「強いユーロ圏経済」VS「強いドル」~金は調整へ
更新日:2018年01月26日(金)
ECB理事会後のドラギ総裁会見では、欧州経済は「予想以上に好調」であり、経済のモメンタムは「堅調で広範囲」に渡り、「賃金上昇」にも一定の兆しが見られ、価格上昇圧力は弱いものの「上昇トレンド」にある。だから「インフレ目標の達成」により自信、など「強いユーロ圏経済」をアピールしました。
これを受けてユーロ高の流れは一段と加速する展開となりました。
また、ムニューシン米財務長官の連日のドル安容認発言をチクリと批判し、ユーロ高への牽制も。
一方、スイスのダボスを訪れたトランプ米大統領は、「米ドルは強く」なっていく、「強いドル」を望むなどと発言。また、ムニューシン米財務相の発言は「前後の文脈を無視」してドル安と受け取られたなどとドル安容認を否定する形のフォロー発言も。さらには脱退したTPP再考の構えも匂わす発言も。
ダボスでは「強いドル」をアピールして米国への投資を呼び込もうという意図も見え隠れ。
これをきっかけにドル安の流れは急速に巻き戻される展開となりました。
口先介入合戦と首脳の思惑などが入り乱れて為替市場は乱高下となり、ここまで堅調に推移してきた金市場も振り回され、大幅調整の展開となっています。
しかし、トランプ大統領自身がリスク要因でもあり、いつまた「強いドル」を支えきれなくなる局面が訪れるかもわかりません。
「強いユーロ圏経済」にも死角がないわけではありません。
この日発表された1月のドイツIFO企業景況感指数は117.6となり、11月と並んで過去最高水準となり、「強いユーロ圏経済」を象徴する指標の一つとなっています。
この指数では、景気減速局面を迎える際には現況指数が上昇し、景況感指数は横ばい推移、期待指数が先行して下落するという特徴があります。
期待指数は2010年11月に111.1の最高値を記録した後、2011年10月の98.5まで低下局面が進行。
この間、現況指数は2011年6月の122.0まで上昇した後に下落局面を迎えていました。
そして、景況感指数は2011年3月まで114ポイント近辺での横ばい推移後に下落局面入り。
2014年には、期待指数が1月の108.2でピークアウト、10月の99.1まで下落しました。
現況指数は3月の115.7まで上昇した後に下降し始め、景況感指数は4月まで111ポイント前後で横ばい推移となった後に下落し始めました。
今回は期待指数が11月に過去2番めの高水準となる111.0を記録してピークアウトの兆しのようにも。
現況指数は11月の124.6から一段高で過去最高値を更新していますが、景況感指数は11月から過去最高値付近で横ばい推移中。
今後、期待指数が数カ月で反発できないようなら、現況指数も景況感指数も低下し始める可能性もありそうです。
「強いユーロ圏経済」もそれほど長くは続かない可能性にも警戒すべきかもしれません。
25日のNY金相場は0.49%高となって3日続伸。2016年8月4日(1367.4)以来、ほぼ1年半ぶりの高値水準に到達。ECB理事会後のドラギ総裁会見を受けてユーロが急騰したことでドル安の流れも一段と進行、これを受けて金は1360ドル台へと一段高もトランプ発言を受けて流れが逆転。ドル買い戻しでユーロ売り、金はNY引け後にかけて1340ドル半ばまで急反落。短期的には目安水準到達に伴う達成感、RSIも年初の90%台後半に対して70%台と逆行しており、調整幅は拡大しやすい状態となっていたことも大幅反落につながった模様。短期的な流れは転換点を迎えた可能性も高まる状況となり、2016年高値1370ドル台手前で失速した形に。この水準再トライに向けてはもう一段の調整を経て出直しの展開も必要か。目先の調整目安として23.6%戻しなら1335.4ドル、38.2%戻しなら1316.8ドル。
NYプラチナ相場は1.6%の大幅高で3日続伸。時間外から節目の1020ドルを超えての堅調推移となったことで、ユーロ高金高の流れが強まった場面ではプラチナも急騰。1033ドルまで上昇も短期上値目安1040ドル近辺にはわずかに届かず急反落、NY引け後の時間外では1010ドル台後半。金と同様、プラチナのRSIも年初の100%付近から現在の74.9%へと低下、価格上昇との逆行状態にあり、調整局面となりやすい状況。調整目安としては23.6%戻しの995.3ドルが直近安値圏とも重なるサポート水準。ここを割れると38.2%戻し971.8ドル近辺までが次の下値目安に。
ドル円はドル高円安方向に0.17%の反発。ドラギECB総裁会見を経てもドル安の流れは止まらず、9月11日(108.16)以来4カ月半ぶりとなる108円50銭までダラダラと下落。その後ダボスでのトランプ米大統領の「強いドル」発言を受けて109円70銭近辺へと急反発。行って来いの展開となって長い下ヒゲ陽線を形成し、ドル安円高トレンドも収束へと向う可能性も示唆。今朝の東京市場朝の段階では109円台半ばでやや上値も重い状態。ダラス会議でのトランプ発言や今晩の米GDPなどを波乱なく通過できれば徐々に持ち直しの展開も。11月以降の下げ幅の23.6%戻しとなる110円ラインを突破できれば地合い改善も。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場1/25終値とチャート
26日の国内金価格は0.35%の反落。早朝のNY金の大幅反落をドル円の急反発ではカバーし切れず、軟調推移の展開が一歩進行した状態に。年初9日の高値5127円をピークに上値は切り下がり続け、下値は11日の5057円からゆるやかに切り上がる三角保ち合いは2週間を超え、大幅変動を伴うブレイクの瞬間も近づく状況に。昨年末からのドル安金高地合いの流れに変化が訪れようとしている可能性も高まりつつあり、高ボラティリティのNY金の流れに連動しやすい国内金価格はどちらかといえば下方ブレイク優勢。5070円台を割れると5000円の大台割れ、4980円台辺りまでが短期下値目安水準に。予想に反して上方ブレイクで5110円突破なら次の上値目標は5200円の大台トライへ。
週間ベースでは+10円(0.2%)と小幅に続伸。
プラチナ価格は0.34%高となって4日ぶりの反発。前日デッドクロスした9日移動平均線を再度上抜けも限定的となり、もつれ合う状態。1カ月余り続いた上昇トレンドも足下では失速状態が続き、NYプラチナがもう一段の調整へと向かえばこれに追随する展開へ。目先の調整目安は23.6%戻しの3740円程度まで。3710円の節目を割り込んだ場合には3650円近辺までの一段安も。予想に反して高値再更新なら次の上値目標は3880円台辺りまで。
週間ベースではわずかにプラスを維持して+3円(0.08%)。2013年11月以来、4年2カ月ぶりとなる6週続伸。
※参考:
金プラチナ国内価格1/26とチャート
2018年01月26日(金)時点の相場
国内金:5,085 円 1/26(金)
▼18(
0.35%)
国内プラチナ:3,803 円 1/26(金)
▲13(
0.34%)
NY金:1,362.9 ドル 1/25(木)
▲6.6(
0.49%)
NYプラチナ:1,032.1 ドル 1/25(木)
▲16.3(
1.60%)
ドル円:109.41 円 1/25(木)
▲0.19(
0.17%)
1/25(木)のその他主要マーケット指標
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