金プラチナ短期相場観
5カ月連続予想下振れの米7月CPI、しかし下げ止まりの兆しも
更新日:2017年8月12日(土)
米労働省発表の7月消費者物価指数(CPI)は、前日の生産者物価指数(PPI)に続いて低調な結果となりました。前月比ではCPIもコアCPIも+0.2%予想に対していずれも+0.1%にとどまり、前年同月比ではCPIが+1.8%予想に対して+1.7%。3月の+2.4%(予想+2.6%)、4月+2.2%(同+2.3%)、5月+1.9%(同2.0%)、6月+1.6%(同+1.7%)に続き、5カ月連続で市場予想を下回る結果となり、失望感からのドル売りと金買いが一時的に強まりました。
ただし、CPIの前年比では6月からは0.1ポイント上昇し、コアCPIは3カ月連続の前年比+1.7%の横ばい推移。いったんは下げ止まりの兆しとなり、反発への可能性も期待させる状況となりました。6月にコアCPIをCPIがデッドクロスした状態から同水準へと戻し、次月以降CPIがコアCPIを上抜けるようだと、インフレ再上昇への可能性を示唆することにもなります。
なお、CPIの内訳では、ガソリンが6月の前年比-0.4%から7月は3.0%へと大きく反発し、航空運賃も-4.3%から-2.5%へとやや回復。その一方で中古車は-4.3%から-4.1%、携帯電話サービスは-13.2%から-13.3%など、低迷状態は続きます。
この結果を受けて、現在最ハト派で3月以降の利上げに反対してきたミネアポリス連銀カシュカリ総裁(投票権有り)は「インフレが上向くことが明確になるまでFRBが利上げを中断する新たな理由になる」と従来からの主張をさらに強める様子で、「労働市場はタイトだが、インフレは上昇していない」にもかかわらず「なぜ今、景気を冷やす必要があるのか」とも発言。
また、ややタカ派のダラス連銀カプラン総裁(投票権有り)も「考えられているほど、現状は緩和的ではない」と利上げによる引き締めへの警戒感を示し、「利上げは当面控える必要」があるとの見解を表明しています。
CMEフェドウォッチでの12月利上げ確率が前日の46.8%から35.9%へと急低下したのと同様に、FOMCメンバーのなかでも利上げ反対予備軍が増加の兆しを見せています。
11日のNY金相場は0.3%高となって3日続伸。米朝レトリック応酬合戦による市場の警戒感は続き、底堅く推移した金は米7月CPIの結果を受けて1280ドル後半から1298ドル台まで急騰。今年最高値となった6月6日高値1298.8ドルにほぼ並ぶ水準まで上昇し、2カ月ぶり高値をつけた後の反落局面は、ロシアのラブロフ外相が緊張緩和に向けたロシアと中国による共同計画を示唆する発言もあって加速、金はこの日の安値1286ドル台まで急反落。しかし、ラブロフ発言では北朝鮮のミサイル実験凍結と米韓軍事演習の一時停止を呼びかける従来からの内容以外に目新しさはなく、事態収束への期待も高まらず、NY引け後にかけて再び1290ドル台半ばへと値を戻して終了。短期的には上値目標の今年高値圏に完全到達したことにより、反落への動きも警戒される。中期的には4月高値と6月高値と合わせてトリプルトップを形成する分岐点に到達。やはり反落警戒感も高まるところ、しかし1300ドル台へと水準を切り上げることができれば、中期的な流れが変わり始める可能性も。
週間ベースでは+29.4ドル(2.32%)の反発。
NYプラチナ相場は0.39%上昇し、2012年以降での最長を更新する12日続伸。金に追随した上値トライ局面では3月6日(1003.6)以来、5カ月ぶり高値となる996ドル台まで急騰も、1000ドルの大台ラインが意識されて反落。今朝の時間外では990ドル割れへと水準を切り下げ、長めの上ヒゲを残して急反落警戒感も高まる状況に。過熱感を示すRSIは87.5%となり、2010年以降での最大89.5に次ぐ高水準。
週間ベースでは+20.7ドル(2.14%)の続伸。
ドル円は0.04%の小幅ドル安円高となって4日続落。米7月CPI下振れを受けての急落局面では4月20日(108.72)以来3カ月半ぶりのドル安円高水準となる108円70銭台まで下落。ただし、地政学リスクへの警戒感は続くなかでも概ね109円を挟んでの揉み合い状態を維持し、長めの下ヒゲを残す形に。短期的には下値目安108円半ば付近まで下げたこともあり、水準的にも時間的にも、ちょうど1カ月経過したドル安円高の流れが反転する可能性もやや高まる状況に。
週間ベースでは-1.58円(1.42%)の反落。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/11終値とチャート
- 2017年8月12日(土)時点の相場
-
国内金 : 4,836 円 8/10(木) ▲45(0.94%) 国内プラチナ : 3,684 円 8/10(木) ▲1(0.03%) NY金 : 1,294.0 ドル 8/11(金) ▲3.9(0.30%) NYプラチナ : 989.7 ドル 8/11(金) ▲3.8(0.39%) ドル円 : 109.15 円 8/11(金) ▼0.05(0.04%)
1300ドルと108円、2.10%台の壁と93ポイント近辺のサポート帯 8/14(月)
5カ月連続予想下振れの米7月CPI、しかし下げ止まりの兆しも 8/12(土)
米7月生産者物価指数は半年ぶり低水準、夏場の金買いサポートへ 8/11(金)
米Q2労働生産性上昇も単位労働コスト鈍化で低インフレ懸念継続 8/10(木)
米6月JOLTS求人件数は過去最大を19万件の大幅更新、でドル買いも 8/9(水)
PIVOT指数から見るNY金相場サポート&レジスタンスライン
PIVOT指数から見るNYプラチナ相場サポート&レジスタンスライン