金プラチナ短期相場観
米7月生産者物価指数は半年ぶり低水準、夏場の金買いサポートへ
更新日:2017年8月11日(金)
米労働省が発表した7月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比で+1.9%。市場予想の+2.2%を大幅に下回り、1月(+1.7%)以来、半年ぶりの低水準となりました。5年2カ月ぶり高水準となった4月の+2.5%をピークに3カ月連続で伸び率は鈍化。
食品とエネルギーを除いたコアPPIは前年同月比+1.8%となり、こちらも市場予想の+2.1%を大きく下回り、3月(+1.5%)以来4カ月ぶりの低水準。3年ぶり高水準となった5月の+2.1%以降は2カ月連続の鈍化。また、食品とエネルギーに貿易サービスも除いたコアPPI2も+1.9%で4カ月ぶり低水準で、足下2カ月は連続の低下。
また、PPIの前月比では+0.1%予想に反して昨年8月以来11カ月ぶりのマイナス圏となる-0.1%となったことも低インフレへの警戒感を高めることとなり、ドル売りにつながったようです。
なお、前年比で見た消費者物価指数(CPI)と個人消費支出物価指数(PCE)との連動性は高いのに対して、PPIはこれらとの連動性は若干弱めとなっていますが、CPIもPCEも6月までに4カ月連続低下となっていたのに対し、ここに来てPPIも7月までで3カ月連続低下となり、CPIとPCEを追随するような推移となってきました。
今晩の7月CPIでは下げ止まりが予想されていますが、もし予想に反した結果となるようなら、低インフレは一時的要因によるものとするFRB説を疑う必要性が高まることにもなりそうです。
NY連銀のダドリー総裁はこの日、ドル安と労働市場の引き締まりによって前月比ベースでのインフレ指標は押し上げられる、との見方を示しましたが、前年比ベースでのインフレ指標はまだしばらく抑制された状態が続くのではないか、との予想も表明しています。
低インフレの動向を確認するまで追加利上げはいったん見送るべき、とする発言も一部のFRB関係者からは聞かれ始め、前年比ベースのPCEで2%前後を目標とするFRBのインフレへの楽観姿勢も、徐々に崩れ始めそうな様相も。
予想以上に進まない脱・低インフレの流れによって、夏場の金買いは予想以上に進行してきました。
10日のNY金相場は0.84%の大幅続伸。北朝鮮のグアム島沖への弾道ミサイル発射計画報道を端に米朝罵倒合戦も続いて市場の警戒感も高まり、VIX指数は昨年の米大統領選の時(11月8日:18.74)以来の高水準となる16.04まで急騰、欧米株も大幅安での続落とリスク回避の流れが継続。米7月生産者物価指数(PPI)の下振れもあって米長期金利低下とドル安も進行し、NY金は6月7日(1293.2)以来2カ月ぶりの高値水準へと一段高。節目の1280ドルをしっかり上抜けて上値目標となる今年最高値(1298.8)圏にもほぼ到達したような状態。休場で閑散状態となる11日の東京市場ではリスク回避方向への仕掛け的な動きも警戒され、NY市場では米7月消費者物価指数(CPI)下振れへの警戒感も。そうなると金は一時的には1300ドル超へとオーバーランも。逆に7月CPIが想定外の好結果となった場合にはトリプルトップを形成する形での急反落も。
NYプラチナ相場は1%の大幅高となり、少なくとも2012年以降では最長となる11日続伸。過熱感を高めながらも4月17日(991.1)以来、ほぼ4カ月ぶりの高値水準に到達。5月安値と7月安値とで構成するダブルボトムからの上昇で見込まれる今年高値圏を目指す展開はもうしばらく先のこととの想定に反する展開にも。NY金が1300ドルの大台乗せとなった場合には、プラチナも1000ドルの大台回復も現実的に。もっとも、9月は圧倒的に下落確率の高い月であることを考慮すると、8月中に可能な限り水準を切り上げておきたいところ。目先、960ドル台までの急反落は想定しておくべきか。
ドル円は0.78%の大幅ドル安円高となって3日続落、4月21日(109.12)以来3カ月半ぶりのドル安円高水準に。北朝鮮情勢を巡る地政学的リスクによる円全面高の流れに加え、米7月PPI下振れに伴う低インフレへの警戒感によってドル安も進行。前日まで耐えていた110円ラインの節目を割り込んだこともその流れを加速させる結果となり、もう一段の下落余地も。米7月CPIがそれほど好結果でなければ4月安値圏となる108円半ばまでが次の下値ターゲットに。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/10終値とチャート
- 2017年8月11日(金)時点の相場
-
国内金 : 4,836 円 8/10(木) ▲45(0.94%) 国内プラチナ : 3,684 円 8/10(木) ▲1(0.03%) NY金 : 1,290.1 ドル 8/10(木) ▲10.8(0.84%) NYプラチナ : 985.9 ドル 8/10(木) ▲9.8(1.00%) ドル円 : 109.20 円 8/10(木) ▼0.86(0.78%)
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