更新日:2017年5月5日(金)
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が今週発表したレポート「Gold Demand Trends Q1 2017」によると、2017年第1四半期の世界の金需要は1034.5トン。前四半期からは33.7トン(3.4%)増加し、2016年第2四半期(1053.3トン)以来3四半期ぶりの水準。前年同期比では-227.3トン(-18%)の大幅減。
内訳としては、宝飾需要が480.9トンとなって前期比-144.8トン(-23.1%)の大幅減、前年比では+6.4トン(+1.4%)の小幅増。割合としては需要全体の46.5%。
投資需要は398.9トンで前期比+216.8トン(+119%)の大幅増、前年比では-208トン(-34.3%)の大幅減。シェア38.6%。宝飾品と投資目的の需要が全体の85%を占めます。
産業用は78.5トンで前期比-6トン(-7.1%)、前年比+2.1トン(+2.8%)、ここ数年は80トン前後での安定推移。中央銀行などの公的機関は76.3トンとなり、前期比-32.2トン(-29.7%)、前年比-27.8トン(-26.7%)。中国の増加が昨年末からストップしていること、ベネズエラの昨年前半の大量売却などが影響した模様。
投資需要としては、コインやバーなどの現物投資が289.8トンで前期比-85.1トン(-22.7%)、前年比+24.9トン(+9.4%)。ETF関連は109.1トンの買い越しとなり、前期の-192.8トンの大幅売り越しからは買い転換、ただし前年同期の+342.1トンの3分の1以下。
金価格が年末に底をつけて反転したことにより、逆張りの現物投資需要は鈍化し、順張りのETFは買い転換。1年前と同じような形にはなったものの、今年第1四半期の金価格水準は、平均では1220ドル近辺で前期からほぼ変わらなかったこともあり、ETFの買い越し量は異常とも言える水準となった1年前ほどは伸びなかったようです。
なお、金ETFの内訳ではドイツが50トン超、英国が40トン弱、米国は10トン強となり、欧州での上場ETFがそのほとんどを占めています。欧州政局リスクへの懸念も影響したのかもしれません。
金消費需要(宝飾+現物投資)としては、770.7トンで前期比-230トン(-23%)、前年比+31.4トン(+4.2%)、総需要の74.5%を占めます。
このうち、宝飾需要でインドと中国の2カ国が占める割合は55.9%、過去7年間ほぼ50%台から60%程度のシェアが続きます。現物投資でのこの2カ国合計シェアはほぼ40%前後で推移しています。
中国の投資需要は2四半期連続で2013年以来となる100トン超の高水準を維持し、宝飾需要も2四半期連続の150トン超と堅調推移が続きます。婚礼シーズンの影響が大きいインドでは比較的年後半の需要が増加しやすい傾向にあるものの、昨年末の高額紙幣廃止の影響から金購入への意欲は高まり、やや低調気味の近年でも宝飾需要・現物需要ともに前年比15%前後の増加となっています。
金消費需要で中国(282.4トン)、インド(123.5トン)に続くのは、米国(39.1)、ドイツ(36.0)、タイ(23.3)、UAE(17.2)、トルコ(16.7)、ベトナム(16.7)、イラン(16.6)、インドネシア(14.2)。
2016年第4四半期のベスト10からは英国(15.0→6.9)に代わってUAE(10.2→17.2)がランクイン、米国とドイツを除く8カ国が中東を含むアジア。金消費意欲旺盛なアジア勢の躍進は続きます。
4日のNY金相場は1.59%の大幅続落。前日引け後のFOMCを受けての1240ドル割れから、今朝の時間外までさらに10ドルほど水準を切り下げた状態。欧州では仏大統領選決選投票前のテレビ討論会でマクロン氏の支持率がルペン氏を大きく上回り、NYではオバマケア代替法案が下院で可決、上院可決に向けてはまだ困難もとの見方もあるものの、少なくとも「トランプケア法案」として重要公約も動き始めたことになり、欧米政局リスクは大きく後退した形。欧州通貨が買われてドルインデックスは下落したものの債券は売られて利回りは上昇、米10年債利回りは約1カ月ぶりに2.35%台を回復。この流れでは金も下げ止まれずに3月16日(1227.1)以来の安値水準に。週末から週明けにかけてもポジティブな結果となりそうなイベントが続き、金の上値は重そう。90日移動平均線を割れると、引き続き12月安値から4月高値までの50%戻し(1210.9)近辺が次の下値サポート候補に。
NYプラチナ相場は0.36%高となって5日ぶりの反発。前日引け後の時間外から900ドルの大台割れを何度も試し、NY朝には昨年12月28日(891.6)以来の安値水準となる894ドルまで下落。これがこの日の安値となってようやく急落局面一服で900ドル台へと反発。しかし、先導役の金の上値が重いタイミングではプラチナの反発も限定的に。終値では900ドル割れを回避し、安値でも昨年12月安値888.7ドルを下回らなかったことにより、チャート形状的には2番底をつけての反発へ、というシナリオも想定可能に。しかし、まだ下げ止まり感には乏しい状況。888.7ドルを割れないこと、金との価格差が345.5ドル以上に拡大せず、縮小方向へと向えるか、が目先の課題。
ドル円は0.25%のドル安円高となって6日ぶりの反落。欧州市場では仏大統領選を楽観視する向きからドイツDAXが連日の過去最高値更新、ユーロドルは半年ぶり、ユーロ円は11カ月ぶりの高値水準へと上昇するリスク・オン状態。ドル円もユーロ円に連れる形で上昇し、113円台を何度かトライ、しかし3月17日(113.49)以来、1カ月半ぶりのドル高円安水準となる113円05銭近辺までで上値を押さえられて失速。NY市場では112円30銭台までの大幅調整の展開に。90日移動平均線(112.78)にいったん上値を押さえられた形にはなったものの、良好な結果も予想される雇用統計をきっかけに再度113円トライへと向う可能性も想定され、次週にかけては114円台の上値目標トライも。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場5/4終値とチャート
2017年5月5日(金)時点の相場
国内金:4,839 円 5/2(火) ▼24(0.49%)
国内プラチナ:3,610 円 5/2(火) ▼39(1.07%)
NY金:1,228.6 ドル 5/4(木) ▼19.9(1.59%)
NYプラチナ:907.7 ドル 5/4(木) ▲3.3(0.36%)
ドル円:112.46 円 5/4(木) ▼0.28(0.25%)
Copyright(C) Let's GOLD