(1565.5)にもサポートされて調整局面から徐々に短期サイクル転換の動きにも。今後、広めのレンジを上抜けて行く展開となれば、高値更新で1620ドル付近までを目指す流れにも。下限割れへと水準を切り下げることになれば年末の水準1520ドル近辺まで調整幅拡大も。
週間ベースでは-14.5ドル、0.91%安となって7週ぶりの反落。
NYプラチナは+1.8ドル、0.19%の小反発。時間外には960ドル台半ばから970ドル近辺へと小幅に水準を切り上げて反発の兆し、雇用統計後には980ドル手前まで上昇も、これを突破できずに失速すると970ドル割れへ。保ち合いレンジ下限960ドルでの底堅さは確認するも上値も重く、上限の990ドルには全く及ばず。三尊天井形成への警戒感も漂い始め、960ドルのサポート維持が目先のポイントに。維持できなくなるようだと12月半ばの保ち合い水準930ドルまでが下値目安に。
週間ベースでは+7.3ドル、0.76%高で3週ぶりの反発。
ドル円は25銭程度のドル安円高となって5日ぶりの反落。110円ラインが抵抗線となって上値を押さえられるパターンが2日続いて失速。109円90銭台を中心に小幅揉み合いが続いた状態から、雇用統計前には109円70銭近辺まで下押しの場面も。好結果となった雇用統計には20銭程度の急騰で反応も、やはり110円ちょうどの水準でしっかりと上値を押さえられると、米株の急騰・急反落に連れる形で水準を切り下げ、109円50銭台まで下落。20日移動平均線(109.55)に下値をサポートされる形にはなったものの、切り返しての上値も109円80銭台までと限定的に。今年高値110円20銭台を上値目標に水準を切り上げてきた流れは110円ちょうどでブロックされていったんストップ。次週、改めて110円台トライに成功することができれば今年高値更新へ、110円半ばまでが上値目標にも。
週間ベースでは+1.36円、1.25%高で3週ぶりの反発。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場2/7終値とチャート
- 2020年2月8日(土)時点の相場
-
国内金 : 6,035 円 2/7(金) ▲40(0.67%) 国内プラチナ : 3,716 円 2/7(金) ▼76(2.00%) NY金 : 1,573.4 ドル 2/7(金) ▲3.4(0.22%) NYプラチナ : 969.2 ドル 2/7(金) ▲1.8(0.19%) ドル円 : 109.75 円 2/7(金) ▼0.24(0.22%)
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