2022年までのゼロ金利継続見通しと不透明感が金価格を下支え
更新日:2020年06月11日(木)
新型コロナウイルスに振り回され、3月のFOMCが複数回の臨時会合に取って代わり、経済状況も金利も激変。経済見通しが示されるFOMCとしては昨年12月以来、半年ぶり。未知のウイルスとの闘いは続き、ある程度落ち着きは取り戻し、経済活動の順次再開もスタートしてはいるものの、全米の1日当たりの新規感染者数は依然として2万人前後。ウイルスの感染動向や対応の先行き不透明感とともに、FRBの経済見通しと金融政策における先行き不透明感も払拭し切れません。
この先行き不透明感を反映する形で今回のFOMCでは、「経済が昨今の困難を乗り切り、<雇用最大化>と<物価安定>の目標を達成する軌道に乗ったと確信するまで、この目標誘導レンジ(実質ゼロ金利)を維持する」との見通しを声明文で示し、フォワード・ガイダンスとして2022年までのFF金利見通し中央値0.125%、実質ゼロ金利が
ドットチャートで示されました。
3月から再開した量的緩和においても、「今後数カ月にわたって(over coming months)、円滑な市場機能をサポートするために米国債および住宅ローン担保証券や商業用不動産ローン担保証券の保有を少なくとも現状ペース(at least at the current pace)で増やしていく」ことが示され、「適切に計画を調整」していくことも表明。
圧倒的ハト派スタンスとならざるを得なかった根拠として、GDP見通しが今年は-6.5%。2021年には反動で+5.0%、2022年も回復途上での+3.5%。長期見通しでは昨年12月までの4会合での+1.9%から+1.8%へと0.1ポイント引き下げ。
失業率の見通しでは、2020年末までに9.3%までの低下が見込まれるものの、2021年末でも6.5%までの回復にとどまり、2022年末でも5.5%。昨年12月会合時と同じ長期見通し4.1%まで回復するには、長い時間を要することが予想されています。
インフレも、足下の低インフレからの脱却には時間が必要、との見通しで今年の年末時点でPCEが前年比+0.8%(コアPCEは+1.0%)、2021年末で+1.6%(コアPCEは1.5%)、2022年末でも+1.7%(コアOCEも同じ)。インフレ目標2%への道のりは長い、との認識です。
失業率の低下とインフレ上昇に要する時間分、ゼロ金利を継続し、量的緩和も臨機応変に継続することが示された他、今回はまだ検討中のイールドカーブ・コントロールについても、いずれ導入を決める可能性があることも示唆されました。
なお、GDPについては今週、OECDが発表した米国の今年の見通しが-7.3%、世界銀行の見通しが-6.1%となっており、今回のFOMCでの-6.5%はこれらの中間をとった格好にもなっています。いずれも4月のIMF見通し-5.9%からは悪化しています。
また、OECDでは、第2波があった場合の米国の今年の成長率見通しは、-8.5%となっています。
第2波があった場合、FRBの見通しにおける不透明感がさらに増すことも予想され、今回の見通しが後ズレする可能性も・・・。
10日のNY金相場は-1.2ドル、0.07%の小幅安で3日ぶりの反落。時間外の1720ドル台でのもみ合い推移から、NY午前には株安の流れを受けて1730ドル台へと小幅に上昇。しかし米株の下げ止まりとナスダックの1万ポイント台での3日連続史上最高値更新に向けた動きに押される形で1720ドル付近まで反落して通常取引を終了。NY引け後のFOMCではゼロ金利の長期維持見通しを好感する形で株価とともに買われる展開。パウエルFRB議長の会見では「労働市場が5月に底を打ったかどうかは不明」であり、「景気悪化の規模と回復のペースは極めて不透明」であるとの認識などが示されて米株は売り転換、逆に金は一段高となって1730ドル台から1740ドル台後半まで上昇。時間外に節目の1730ドルを大きく超える展開となり、この水準を維持することになれば短期トレンドも好転へ向かい、上値再トライの流れへ。上値目標は終値ベースでの今年高値を上回る1770ドル台。
NYプラチナは-14.6ドル、1.7%の大幅続落。時間外に870ドルワンタッチ後には急反落の展開となって850ドル割れへ、NY朝には850ドルから860ドル台で売り買い交錯、NY引けにかけては金に連動する形で軟調推移となって一時840ドル割れ。FOMC後にも金に追随、860ドル台へと反発も時間外ではこれを維持できずに失速の兆しも。結果的に6日連続870ドル前後で上値を押さえられ、20日移動平均線(859.8)も抵抗線となってしまう可能性も。20日線をしっかり超えて870ドル付近の抵抗水準を突破できれば890ドル付近を目指す反発基調にも。
ドル円は2日連続60銭超のドル安円高、0.6%安で3日続落。5月15日(107.04)以来、1ヵ月ぶりの安値水準に。FOMCへの警戒感から東京時間には107円80銭台から20銭台まで軟調推移。欧州時間からNY午前までは107円20銭台を中心に揉み合いとなって下げ渋り、FOMC後には警戒されたイールドカーブ・コントロールに関する内容が声明文にはなかったことを好感したもようで、107円40銭台へと20銭ほどの急騰。しかしゼロ金利の長期間継続見通しを嫌気する形で107円ちょうど付近まで急反落。パウエル議長会見でも先行き不透明感が強調され、やや不安定な動きから今朝の東京時間には107円割れ。サポート水準となっていた107円台半ばを完全に割り込んだことにより、ドル安円高方向への流れがもう一段進行しやすい状況に。当面の下値目安は106円台前半から5月安値圏106円前後まで。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場6/10終値とチャート
11日の国内金価格は+29円、0.45%の続伸。FOMCは予想通りのハト派スタンスでNY金は堅調推移へと動き出した様子ながら、ドル安の流れも加速の兆しとなって相対的な円高によって相殺。一時期の金とドルの方向性が一致しやすい状態は終息し、従来の逆相関状態を取り戻しつつあることにより、国内金価格のボラティリティも低下傾向に。しかし、価格水準が高いことから変動値幅も相応。最高値6603円から5月27日の押し目6428円まで175円の広めの高値保ち合いレンジを形成し、61.8%戻し(6536)に相当する現状は落ち着きやすい水準にも。短期的には6580円と6470円が上下の節目となり、抜け出した方向へそれなりの変動幅となる可能性も。上方向なら6700円、下方向なら6330円台辺りまで。
プラチナ価格は-43円、1.35%の大幅続落で2週間ぶり安値。サイクル的に下方向へと流れが傾き始めた状態に逆らうことなく、若干優勢と見られた調整方向への動きに。ゆるやかに下値と上値を切り上げてきた流れは巻き戻される形で下方ブレイク、21日移動平均線(3140)や90日移動平均線(3145)にサポートされなければ一段安の展開で下値目安は3080円台辺りまで。
※参考:
金プラチナ国内価格6/11とチャート
2020年06月11日(木)時点の相場
国内金:6,536 円 6/11(木)
▲29(
0.45%)
国内プラチナ:3,151 円 6/11(木)
▼43(
1.35%)
NY金:1,720.7 ドル 6/10(水)
▼1.2(
0.07%)
NYプラチナ:846.0 ドル 6/10(水)
▼14.6(
1.70%)
ドル円:107.11 円 6/10(水)
▼0.65(
0.60%)
6/10(水)のその他主要マーケット指標
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