ECB利上げ見通し維持もリスクバランスは下振れ方向
更新日:2018年12月14日(金)
ECB理事会では、予定どおり量的緩和の終了を正式に決定し、償還後の再投資については利上げ開始後も当面継続することも合わせて発表し、緩和的な姿勢を当面維持する構えを見せました。
そして、その利上げ見通しについては、少なくとも来年夏までは利上げしない、という従来どおりのトーンにとどめました。
来年10月末で任期満了となるドラギECB総裁は会見で、「最近の経済データは予想より弱い」ことを認め、「リスクバランスは下振れ方向」にあると警戒感を示しました。
今回の理事会でのスタッフ予想でも、GDP成長見通しは下方修正され、2018年を前回9月の2.0%から1.9%へ、2019年は1.8%から1.7%へ、2020年は1.7%で据え置きとなりました。
この日、ドイツのIFO経済研究所が発表したドイツ経済成長見通しでも、2018年を1.9%から1.5%へ、2019年は1.9%から1.1%へ、2020年も1.7%から1.6%へと下方修正されていました。IFOでは、自動車業界などを中心に成長鈍化は2019年まで続くとの予想を示しています。
ドイツの下方修正幅の大きさと、ECBによるユーロ圏予想との乖離が気になるところです。
英国のEU離脱を巡る迷走ぶりの余波を受け、イタリアの財政問題懸念にフランスも加わり、ドイツの景気低迷に政局不安なども抱えるユーロ圏としては、経済見通し引き下げはやむなしの状況で、利上げ見通しを先送りしなかったことは、ECBとしての精一杯の意地を見せた格好です。
しかし、FRBの利上げ打ち止めや減速観測が台頭し、ECBが利上げフェーズに向かう状況となり、ユーロ高ドル安基調へと反転しかけた流れが巻き戻され、ユーロドルの低迷状態が続くことが、ECBの利上げ先送りもやむなしを示唆しているようにも見えます。
ユーロドルの低迷が金の反発基調の足を引っ張り、ドラギ総裁任期中の利上げスタートへの暗雲にもなりつつあるようです。
13日のNY金相場は-2.6ドル、0.21%の小幅反落。ECB理事会での量的緩和終了は織り込み済も、景気見通しなどの引き下げも想定して欧州時間からユーロ安ドル高気味の推移となり、金は先行する形で1250ドル割れへと軟調推移。ドラギ総裁会見でのユーロ安ドル高局面では、金の安値は1244ドルまでと限定的。3日連続で1250ドルをはさんでの小幅保ち合い推移の展開となり、今後の方向性は次週のFOMC次第の様相に。依然として上方向優勢の状況で1250ドルの保ち合いを上方ブレイクできれば1270ドル台までを目安に一段高の展開へ、下方向には20日移動平均線(1231.3)も上昇してきた1230ドル近辺がサポート水準に。
NYプラチナ相場は-9.6ドル、1.19%の大幅安で3日ぶりの反落。前日の大幅上昇からの反動安となり、810ドル手前で上値を押さえられると時間外から軟調推移となってNY市場では800ドルの大台割れ。大台ラインがサポートになることはなく、上値抵抗水準は810ドルへと切り下げる形で安値圏での保ち合い形成の様相にも。ただし、下押し圧力は後退しており、目先の下値は780ドルの安値までではサポートされやすく、抵抗水準を突破できれば11月高値から12月安値までの61.8%戻し(842.2)となる840ドル台までが次の上値目標にも。
ドル円は40銭弱のドル高円安となって反発。英政局リスク先送りや米中貿易交渉進展期待などから株高円安の流れとなった東京市場では113円50銭まで水準を切り上げ、見通し引き下げとなったECB理事会とドラギ総裁会見後にはドル高の勢いが強まり113円70銭台まで上昇。上昇余地と想定していた12月3日高値(113円70銭台)まで、10日ぶりに上昇したことで上値トライは一服か。今朝の東京市場では日銀の国債買い入れオペ減額もあり、株安円高の流れで113円半ばへ。今年は3月安値からは上昇トレンドが続く状態も10月高値114円50銭台で頭打ちとなり、10月安値111円30銭台とを起点に三角保ち合いを形成中。目先は10月高安の76.4%戻しとなる113円80銭までが上限となりやすく、下値は38.2%戻しの112円50銭台が目安に。FOMCに向けてはハト派見通しとなれば下値トライで112円割れも。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場12/13終値とチャート
14日の国内金価格はわずかに+1円、0.02%の小幅高となって5日続伸。5日続伸となるのは8月17日から23日まで以来、4カ月ぶりで今年2回め、今年最長。半年ぶり高値水準を回復した状態でFOMC前の週を終了。FOMCでは来年の利上げ見通し減速でドル安金高が予想されるものの、相対的に買われることになるべきユーロの弱さがネックとなり、ドルも下げ渋りとなれば国内金価格は一段高の展開も想定されることにも。1月高値から8月安値までの61.8%戻し(4871)も目前に迫り、これを上抜けると次の節目は76.4%戻し(4969)。
週間ベースでは+49円(1.02%)となり、4週続伸。10月以降の11週間では10週が上昇。若干の過熱感も。
プラチナ価格は-22円、0.7%安で3日ぶりの反落。NYプラチナの反動安に連れ安も、3100円の大台と9日移動平均線(3104)上抜けを維持し、反発に向けた勢いは最低限キープ。3150円が上方向への節目となり、突破できれば90日線も上抜けて10月保ち合い水準3200円の大台近辺までが次の上値目標に。
週間ベースでは+54円(1.76%)となり、5週ぶりの反発。
※参考:
金プラチナ国内価格12/14とチャート
2018年12月14日(金)時点の相場
国内金:4,857 円 12/14(金)
▲1(
0.02%)
国内プラチナ:3,123 円 12/14(金)
▼22(
0.70%)
NY金:1,247.4 ドル 12/13(木)
▼2.6(
0.21%)
NYプラチナ:797.5 ドル 12/13(木)
▼9.6(
1.19%)
ドル円:113.63 円 12/13(木)
▲0.38(
0.34%)
12/13(木)のその他主要マーケット指標
ユーロ圏PMIは年末まで下げ止まらず、ユーロ売りが金の重石に 12/15(土)米11月CPIは鈍化もコアCPI上昇でインフレ減速懸念は緩和 12/13(木)ZEWドイツ景況感、期待指数下げ渋りも現況はほぼ4年ぶり低水準 12/12(水)求人件数>失業者数は8カ月連続、労働需給逼迫は100万人超 12/11(火)
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