実質金利マイナス圏推移が続けばNY金は来年も高止まり?
更新日:2021年12月30日(木)
米10年債利回りは12月28日の1.48%台から、29日には1ヵ月ぶり高水準となる1.5%台へと急騰。これを受けてNY金は1800ドル台から一時1790ドル割れへと急反落。しかしNY引けにかけてはドル安の流れにもサポートされて1800ドル台を回復。
また、期待インフレ率(BEI:Break Even Inflation rate)が2.50%から2.53%へと上昇したことによって、実質金利が-1.02%から-0.98%へと上昇したことにもサポートされた格好にも。
名目金利から期待インフレ率を差し引いて算出される実質金利は、2013年から2019年までプラス圏推移が続き、2020年以降はマイナス圏推移が続きます。
米10年債利回りが2018年の3%台から低下基調が続き、2020年3月のコロナショックで0.5%台まで急低下。その後は経済回復にも連動する形で2021年春には1.6%台まで回復。
期待インフレ率(BEI)は2018年の2%近辺から、2020年3月には0.6%近辺まで急落。その後の回復局面では、2020年末に2%付近まで戻すと2021年春にはインフレ懸念に伴い2.4%へ、秋以降は2.5%から2.6%台へと高止まり状態。
この結果、実質金利は2020年3月のコロナショックでマイナス圏入り。その後の回復ペースでは米10年債利回りと期待インフレ率とで開きがあり、その差-1.0%前後での推移が続くこととなり、実質金利は-1.0%を挟んでの保ち合い推移が2021年末まで続いています。
過去、NY金が当時最高値をつけた後の高止まり状態となっていた2012年にも実質金利はマイナス圏での推移が続いていました。しかし、2013年のテーパータントラムによって実質金利がプラス圏へと急騰した流れに連れ、NY金は1700ドル近辺から1300ドル割れへと暴落しました。
2022年、インフレ懸念が急速に緩和されて期待インフレ率が2.0%まで急低下し、景気減速懸念なども払拭されて米10年債利回りが2.0%台を回復することになれば、実質金利のプラス圏回復となり、NY金は1500ドルも意識されるような急落局面を警戒する場面が訪れることにもなりそうです。
裏を返すと来年も実質金利のマイナス圏推移が続くようなら、NY金の高止まり状態も続くことにもなりそうです。
29日のNY金相場は-5.1ドル、0.28%の反落。1800ドル台の節目上抜けに伴う短期上値目標1830ドル近辺に対しては、前日NY市場で1821.6ドルまで上昇したところで力尽きた格好に。引けにかけて1810ドルを割り込んで以降、この日の時間外からは1810ドルが抵抗線となって上値を押さえられると、ロンドン時間から米10年債利回りが上昇基調、ドル高の流れも押される形で売り圧力が強まる展開に。1800ドルの大台ラインをスルーするとNY朝には一時1790ドル割れ。米10年債利回りが1.5%台を回復して1ヵ月ぶり高水準へと上昇基調が続いたのに対し、為替がユーロ高主導でドル安に転じたこともあり、1780ドル台のサポート水準も意識されてNY午後にかけては急反発。1800ドルの大台こそあっさり回復したものの、1800ドル台半ばでは上げ渋り。目先、下値は1780ドル台のサポートが引き続き有効に作用しそうな一方で、下ヒゲ十字線からの反発の勢いも1810ドルのレジスタンスにはしっかり押さえられる状態。上抜けできれば1830ドル前後までの上値再トライへ、下抜けの場合には1760ドルまでを目安に調整局面入りへ。
NYプラチナは-9.8ドル、1.00%の反落で前日の上げ幅をほぼ全戻し。前日NY引けのタイミングで割り込んだ980ドルが節目となってこの日の上限に。時間外から軟調な展開となって一時960ドル付近まで20ドル弱の急落も、ロンドン市場では970ドル台半ばまで反発。NY市場では揉み合いの展開となって一時960ドルの安値をつけながらも970ドルを挟んでの小幅保ち合いの様相へ。足下4日間は上下にヒゲを残しながら白黒反転のくじら幕相場となり、960ドル台から980ドルまでの小幅レンジでの保ち合いを形成。上方ブレイクできれば1000ドルの大台トライへ、1010ドルまでが短期上値目標に。下方ブレイクなら20日移動平均線(940.9)を目安に調整へ。
ドル円は17銭のドル高円安、0.15%の反発で11月25日(115.35)以来の高値。東京時間には株安の流れにも114円70銭台で下げ渋ると徐々に水準を切り上げる展開、欧州時間には115円ラインとの攻防状態に。115円00銭台では売り圧力も強く、115円05銭にも届かず押し戻される展開が繰り返されると、ロンドンフィックスにかけてユーロ買いドル売りが強まった流れにも連れて一時114円60銭台まで急反落。しかし、NY午後には114円90銭台へと急反発、115円トライも再開へ。114円10銭の節目上抜けに伴う短期上値目標115円近辺到達後の一段高トライと調整売りとの攻防状態となり、バランスが上方向へと崩れると今年高値115円50銭台までが意識され、下方向へと向かえば114円台半ばから20銭台辺りまでがサポート候補にも。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場12/29終値とチャート
2021年12月30日(木)時点の相場
国内金:7,259 円 12/24(金)
▲35(
0.48%)
国内プラチナ:3,864 円 12/24(金)
▲17(
0.44%)
NY金:1,805.8 ドル 12/29(水)
▼5.1(
0.28%)
NYプラチナ:970.0 ドル 12/29(水)
▼9.8(
1.00%)
ドル円:114.98 円 12/29(水)
▲0.17(
0.15%)
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