金プラチナ短期相場観
ファイザー・ワクチン効果で世界同時株高急進、金は急反落
更新日:2020年11月10日(火)
米製薬大手ファイザーは9日、独バイオ医薬ベンチャーのビオンテックと共同開発する新型コロナウイルス感染症ワクチンの臨床試験(治験)で感染を防ぐ有効率が90%を超えたと発表。数万人が参加した治験での結果であり、今月中にもワクチンの緊急使用に関する米当局の承認を求める見通しであることも合わせて発表。
この報道を受けて市場はリスクオンの反応。ダウは一時1600ドル超の急騰となって3万ドル目前となる29930ドル台まで上昇。欧州株も軒並み大幅高となって世界同時株高の流れが急進。コロナ禍でも上昇し続けたナスダックだけが1.5%超の急反落となったのが象徴するように、「withコロナ」の時代から「脱コロナ」に向けての転換点となりうる報道に、市場の流れも大きく変化し始めた様子も。
ナスダックと同様、コロナ禍で上昇してきた金価格も急落の反応となり、一時100ドル超の急落に。
上昇の兆しも見られ始めていた米10年債利回りもこの日は一段高となって0.93%台へと急騰。3月半ば以来、8ヵ月ぶりの高水準となり、実質金利も-0.80%まで上昇。これも7月半ば以来、4ヵ月ぶりの高水準となり、金価格の下押し圧力となったようです。
9日のNY金相場は-97.3ドル、4.99%の大幅安となって3日ぶりの反落。下落幅では8月11日(-93.4ドル、4.58%)を、下落率では3月13日(-73.6ドル、4.63%)を超えて今年最大の下落。下落率では2013年6月20日(-87.8ドル、6.39%)以来7年4ヵ月ぶり、下落幅では2013年4月15日(-140.3ドル、9.34%)以来7年7ヵ月ぶりの急落。なお、8月11日はロシアで新型コロナのワクチンが世界で初めて承認(第3相試験開始とともに異例の先行承認)された日。水準としては7月21日(1843.9)以来、3ヵ月半ぶりの安値。
急騰後の十字線に近い足型が示唆していたとおりの展開となり、短期上値目標1980ドル台に対してはこの日の時間外に1966ドルまで上昇して力尽き、ロンドン市場でのファイザー報道を受けて1960ドルから急落、NY市場では一時1850ドル割れ。NY引け後には1860ドルを回復し、1870ドルをうかがう場面もあり、いったん下げ止まりの様子も。水準的には9月安値(1851.0)を下回ったものの、3月安値(1450.9)から8月の最高値(2089.2)までの38.2%戻し(1845.4)にサポートされた形にも。短期的には1890ドル台のサポートを突き抜ける形にもなったことから、1800ドルの大台付近までが下値目安となって一段安への可能性も。
NYプラチナは-32ドル、3.56%の大幅続落。先週後半に2日連続で短期上値目標910ドル台の高値をつけ、上ヒゲ十字線を残して示唆していたとおりの失速。時間外には910ドル手前まで何度も上値を試しながらもワンタッチすらできずにロンドン市場での急落へ。908ドルからNY市場でつけた安値は一時850ドル割れまで、60ドル弱の急落に。短期下値サポート840ドル台でしっかりサポートされた形にもなり、NY午後には860ドル台を回復。900ドルの大台ラインが当面の上限となって保ち合い回帰の様相に。
ドル円は2円弱のドル高円安、1.91%の大幅高となって3日ぶりの反発。3月19日(+2.66円、2.46%)以来8ヵ月ぶり、今年4番めの急騰。水準としては10月20日(105.50)以来、3週間ぶりの高値。欧州時間にファイザー報道を受けて株高円安の流れが急進、103円50銭台から104円90銭台まで急騰。105円の抵抗水準突破には若干の揉み合いと時間を要したものの、NY時間にはドル高の流れも加勢、105円60銭台まで上昇。しかし、急騰した米10年債利回りやNYダウなどの急失速にも連れてNY午後にかけては軟調推移。結果的に右肩下がりの90日移動平均線(105.73)などにも上値を押さえられ、下落トレンドからの脱却には至らず。今朝の東京市場では105円割れを試す展開に。短期的には105円ちょうどの抵抗水準突破に伴い、106円近辺までの上値余地拡大も、失速状態が続けば105円30銭台が当面の上限となって上値切り下げ状態継続にも。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場11/9終値とチャート
10日の国内金価格は-137円、1.94%の大幅安で3日ぶりの反落。最高値更新後、初めて7000円を割れた9月24日(-140円、1.99%)以来、1ヵ月半ぶりの急落となってまたも7000円の大台割れ。90日移動平均線(7086)を目前に急失速、短期上値目標7090円台を目指した流れは7062円までで折り返し。8月の最高値からの調整局面を10月末安値6856円までで終えて反発局面入りかと思われた流れは23.6%戻し(7050)付近で力尽きた格好にもなり、下値警戒感も再浮上。短期的には6970円のサポート割れに伴い、10月安値圏6860円近辺までが下値目安に。ただし、キリの良い水準で下げ止まったNY金の下げ渋りが続けばサポートされる可能性も。
プラチナ価格は-14円、0.43%安で3日ぶりの反落。NYプラチナの急落を円安がサポート。夏場以降上値を切り下げてきた下落トレンド脱却に向け、直近高値3284円超えも意識され始めたところで、10月半ばの保ち合い水準到達に伴う一服感が勝ってしまった様子。水平移動し始めた21日移動平均線(3215)辺りでサポートされ、目先の上値抵抗となる3240円をあらためて上抜けできれば上値トライ再開へ。直近高値と10月高値も超えて9月前半の保ち合い水準3380円近辺までが上値目標にも。
※参考:金プラチナ国内価格11/10とチャート
- 2020年11月10日(火)時点の相場
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国内金 : 6,925 円 11/10(火) ▼137(1.94%) 国内プラチナ : 3,222 円 11/10(火) ▼14(0.43%) NY金 : 1,854.4 ドル 11/9(月) ▼97.3(4.99%) NYプラチナ : 867.4 ドル 11/9(月) ▼32.0(3.56%) ドル円 : 105.33 円 11/9(月) ▲1.97(1.91%)
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