更新日:2018年6月14日(木)
市場が100%近く織り込んでいたとおり、米FF金利は1.75-2.00%へと引き上げられ、利上げ見通しが立たないニュージーランドの1.75%を上回り、米ドルは主要先進国のなかでは最高金利通貨となりました。
そして、注目された年内の利上げ見通しはあと2回、年内合計では3回から4回へと加速。ドットチャートでの変化は前回3月時点での1.625%の2ドットがそのまま1.875%へと上方シフト(この最ハト派2名は今回の利上げで今年は打ち止め予想)され、前回2.125%の6ドットのうちの1ドットが2.375%へと移動。この1名だけが年内3回から4回へと予想を引き上げたことになります。なお、最タカ派1名の2.625%は前回から変わらず年内あと3回、年合計5回の利上げをブレずに予想しています。
なお、今年の年末予想中央値が上方シフトされたことで来年以降も中央値は上昇していますが、来年の利上げ回数は3回で変わらず、2020年の1回、長期見通しの中立水準の中央値2.875%も前回から変わりません。
2020年にFF金利は3.50%まで引き上げられて引き締めフェーズは終了、長期的に見た中立水準は3.00%程度に落ち着くだろう、との見方でいずれ訪れる(かもしれない)景気後退局面での利下げフェーズに備えることになります。
また、声明文から「金利は当面長期的水準を下回る」との文言が削除されたことで、意外と早期に長期中立水準(3.00%近辺)に到達することにも警戒すべきフェーズに入ってきていることも意識すべきかもしれません。
「緩やかなペースで拡大」していた経済活動は「堅調なペースで拡大」していると、と声明文が変更されたとおり、今回は経済見通しも引き上げられ、今年のGDP見通しは3会合連続で引き上げられ、前回の2.7%から今回は2.8%へと上昇しています。
これを支える労働市場も引き続き強化され、雇用の伸びも強く、失業率の低下も続きます。5月雇用統計で既に3.8%まで低下している失業率は2018年末見通しでは前回の3.8%から3.6%へと引き下げられ、5会合連続での見通し引き下げとなっています。
来年には3.5%までの低下が予想されていますが、FOMC予想を上回るペースでの低下が続く失業率がどこまで行くのか、そして長期見通し4.5%との乖離がどこまで拡大するのかも今後注目されます。
4月時点でPCEが2.0%、コアPCEも1.8%まで上昇しているインフレ見通しでは、2018年末予想はPCEが2.1%へと引き上げられ、コアPCEも2.0%到達が予想され、いずれも来年には2.1%までの上昇予想となっています。
パウエル議長は会見で「最近のインフレ指標は心強い」としながらも「勝利宣言には時期尚早」であり、「(中立水準付近を)維持することが重要」としています。
また、「賃金は緩やかに上昇」しており、今後も「賃金の伸びの拡大を予想」しており、現状の賃金の伸び悩みは「低い生産性が要因」であると見ているものの 「やや困惑している」とも。
今後、「困惑」状態が解除されるようなら、インフレを一段と押し上げることにもなりそうで、利上げペースの急加速も警戒されます。
まだ「指標に現れていない」とする「貿易摩擦の影響」や、ECBや日銀の政策変更動向による影響なども考慮すると、今後は臨機応変な対応も必要になることも想定してか、パウエル議長は来年から全てのFOMC後に会見を行うことを表明しています。
13日のNY金相場は1.9ドルの反発。FOMC前の様子見状態で小動き、時間外はややドル高の流れとなって1290ドル台半ばまで軟調に推移後、NY市場では1300ドル台へと小反発。NY引け後のFOMCでは利上げペース加速を受けて金利急騰とドル高の流れに再び1290ドル台半ば付近まで小幅に急落。しかし、年内4回の利上げ見通しもある程度は織り込まれていたこともあり、来年以降の利上げペースも変わらずで、それほどタカ派的とも受け止められず。また、トランプ政権が15日にも対中国関税発動へと準備を勧めていることが伝えられたこともあって急速にドル高の巻き戻しが進行、金も1300ドル台へと急反発。ただし上値も1305ドルが超えられず。1300ドルをはさんでの小幅保ち合いのまま次のイベント、ECB理事会待ちへ。ドイツを始めユーロ圏の景況感悪化がハト派要因となりやすい状況で、ドラギ総裁会見で金融政策正常化に向けての示唆があればユーロ高ドル安に傾斜しやすくなって金のサポートにも。そうなれば米国の利上げで金価格上昇のパターンが今回も繰り返されることになるが。
NYプラチナ相場も1.0ドルの小反発。時間外には1週間ぶり安値となる890ドル台前半へと水準を切り下げて反発。NY市場では900ドル台を回復し、FOMC後には小幅乱高下で900ドル台前半の水準を維持。下ヒゲでは900ドルを何度も割り込みながらも終値では割り込まない底堅さも維持。南アランドの軟調推移が続き、ユーロの売り材料とドル売り材料も点在し、マイナス材料のせめぎ合いという状態に。
ドル円は20銭ほどの反落で110円10銭台へ。FOMC直後には110円40銭近辺から、5月23日以来3週間ぶりのドル高円安水準となる110円80銭台まで急騰して失速。米中貿易摩擦懸念などもあって急反落すると元の水準を下回り、今朝の東京市場でも110円20銭近辺での推移。想定以上にドル高円安の勢いは強まらず、上値トライへの流れは巻き戻し。200日移動平均線(110.19)にはサポートされる状態にあり、ECB理事会を経て再度110円台半ばを上抜けることができれば5月高値111円台半ばまでを試す可能性も。200日線を割れるようなら109円台半ばが次の、重要なサポート水準。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場6/13終値とチャート
14日の国内金価格はわずか2円の小反発。ドル高円安の流れがトランプリスクによって巻き戻された形となり、NY金は下げ渋り。ECB理事会の動向次第ではユーロ高の流れがドルを押し下げてNY金をサポートする可能性も。スローペースながらも反発の流れが続き、9日移動平均線(4909)は21日移動平均線(4908)をゴールデンクロスして上昇トレンド本格化の兆しも。いずれ5000円の大台再トライへ。
プラチナ価格は13円安となって続落。保ち合い上抜けの兆しはダマシに終わり、3400円から3440円台までのレンジで保ち合い延長戦。下値は徐々に切り上がる状態を維持し、もつれ合う9-21日移動平均線とNYプラチナの下げ渋りがサポートに。
※参考:金プラチナ国内価格6/14とチャート
2018年6月14日(木)時点の相場
国内金:4,927 円 6/14(木) ▲2(0.04%)
国内プラチナ:3,420 円 6/14(木) ▼13(0.38%)
NY金:1,301.3 ドル 6/13(水) ▲1.9(0.15%)
NYプラチナ:902.5 ドル 6/13(水) ▲1.0(0.11%)
ドル円:110.17 円 6/13(水) ▼0.24(0.22%)
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