雇用統計もネガティブ・サプライズ、回復すべき雇用は530万
更新日:2021年09月04日(土)
7月はADP雇用のネガティブ・サプライズに対して雇用統計はポジティブ・サプライズ。8月は、またしてもADP雇用がネガティブ・サプライズ。雇用統計も8月は再びポジティブ・サプライズか、いや今度こそADPに同調する形でネガティブな結果に、と見方が分かれるなか、年内テーパリング宣言後の最初の重要指標ということもあり、より一層注目度も増した8月雇用統計。
果たして、結果は後者。デルタ株による感染再拡大の影響は予想以上に大きかったのかもしれません。
テーパリングの前倒し観測台頭もあり得た今回の結果を受けて、とりあえず9月FOMCでのテーパリング宣言は先送り濃厚となり、若干の金の反発余地とドル高の調整余地も若干程度緩和された可能性もありそうです。
コロナで失われた雇用の回復ペースが8月に急ブレーキとなった格好で、コロナ前の水準を100%回復することが当面の目標とすれば、回復すべき雇用は残り530万人。
今後、雇用統計での非農業部門雇用者数が前月比+50万人ペースで回復し続けた場合、100%回復にかかる期間は11ヵ月。試算どおりに順調な回復が続けば来年7月にも、失われた雇用は100%回復する可能性もあります。
このペースなら、それまでにテーパリングを完了して、利上げに向けての議論も進行し、2023年からの利上げも現実味を帯びてくる可能性もありそうです。
さしあたり、9月については既に報じられている大雨や洪水被害などの影響も懸念され、その後も含めてデルタ株の影響や、さらに新たな変異株の影響なども警戒材料となり、雇用回復ペースが後ズレするようなら、利上げに向けた議論も先送りへ、ということも想定されそうです。
雇用統計でのその他警戒指標としては、失業率はコロナ後の最低水準まで改善も5.2%。昨年3月の4.4%、2月の3.5%とは開きがあります。
U6失業率も昨年3月(8.8)以来となる8.8%まで改善も、昨年2月の7.0%まではもう少しの改善余地。
また、U3,U6の主要失業率の改善傾向に対して、黒人の失業率は7月の8.2%から8月は8.8%へと悪化。
長期失業者の割合は37.4%となって昨年12月(37.1)以来8ヵ月ぶり低水準。ゆっくりと改善傾向に向かい始めた状況。
さらに、人口に対する雇用率は8月に58.5%。昨年3月(59.9)以来の高水準も、2月(61.1)とは開き。今年に入ってからは毎月0.1-0.2%程度のスローペースでの改善傾向。
これらの指標もテーパリング終了の頃までには、劇的に改善していることが望ましい状況、と推測されます。
3日のNY金相場は+22.2ドル、1.23%高で3日ぶりの反発。7月29日(1835.8)以来、5週間ぶりの高値。前日から5ドル程水準を切り上げて迎えた8月雇用統計、ネガティブ・サプライズを受けて急騰すると1810ドル台半ばから1830ドル台へと20ドル弱の上昇。米10年債利回りも上昇したことを受けてドル安からドル高への巻き戻しとともに1820ドル付近まで反落する場面もあったものの、乱高下状態を挟んだ後は株安とドル安の流れを受けて1830ドル台後半まで上昇。NY引け後にはわずかに1830ドル割れへと調整も、200日移動平均線(1810.5)に下値をサポートされて90日移動平均線(1818.7)と1820ドルの節目を上方ブレイクした状態を維持、上値トライ再開の様相に。当面の上値目標として、5月前半高値圏1850ドル付近まで上昇余地拡大。
週間ベースでは+14.2ドル、0.78%高となって4週続伸。4週続伸は5月と7月に続いて今年3度め。3ヵ月ぶりに52週移動平均線(1829.5)も上抜け。
NYプラチナは+27.4ドル、2.76%高で3日ぶりの反発。8月13日(1026.0)以来、3週間ぶりの高値。990ドル台後半を中心とした小幅揉み合い推移から、NY朝には雇用統計後の金の急騰に追随、1000ドルの大台を超えて加速すると上方向への節目となっていた1020ドルも突破し、一時1026ドルまで上昇。NY引け後の小幅調整でも1020ドル超えを維持し、ダブルボトム形成と上値トライ再開へと局面打開に成功した可能性。当面の上値目標は7月後半保ち合い水準1060ドル台まで。
週間ベースでは+15.1ドル、1.5%の続伸。
ドル円は23銭のドル安円高、0.21%の続落で8月24日(109.68)以来、10日ぶりの安値。東京時間正午前には菅首相辞任報道を受けて一時リスク回避の円高と日経平均急騰を受けての円安への切り返しと波乱の動きもあったものの、109円80銭近辺から110円07銭程度までの小幅乱高下と限定的。110円前後での小幅揉み合い状態から、NY朝の雇用統計の結果には109円60銭近辺までの急落後、長期金利上昇にも連れて一度は元の水準まで切り返すもドル安の流れは変わらず、一時109円60銭割れへと下落。NY終盤の自律反発も109円70銭近辺までにとどまり、90日移動平均線(109.85)を下抜けて109円80銭から110円10銭台までの小幅保ち合いレンジを下方ブレイク。テーパリング前倒し観測後退とともに一定の調整余地拡大へ、当面の下値目標は8月安値圏、109円前後まで。
週間ベースでは-14銭、0.13%の小幅安で3週ぶりの反落。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場9/3終値とチャート
2021年09月04日(土)時点の相場
国内金:6,990 円 9/3(金)
▼22(
0.31%)
国内プラチナ:3,858 円 9/3(金)
▼6(
0.16%)
NY金:1,833.7 ドル 9/3(金)
▲22.2(
1.23%)
NYプラチナ:1,021.6 ドル 9/3(金)
▲27.4(
2.76%)
ドル円:109.71 円 9/3(金)
▼0.23(
0.21%)
9/3(金)のその他主要マーケット指標
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