期待感を煽るドラギ手法、サプライズの黒田手法、イエレン手法は?
更新日:2015年10月23日(金)
ECB理事会では政策維持が決定され、理事会後のドラギ総裁会見では12月に緩和政策見直しが示唆されました。
商品価格の下落や新興国経済への懸念に伴い、インフレの下方圧力が強まっていることを認め、成長見通しの下方リスクに懸念を示し、ユーロ高がインフレリスクになっていることにも言及しました。
その上で今回の会合では中銀預金金利の引き下げについて協議したことや、今回の会合での追加緩和実施を主張したメンバーがいたことも明らかにし、次回の12月会合で緩和政策見直し方針であることを明言しました。
ECBの追加緩和示唆はある程度予想されていたにもかかわらず、ユーロ全面安の流れが急加速、ユーロドルは前日比2.03%下落しました。対ドルで前日比2%超のユーロ安となるのは今年1月22日に量的緩和を決定した時(2.11%のユーロ安)以来のこと。追加緩和を好感する形でドイツDAX指数も急騰し2.48%高へ、米株も日本株も一段高となり、新興国通貨なども買い戻し優勢に。
行動を起こさずにマーケットを誘導する(最終目標は景気回復、物価安定)ことを指してドラギマジックと呼ばれることも多々あり、時には口先ドラギなどと揶揄されることもありますが、本当のドラギマジックは、マーケットの期待感を煽る手法に長けているところではないでしょうか。
事前のECB理事会メンバーの発言では追加緩和に賛否両論、オーストリア中銀ノボトニー総裁の肯定発言やスペイン中銀リンデ総裁の資産買い入れプログラム拡大、修正への可能性示唆発言に対し、フランス中銀ノワイエ総裁の一段の調整必要なし発言など、反対意見もありながら、市場の期待と失望を織り交ぜながらも徐々に期待感を高める方向へと誘導。
期待感が高まったところでこれを裏切らず、マイナス金利をさらに引き下げる議論があったことや本日にも実行すべきとの意見があったことなど具体的な内容でさらにインパクトを強めるような発言内容に。
まさか就任直後の会合では何もしないだろうというタイミングで量的・質的緩和を決定し、事前の否定的な発言で何もしないフリをして追加緩和を決めた黒田日銀総裁のサプライズ手法とは、対象的な手法と言えそうです。
なお、未だ行動を起こさない(起こせない)イエレンFRB議長の手法は、ベールに包まれたままか・・・未確立か。
期待値が上昇してしまった日銀、ユーロ安進行に伴うドル高に足を引っ張られるFRB、ともにECBに先手を取られたことで動きにくくなってきた様子も。
ドル円は6日続伸で8月末以来のドル高円安水準となる120円台後半へ。ドラギECB総裁会見を経てユーロ安が急進したことに伴うドル高の影響でドル円も急上昇。
新規失業保険申請件数の好結果などもサポート材料となりドル高は加速。120円台半ばの節目付近でいったん上値を抑えられる様子も見られたものの、好決算が続いた米株市場の堅調推移にも連れるように保ち合い上放れへ。しかし、日米の会合を前にレンジブレイクし始めた形となり、ドル高円安方向への流れがこのまま続くとは想定し難いところ。今朝も一目均衡表の雲を上抜けた後は120円94銭の200日移動平均線にぶつかって押し戻された状態に。
FRBの利上げに向けた肯定的な声明文、日銀の追加緩和示唆のどちらかが伴うことになれば123円台前半を目指す流れへ。いずれもゼロ回答ならレンジ回帰へ。FRBと日銀の両方が揃えば今回のECBと合わせてスリーカードでドル高円安の流れは加速。さらに5中全会で中国の景気対策が発表されるようならフォーカード成立となって123円台到達確率は更に高まり、年初来高値トライへと向かう可能性も。
22日のNY金相場は0.09%の小幅続落。上下に10ドルほどの小動きに終始。ECBの追加緩和示唆には好感もドル高進行に身動き取れず、という状態でやや蚊帳の外状態。それでもサポートライン候補の1160ドル台を維持する底堅さも。やや方向感に欠ける状態が少しの間続きそうな状況に。
NYプラチナ相場は0.58%の反発。1000ドルの大台ラインを割り込みそうで割り込まない底堅さも見られる状況に。それでも目先は990ドル程度までの下値リスクを抱え、上方向には1020ドル台で頭を押さえられやすい状況。突破すると1050ドル付近を目指す流れへ。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場10/22終値とチャート
23日の国内金価格は0.5%の反発。4810円から4850円のレンジで揉み合い継続。どちらにもブレイクする可能性があり、どちらに抜けてもそれなりの値動きとなる可能性、上方向への目安は4920円、下方向への目安は4750円近辺。比較的底堅いNY金とドル高円安方向へ半歩抜けだした現状の為替動向からすると、久々の円安サポートを受けての堅調推移方向へ動き出す可能性のほうがやや高めか。
週間ベースでは-3円(0.06%)、3週間ぶりの小反落。
国内プラチナ価格は1.47%の大幅反発。前日の大幅安分の殆どを取り戻し、再び堅調推移への流れに向けて準備し始めた様子も。次週半ばまでは4140円をサポート水準に4220円までの間で揉み合い継続濃厚か。上限突破なら目標水準は4260円台へ、下限割れなら4080円近辺まで調整余地拡大。
週間ベースでは+69円(1.67%)となり、3月後半以来7カ月ぶりの3週続伸。
※参考:
金プラチナ国内価格10/23とチャート
2015年10月23日(金)時点の相場
国内金:4,837 円 10/23(金)
▲24(
0.50%)
国内プラチナ:4,202 円 10/23(金)
▲61(
1.47%)
NY金:1,166.1 ドル 10/22(木)
▼1.0(
0.09%)
NYプラチナ:1,012.9 ドル 10/22(木)
▲5.8(
0.58%)
ドル円:120.69 円 10/22(木)
▲0.78(
0.65%)
10/22(木)のその他主要マーケット指標
ECBの次は中国人民銀行で金相場にも押し上げ効果、も一時的 10/24(土)南アフリカGDP見通し大幅下方修正で南アランドとプラチナ急落 10/22(木)米景気減速懸念が徐々に高まるなかで好調を維持する住宅市場 10/21(水)次の為に実行したいFRBと次の為に実行したくない日銀 10/20(火)
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