金プラチナ短期相場観
米4月雇用統計は楽観見通しに冷水、100万人予想が26.6万人
更新日:2021年5月8日(土)
米4月雇用統計では、前月比+100万人との事前予想もあった非農業部門雇用者数の伸びが+26.6万人のネガティブ・サプライズ。
米経済回復基調加速への期待感とインフレ高騰への警戒感、テーパリングとその先の利上げ見通し前倒しなど、市場の楽観見通しを諌めようと、ここ最近続いていたFRB高官達の慎重姿勢を促す発言に加え、ついに経済指標でも自重を促す結果が飛び出した格好に。
市場予想の3分の1にも届かない低調な伸びにとどまった非農業部門雇用者数は、全米総数で2020年2月時点の1億5252万人から4月には1億3016万人へと急減し、1年後の2021年4月時点で1億4430万人。失われた雇用は残り821.5万人。
失業率は6.1%となって市場予想の5.8%を上回り、3月の6.0%からも予想外の上昇。2020年3月の4.4%、3月FOMCのでの2021年末予想中央値4.5%に対してもまだまだ開き。
広義の失業率、U6失業率は10.4%となって3月の10.7%からは低下、コロナ後最低水準に改善も2020年3月の8.8%、2月の7.0%にはまだまだ。
労働参加率は61.7%で3月から0.2%上昇で昨年8月以来8ヵ月ぶり高水準。2020年2月の63.3%から4月の60.2%への急低下幅に対する回復率は50%弱。
ただし高卒者の労働参加率は55.3%と低調。2020年2月の58.3%から4月の54.3%への低下幅に対する回復率は25%とさらに低調。
失業期間が半年以上に及ぶ長期失業者の割合は43.0%。9年半ぶり高水準となった3月の43.4%からは小幅に低下。2020年2月の19.3%からコロナショックでの短期失業者急増に伴う急低下をはさみ、5月から上昇を続けていた長期失業者の割合はようやく、ピークアウトの可能性を示す状態となってきたかもしれません。
債券買い入れ縮小を検討する条件をまだ満たしていないとする理由の一つとして、リッチモンド連銀のバーキン総裁が挙げていた指標、人口に対する雇用率は4月に57.9%となり、3月からは0.1ポイント上昇。金融危機後の最低水準58.2%までもう少し、という状況。2020年2月には61.1%で4月には過去最低となる51.3%まで急低下。この低下幅に対する回復率は4月時点で67.3%。
米労働市場の「回復に向けては程遠い」状況であることをあらためて認識させられる雇用統計となったようです。
米国の雇用復活に向けて回復基調が急加速することはなく、代わりに雇用統計への関心が薄れかけていた市場の、雇用統計後の波乱相場は復活したようです。
7日のNY金相場は+15.6ドル、0.86%高となって3日続伸。2月10日(1842.7)以来、3ヵ月ぶりの高値。NY朝に米4月雇用統計のネガティブ・サプライズを受けて1820ドルから1840ドル台半ばまで急騰。その後は1.5%台前半へと急落した米10年債利回りが下げ渋って元の水準へと戻す展開となったことを受けての調整も、1830ドル台を維持。1790ドル台の節目上抜けに伴う短期上値目標1830ドル台にしっかり到達したことから、目先は一服感も。値幅分析からは、今年高値(1962.5)から3月安値(1673.3)までの半値戻し(1817.9)を達成し、61.8%戻し(1852.0)トライも視野に。昨年8月最高値からの下落幅に対しては38.2%戻し(1832.2)到達による一服感も。
週間ベースでは+63.6ドル、3.6%高で3週ぶりの反発。昨年11月2日からの週(+71.8ドル、3.82%)以来、半年ぶりの大幅上昇。3ヵ月ぶりに52週移動平均線(1836.6)との攻防状態にも。
NYプラチナは-3.1ドル、0.25%の反落。1250ドルをはさんでの保ち合い推移からNY朝には金に追随しての急騰で1270ドル台前半まで上昇も、米株やパラジウムの急落などにも引っ張られる形で1240ドル付近まで急反落と乱高下状態。その後米株は元の水準以上に戻してダウは最高値更新へ、パラジウムもほぼ元の水準に戻す展開となったことにも連れて1250ドル台半ばを回復。結果的に短期上値目標1280ドル近辺には届かず、4日の高値1273.9ドル付近で失速した格好。今年高値からの二番天井形成には及ばず、1270ドル台で短期ダブルトップ形成の様相にも。短期上値目標再トライの可能性も残しながら、ネックラインとなる1214.5ドル割れには要警戒。
週間ベースでは+49.3ドル、4.09%の反発。
ドル円は50銭のドル安円高、0.46%安で3日続落。好結果への期待感が優勢となっていたことを示すように、雇用統計発表直前には109円付近から109円20銭台へと小幅に上昇。想定外の結果に109円を割れて急落、108円30銭台まで90銭余り水準を切り下げ、自律反発では108円80銭台まで。米10年債利回りが急落後に元の水準へと戻した流れには追随し切れず、為替はドル全面安。株価の反発にも追随する形でクロス円などでは円安も進行したものの、ドル円ではドル安の勢いに押された格好。テーパリングの前倒し観測も後退し、ドルインデックスは2ヵ月半ぶり安値圏へと急落。短期的にはドル安の流れがもう少し続く可能性も、109円台前半の小幅保ち合い下放れに伴う短期下値目安は4月安値107円台半ばまで。
週間ベースでは-74銭、0.68%の反落。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場5/7終値とチャート
- 2021年5月8日(土)時点の相場
-
国内金 : 6,919 円 5/7(金) ▲97(1.42%) 国内プラチナ : 4,749 円 5/7(金) ▲118(2.55%) NY金 : 1,831.3 ドル 5/7(金) ▲15.6(0.86%) NYプラチナ : 1,254.5 ドル 5/7(金) ▼3.1(0.25%) ドル円 : 108.59 円 5/7(金) ▼0.50(0.46%)
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