金プラチナ短期相場観
10年半ぶりの利下げは保険、株式市場とトランプ大統領がっかり
更新日:2019年8月1日(木)
リーマンショック後の2008年12月、FF金利を0.75%引き下げて0.00-0.25%の実質ゼロ金利まで引き下げて以来、10年7カ月ぶりの利下げを決定したFOMC。
景気下振れリスクに対する「保険」と称した0.25%の利下げは、大方の予想どおりとも言える下げ幅となり、声明文にはサプライズ感もなく、市場反応も比較的限定的となりました。
しかし、パウエルFRB議長の会見が始まり、質疑応答が進むに連れて市場反応は拡大。
パウエルFRB議長は、今回の利下げはあくまでサイクル中盤での政策調整であり、長期的な緩和局面の始まりではない、との見解を毅然として示しました。
今回の政策決定には、タカ派とされるカンザスシティ連銀ジョージ総裁とボストン連銀ローゼングレン総裁の2名が反対票を投じたこともあり、全会一致のハト派寄り、というムードも全くなかったことも「タカ派」イメージを漂わせることにつながったようです。
これには株式市場も、トランプ大統領も失望。
トランプ大統領は、バランスシートの縮小終了を2カ月前倒しとしたことは評価しながらも、自身の大幅利下げ催促には応えなかったパウエルFRB議長に対して「失望」したと不満をあらわに。
NYダウは続落で300ドル超の下落で反応。300ドル超の下げ幅はトランプ大統領のメキシコ関税発言があった5月31日以来2カ月ぶり。
ドル高に伴い、売り圧力が強まったユーロドルは2017年5月以来、2年2カ月ぶりの安値水準となる1.1070ドル台へ。
かつて高金利通貨と言われた豪ドルは0.6840ドル台まで下げて2009年3月以来、10年4カ月ぶりのドル高豪ドル安水準に。
「タカ派的利下げ」により、市場は株安・ドル高で反応、高止まり状態が続いていた金価格も調整局面入りの兆しにもなってきたようです。
しかし、パウエルFRB議長は「一度きりの利下げだとは言っていない」とも発言、当然のことながら今後の指標結果次第であることにも言及しています。
「保険」であっても「タカ派的」であっても年内あと1回か2回、年明けにも1回程度利下げが続く可能性も、まだまだ残されます。
31日のNY金相場は-4ドル、0.28%の小幅安で4日ぶりの反落。NY朝には米7月シカゴPMIが51の予想に反して44.4と節目の50も大幅に割り込み、3年7カ月ぶりの低水準となったこともあり、一時1448ドル付近まで上昇。6年2カ月ぶり高値となった7月19日(1454.4)以来、2週間ぶりの高値をつけた後は調整局面入りの様相に。NY引け後のFOMC声明文発表後、パウエルFRB議長会見の進行とともに軟調推移の展開となり、1440ドル付近から1420ドル前半まで大幅下落。短期上値余地と見られた1450ドル付近まで上値を試したこともあり、調整局面を形成する形にはなったものの、20日移動平均線(1418.1)にも届かず下値も限定的。目先は1410ドルから1440ドル台までの広めの高値保ち合いレンジを維持して米指標などをひとつひとつこなしながら追加利下げの有無などを見極めて行く状況に。
月間では+24.1ドル、1.7%高で3カ月続伸。
NYプラチナは+6.3ドル、0.72%の反発。3日連続で880ドル台の高値保ち合い上限トライも、880ドル台前半までで上値を押さえられ、NY引け後にはFOMC後の金の急落に連れ安の展開となって870ドル割れ。下値を切り上げるフラッグ状態の三角保ち合いを形成し、上限は880ドル台、下限は860ドル台から870ドルへと切り上げた状態からの下限割れ状態となり、この後870ドル台を回復できれば保ち合い継続、できなければ下方ブレイクで調整局面入りも。下値目安は5月末安値から7月高値までの半値戻し(839.7)となる830ドル台まで。
月間では+43.4ドル、5.19%の大幅続伸。
ドル円は10銭余りのドル高円安へと反発。FOMCを前に108円50銭から60銭台までの小幅レンジでの膠着状態、0.25%利下げの声明文を受けて小幅に乱高下も108円80銭台へと上昇、パウエルFRB議長会見をタカ派寄りと見なすと一時109円ちょうど近辺まで上昇する場面も。結果的に5日連続で上値を切り上げる形にはなったものの、109円ラインの固さをあらためて確認。108円台後半の小幅保ち合いレンジを形成する状態となり、目先は雇用統計などを材料に上限突破できるかどうか。109円の節目を超えられない状態が続けば、足下のドル高優勢の流れも次第に逆流しかねない状態にも。
月間では+0.84円、0.78%高で3カ月ぶりの反発。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場7/31終値とチャート
1日の国内金価格は-57円、1.07%の大幅安で4日ぶりの反落。下げ幅としては3月29日(-58円、1.17%)以来4カ月ぶり、今年3番目の大幅安。タカ派的利下げを受けて今朝の東京市場でもドル高の流れが続き、ドル円は109円台へ、NY金は1420ドル割れへと軟調推移となり、国内金価格の高値斜行三角保ち合いも下方ブレイクの兆しにも。7月31日の5338円が当面のピークとなる可能性も高まってきた様子、5270円の節目を割り込むようなら調整局面拡大で7月安値5155円から、5月末から7月高値の38.2%戻し(5141)までの水準、5150円近辺が当面の下値目安に。
プラチナ価格は-38円、1.17%の大幅続落。金に先行して調整局面入りの可能性、節目の3230円を割り込んだことで下げ幅拡大へ。6月18日につけた今年安値2970円から7月高値3290円までの38.2%戻し(3168)から200日移動平均線(3174)辺り、3170円近辺までが当面の下値目安に。
※参考:金プラチナ国内価格8/1とチャート
- 2019年8月1日(木)時点の相場
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国内金 : 5,281 円 8/1(木) ▼57(1.07%) 国内プラチナ : 3,220 円 8/1(木) ▼38(1.17%) NY金 : 1,437.8 ドル 7/31(水) ▼4.0(0.28%) NYプラチナ : 878.9 ドル 7/31(水) ▲6.3(0.72%) ドル円 : 108.73 円 7/31(水) ▲0.13(0.12%)
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