英ハードブレグジット懸念後退、米国発ドル高牽制スタート
更新日:2017年01月18日(水)
17日のメイ英首相演説では、基本的にはEU単一市場アクセスよりも移民コントロールを優先するというハードブレグジット路線を明確にした形。ただし、事前に基本方針が伝えれれていたこともあり、あらためてさらなるリスクが高まることはなく、むしろ演説終了とともにハードブレグジットを織り込んでのリスク回避の巻き戻しが進行したようです。
ただし、ドル安の流れはメイ首相演説後も変わらず。ハードブレグジットへの警戒感は後退したものの、いよいよ始まった米国発のドル高牽制への警戒感がくすぶり始めた様子です。
トランプ次期米大統領は、就任直後にも中国の「為替操作国」認定をするのではないか、との見方を否定し、まずは中国側と協議することを表明。ただし、米国の輸出に不利なドル高進行に対して強い不満を示したようです。対人民元でのドル高を指しての不満とは言え、明日は我が身と警戒する日本円にとっても対ドルでの行き過ぎた円安への警戒感も高まり始めます。
また、トランプ次期政権で上級顧問就任予定のアンソニー・スカラムッチ氏もドル高進行リスクについて警告しています。
さらに、カーライル・グループのデービッド・ルーベンシュタイン氏は、ドル高が一段と進行すると、ドル建ての借り入れが多い新興国への圧力が高まり、「メキシコ型」の危機が起きることを懸念、ドル上昇が今年の経済見通しにおける「最大の課題」になるとの見方を示しました。
FRB高官からも同様にドル高警戒発言が聞かれ始めます。
NY連銀ダドリー総裁は「最近のドル高は物価に下向き圧力」と牽制し、ブレイナードFRB理事も「財政拡大はドル高圧力になる可能性」と警戒感を示しています。
この日発表された米1月NY連銀製造業景況指数は、市場予想を下回る6.5となり、12月からも低下しましたが、8月から11月までで合計3.8ポイント上方修正され、6カ月平均でも1.1となり、2015年7月以来1年半ぶりの水準を回復しています。
さらに内訳では、仕入れ価格が3年ぶり、販売価格は4年9カ月ぶりの高水準となり、今後の見通しを示す期待指数は5年ぶり高水準となった12月から変わらず、雇用と設備投資の期待指数も2年弱ぶりの高水準となっています。
回復基調を維持し、物価と見通しが高水準となったNY連銀製造業景況指数にとっても、今後はドル高がマイナス材料となって失速へ、という展開も警戒されます。
そうならない為にも、ドル高牽制発言が今後もあちこちから聞かれ始めることにもなりそうです。
財政出動などで景気は刺激され、ドル高が行き過ぎればこれを牽制発言で緩和することにより、米製造業も程良いペースでの回復基調が続きそうです。
程良いドル高と、行き過ぎなら牽制、という形がバランス良く進行した場合、国内金価格の程良い押し上げ効果にもつながりそうです。
3連休明け、17日のNY金相場は1.4%の大幅反発。リスク回避ムードが強まった東京・ロンドン市場ではドル全面安の流れ。ドル・インデクスが1カ月ぶりの安値水準となる100ポイント台前半まで下落したことを受けてNY金は11月17日(1216.9)以来2カ月ぶりの高値水準へ。あらためてのハードブレグジット宣言となったメイ英首相の演説でアク抜け、1210ドル台での保ち合い状態へ。やや調整不足の感も否めないものの、水準的には昨年7月高値からの下落幅に対する38.2%戻し(1221.0)付近まで上昇したことで、ここを突破すると半値戻し(1250.9)も意識される。目先は1200ドルの大台がサポートラインとして作用し始めるかどうか。
NYプラチナ相場は0.33%の小幅反落。上値トライ局面では11月10日(1009.2)以来、2カ月ぶりの高値水準となる997ドルまで上昇。しかしメイ英首相演説までに大台到達できなかったことが、その後の反落幅拡大につながった様子。先週末から何度か1000ドルの大台トライを試して失敗した形となり、高値保ち合い状態から反落への警戒感も高まるところ。大台再トライへの可能性も残しながら、保ち合い下限970ドルを割れると反落の展開で下値余地は950ドル付近まで。
ドル円は1.38%の大幅ドル安円高。7日続落で11月29日(112.37)以来、1カ月半ぶりのドル安円高水準に。7日続落は昨年6月のEU離脱決定前の時期以来7カ月ぶり。ハードブレグジット懸念によるポンド大幅安に連れる形で円高進行となり、メイ首相演説後はいったん材料出尽くしでポンドは大幅買い戻し。しかしドル円の軟調推移は変わらず。ドル高牽制と週末の米大統領就任式への警戒感からドルの上値はまだ重そう。ただし、就任式ではプロンプターを使用しての演説が予定されることもあり、週明けにかけては買い戻し優勢となる可能性も。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場1/17終値とチャート
18日の国内金価格はわずかに3円の小幅続落。ドル安基調がとまらないことを背景にNY金が上値を伸ばし、国内金価格も高止まり。押し目らしい押し目を形成できないまま横ばい推移の状態となり、今週末の米大統領就任式が転機となって流れが変わる可能性も。ドル安の流れがいったん反転する可能性もあり、NY金の上昇に支えられて水準を切り上げてきた国内金価格は、今度はドル高円安への切り返しにサポートされるような展開もありうるか。目先は4670円前後までの調整も。
プラチナ価格は1.32%の大幅続落。NYプラチナの大台トライ失敗に伴う失速状態を円高が増幅した形で高値保ち合いからの急反落。年初からの急騰局面は終息した状態となり、目先は3780円程度まで若干の下げ余地も残す状況。多少行き過ぎた場合でも右肩上がりの21日移動平均線(3754)近辺までで下げ止まれば、昨年10月来の上昇トレンドは継続へ。
※参考:
金プラチナ国内価格1/18とチャート
2017年01月18日(水)時点の相場
国内金:4,715 円 1/18(水)
▼3(
0.06%)
国内プラチナ:3,801 円 1/18(水)
▼51(
1.32%)
NY金:1,212.9 ドル 1/17(火)
▲16.7(
1.40%)
NYプラチナ:983.1 ドル 1/17(火)
▼3.3(
0.33%)
ドル円:112.61 円 1/17(火)
▼1.57(
1.38%)
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