鉱工業生産に設備稼働率、引き続き米景気減速警戒指標も
更新日:2019年08月16日(金)
米商務省が発表した7月の小売売上高は前月比+0.7%。市場予想の+0.3%を上回り、前月比プラスは5カ月連続。自動車を除く小売売上高でも+0.4%予想を上回る+1.0%となり、4カ月ぶりの高水準、前月比プラスは5カ月連続。
逆イールドによるリセッション懸念が台頭した翌日、米経済を支える個人消費の好調ぶりが示されました。
悲観論を打ち消す材料はこの日、複数確認され、同時発表となったNY連銀とフィラデルフィア連銀の8月製造業景況指数も市場予想を上回ってまずまずの好結果。製造業での景気減速のさらなる進行に歯止めをかける可能性を示す結果にも。
その一方で、引き続き米景気減速への警戒感を示す指標も見られます。
FRBが発表した7月の鉱工業生産指数は市場予想の+0.1%に反して前月比-0.2%。6カ月平均で見ると6カ月連続の前月比マイナスとなり、低迷期を形成中。
内訳では製造業の生産指数が前月比-0.4%と3カ月ぶりのマイナス圏も、今年に入ってからのマイナスは5回めとなり、やはり製造業の弱さが示された格好にも。
また、設備稼働率も7月は77.5%となって2017年10月(77.3%)以来、1年9カ月ぶり低水準。2014年と2018年に79%台のピークを2度記録し、低下基調が進行しています。
コマツ社が公表している建設機械稼働管理システム「KOMTRAX」の地域別建設機械稼働時間データからも、世界経済を牽引する4地域の景気減速が警戒される状況も見て取れます。
月次KOMTRAXデータの前年同月比を3カ月平均で見ると、7月まで日米欧中いずれも3カ月以上連続の前年割れとなっています。
北米が3カ月連続、欧州と中国は9カ月連続、日本は15カ月連続の前年割れ。
中国はその前の1カ月プラスをはさんで8カ月連続の前年比マイナスが続いており、このデータからも世界の景気減速を牽引しているように見えます。
日本もこれに追随するように長期低迷期が続き、今年に入って落ち込みが目立つ欧州も含め、世界各地域の減速の影響を受けるように、北米の数値も足下で急低下。
景気後退は別としても、米国を含む世界主要地域で景気減速懸念はくすぶり続けているようです。
15日のNY金相場は+3.4ドル、0.22%の小幅続伸。終値ベースでは2013年4月11日(1564.9)以来、6年4カ月ぶりの高値水準。上下の変動値幅が30ドルを下回るのは4日ぶり。高値圏での乱高下状態から少し落ち着きを取り戻す形となったこの日の変動値幅は19.4ドル。今年の平均14.8ドルを少し上回り、1520ドル半ばから1530ドル半ばまでを主要レンジとして揉み合う展開に。NY朝には米7月小売売上高や8月の地区連銀製造業景況指数など複数の米経済指標が予想を上回る好結果となったことを受けて売られたものの、1520ドル割れでは底堅さも。逆にその後は米10年債利回りが3年ぶり低水準となる1.52%台へ、30年債は過去最低となる2%割れへと低下基調が再開したこともあり、1530ドル台後半まで上昇。13日の1540ドル台半ばを含め、高値では4日連続1530ドル台以上まで上昇しており、
短期上値目標1540ドル付近には何度も到達した状態。
NYプラチナは-6ドル、0.71%安となって6日続落。6日続落となるのは昨年2月以来、1年半ぶり。前日に850ドルの節目を割り込んだことにより、この日は時間外から850ドルが上値抵抗線に切り替わった状態となり、840ドル台後半での保ち合い推移からNY市場にかけては840ドル台前半へと水準を切り下げる展開。NY朝には一時835ドル台まで下落し、
短期下値目安830ドル付近にほぼ到達したような状態に。5月末安値から7月高値までの半値戻し(839.7)も達成し、下げ止まりやすい水準にも。若干行き過ぎとなれば61.8%戻し(827.8)辺りも。
金との価格差は12日に650ドルを超えて以降4日連続で過去最大を更新し、689.2ドルに。
ドル円は30銭のドル高円安となって反発、106円台を回復。105円80銭台を中心に小康状態が続いた東京時間を経て欧州時間早朝、微妙なタイミングを図ったような形で106円70銭台まで急騰後、106円20銭台へと急反落。さらに中国が米国の追加関税に対して報復措置を講じる意向を示したこともあり、再び106円を割れて105円70銭台まで下落。NY時間には米10年債利回りの下げ渋りと米7月小売売上高やNY連銀製造業景況指数などの好結果もあり106円30銭台へと反発。しかし、米10年債利回りが再び低下基調となったことで一時105円80銭台まで再反落。乱高下状態から今朝の東京市場では106円付近に落ち着き始めた様子も。保ち合い下限を105円台後半へと切り上げる形となり、あらためてこれを下回るようだと104円割れも意識されるような展開にも。上方向には106円台後半へと抜け出すことができれば108円台までの反発局面形成へも。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場8/15終値とチャート
16日の国内金価格は+35円、0.63%高で4日続伸。前日に続いて2日連続での近年最高値更新。短期上値目標5530円台に到達してさらにオーバーラン。米中対立にトランプ政権によるFRB批判と利下げ圧力、世界的景気減速懸念に金利の低下基調も止まらず、NY金の高止まりにリスク回避のドル高も加わってドル円も下げ渋り。国内価格を下支えする状態も続くものの、急落リスクにも要警戒の状態にも。軽めのサポートでしかない5460円台を割り込めば5400円近辺までは短時間でも。
週間ベースでは+84円、1.54%高で3週続伸。5月末からの12週のうち11週で上昇。
プラチナ価格は-17円、0.55%の続落で7月10日(3031)以来、5週間ぶりの安値水準。今年安値となった6月の2970円から7月高値3290円までの61.8%戻し(3092)を達成してさらに一段安の状態。次の節目となる76.4%戻し(3046)までが目先の下値目安となり、もう少しの下げ余地。
金との価格差は15日の2429円から2481円へと大幅拡大で過去最大を2日連続更新。
週間では-87円、2.75%安で3週続落。
※参考:
金プラチナ国内価格8/16とチャート
2019年08月16日(金)時点の相場
国内金:5,553 円 8/16(金)
▲35(
0.63%)
国内プラチナ:3,072 円 8/16(金)
▼17(
0.55%)
NY金:1,531.2 ドル 8/15(木)
▲3.4(
0.22%)
NYプラチナ:842.0 ドル 8/15(木)
▼6.0(
0.71%)
ドル円:106.12 円 8/15(木)
▲0.30(
0.28%)
8/15(木)のその他主要マーケット指標
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