コアPCEインフレの許容範囲超えは15年間ほぼなし
更新日:2020年08月29日(土)
パウエルFRB議長は前日のジャクソンホールのオンライン講演で、インフレ目標を平均で2%へと方針転換することを発表。
ダラス地区連銀のカプラン総裁は同日、インフレ率が1年間にわたって前年比+3%にとどまるような状態を容認し、同時に利上げも実施しないことには違和感を感じると述べていました。ただし、インフレ率が前年比+2.25%から+2.50%程度の状態であれば、今回の基本方針変更との整合性は取れているとの見解を示していました。
つまり、インフレ率が前年比+2.5%程度までの状態が1年間続いた場合でも、(それ以前の低インフレの期間が長ければ)利上げしない可能性は十分有り得る、ということに。
基本方針変更の翌日に米商務省から発表された、その目標到達度を測る基本指標、PCE(個人消費支出物価指数)は7月に前年比+1.00%、食品とエネルギーを除くコアPCEは前年比+1.25%。いずれも3ヵ月連続の上昇で3月(+1.34%、+1.65%)以来、4ヵ月ぶりの水準を回復。
そもそも、3月時点でも2%を大きく下回る水準で、さらに急低下した4月のコアPCEの前年比+0.91%は、過去最低レベル。(過去最低は2010年12月の前年比+0.90%)そこから3ヵ月続伸でも0.34%の上昇にとどまり、実質的にインフレ目標水準が切り上がった状態においては、「利上げ」がチラつくまでには長い年月を要することになりそうです。
なお、コアPCEが許容範囲の前年比+2.5%を最後に超えたのは2006年8月の+2.55%。2007年2月の+2.50%と合わせ、2.5%以上でも2006年以降ではわずかに2回。直近15年間で、コアPCEが許容範囲を超えたことは、ほぼなし。
カプラン総裁のダラス連銀が発表しているトリム平均PCEでは、PCEの構成要素の上位と下位の20-30%をカットして算出され、コアPCEの方向性を見るための参考指標となっています。このトリム平均PCEでも、前年比+2.5%超となったのは2008年9月が最後となっています。前年比+1.80%となった7月時点ではまだ下げ止まってもいません。
とは言え、コアPCEもPCEも反発傾向にあることが影響したのか、期待インフレ率は前日の1.73%からこの日1.77%まで急上昇。しかし、米10年債利回りは前日の急騰からの反落となっており、実質金利は前日の-0.97%からこの日は-1.05%へと急低下。過去最低となった8月6日の-1.09%以来、3週間ぶり低水準。
実質金利の急低下が金価格を押し上げました。
28日のNY金相場は+42.3ドル、2.19%の大幅反発で8月18日(2013.1)以来、10日ぶりの高値。前日パウエルFRB議長講演後の乱高下で下げた値幅の倍返し。東京朝の時間帯に1928ドルまで下げて流れが反転。米10年債利回りの0.7%台後半での高止まりは続いたものの、先行してドル安の流れが強まると同時に押し目買いスタート。FRBによるゼロ金利政策長期化見通しとなったにもかかわらず、やや下げすぎた感もある前日の流れを巻き戻す形となり、ドル安・金高の流れが急速に進行し、NY朝には1970ドルまで上昇。昨日の今日で今後の注目度がより高まるPCEインフレが予想を上回る上昇となったことで一時的にドル高・金安の動きを挟む場面もあったものの、東京時間にピークアウトした米10年債利回りが欧州時間以降に低下基調を強め、0.71%台まで下げたことにもサポートされ、NY午後には一時1980ドル超え。1950ドル台の節目を大きく超えたことで、上値トライ再開への可能性。月初の米指標動向にも左右されるものの、目先の抵抗線となりうる20日移動平均線(1980.4)をしっかり上抜けることができれば2000ドルの大台トライへ。
週間ベースでは+27.9ドル、1.43%高で3週ぶりの反発。
NYプラチナは+11.9ドル、1.28%の反発。東京朝の時間帯に928ドルの安値をつけて反発基調スタート、金に追随する流れも上値の伸びは限定的にとどまり、NY朝の950ドルがこの日の高値となってNY市場では揉み合いとなって940ドル付近に収束。結果的には前日下落分の全戻しとなり、2日前のNY終値939.8ドルをわずかに上回る水準に。上値トライへの可能性も若干高まる状況となり、前日高値960ドル、20日移動平均線(957.7)などを超えて8月前半の保ち合い水準960ドル台までが目先の上値目標。ただし920ドルの下値サポートを割れると調整再開で7月末安値900ドル割れも視野に。
週間ベースでは+13.9ドル、1.5%高で3週ぶりの反発。
ドル円は1円20銭弱のドル安円高、1.11%の大幅反落で7月30日(104.79)以来、1ヵ月ぶりの安値。前日のパウエル講演後のドル高円安の流れは東京時間正午まで。107円台前半を目標に上値再トライへのチャレンジは106円90銭台までで失速。東京午後に安倍首相の辞任報道を受けて円高・株安の流れが急進。さすがに憲政史上最長となった政権トップの突然の辞任発表は対外的にもマイナスイメージが拭えず、リスク回避の円高の流れはとまらずNY朝には105円20銭近辺までほぼ一本調子で1円70銭ほどの下落。PCEインフレ上昇で一時105円70銭まで反発したのがほぼ唯一の戻り局面。くじら幕相場を形成し、3日連続で前日ロウソク足実体部を包み込む包み線で方向感日替わりの乱高下状態も示唆。105円台後半の節目を大きく割り込んだことで、目先は米指標などを材料に切り返すことがなければ下値トライ継続へ、7月末水準104円70銭近辺までが短期下値目安に。
週間ベースでは-46銭、0.43%の続落。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場8/28終値とチャート
2020年08月29日(土)時点の相場
国内金:7,226 円 8/28(金)
▼40(
0.55%)
国内プラチナ:3,428 円 8/28(金)
▼31(
0.90%)
NY金:1,974.9 ドル 8/28(金)
▲42.3(
2.19%)
NYプラチナ:940.0 ドル 8/28(金)
▲11.9(
1.28%)
ドル円:105.36 円 8/28(金)
▼1.18(
1.11%)
8/28(金)のその他主要マーケット指標
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