ウクライナ危機で買われるドルと金、逆相関に決別
更新日:2022年03月09日(水)
NY金は2020年8月につけた過去最高値が射程圏内に。ウクライナ危機で一方的に買われて急騰局面を形成しているのはドルインデックスも同様。7日には99ポイント台に到達し、2020年5月以来、1年9ヵ月ぶりの高値水準となっています。
ドル建て資産のNY金がドルとは逆相関となりやすいのは、これまでの常識とも。ただし最近の為替市場では、リスク回避の円高よりも、リスク回避のドル高の勢いが勝る場面が目立つようにもなってきました。
経常黒字の減少傾向なども影響し、かつて安全通貨と言われた円の信用度は低下傾向となっている可能性もあり、とりわけ地政学リスクに伴うリスク回避場面での安全通貨は軍事大国である米国通貨ドルの独壇場。そんな展開となりつつあるようです。
逆相関に決別したドルと金は現状、リスク回避のドル買い金買いによって同一方向へと向い始めた状態となり、ドルインデックスは2020年春以来となる100ポイントの大台が目前となり、2017年高値103ポイント台なども意識される状態にも。
ドルインデックスが100ポイント超へと水準を切り上げるようなら、NY金も過去最高値を更新してさらに一段高へ、と向う可能性は高まりそうです。
8日のNY金相場は+47.4ドル、2.37%の大幅高で4日続伸。上げ幅としては今年の絶対値平均15.1ドルの3倍超、昨年1月4日(+51.5ドル、2.72%)以来1年2ヵ月ぶりの急騰。水準としては終値ベースで過去最高値となった2020年8月6日(2069.4)以来、1年7ヵ月ぶりの高値。アジア時間に1990ドル割れへの押し目を挟み、ロンドン序盤にかけて2020ドル超へと反発し、2020年8月中旬の戻り高値2024.6ドル近辺にあっさり到達。一服後のNY市場ではバイデン米大統領がロシア産原油の輸入禁止を発表したことを受けてNY原油が前日高値130ドル付近まで急騰、これに追随する形でNY金も2050ドル超へと急騰、NY午後には一時過去最高値(2020年8月7日:2089.2)以来となる2078.2ドルまで上昇。その後は2030ドル割れへと急反落後に2050ドルまで急反発と高値圏での売り買い交錯からの乱高下。次に意識されるのは過去最高値更新から心理的節目となる2100ドルの大台ライン。下値サポート候補は2000ドル。
NYプラチナは+36.6ドル、3.28%の反発。上げ幅は今年の絶対値平均17.2ドルの2.1倍強、今年5番めの急騰となって昨年6月14日(1165.3)以来、9ヵ月ぶりの高値。この日も原油価格と金の急騰、さらにパラジウムも最高値再トライへと急騰した流れにも追随する格好に。時間外序盤の1120ドル近辺が安値となり、ロンドン市場での1150ドルの攻防を経てNY市場では一時1190ドル超え。NY午後には一時1150ドル割れへと急反落も、NY引け後には1170ドル台へと再浮上。目先は1200ドルの大台ラインとの攻防にも、これを上抜けるようだと昨年5月高値圏1250ドルを目指す展開にも。
ドル円は35銭のドル高円安、0.3%の続伸で2月10日(115.99)以来、1ヵ月ぶりの高値。東京朝には米10年債利回りが1.80%付近へと反発基調継続の兆しとなった流れにも連れ、115円30銭近辺から50銭台へと上昇。保ち合い上限115円60銭手前で上値を押さえられる状態が欧州序盤まで続いた後、これを突破するとNY朝にかけて115円80銭付近まで上昇。バイデン米大統領のロシア産原油輸入禁止発表に伴う原油急騰の場面では株安円高の勢いに押される形で一時115円40銭台まで急反落も、すぐに70銭台へと切り返し。リスク回避でのドル高と円高のせめぎあいも、ドル高優勢となりつつあり、保ち合い上放れにも伴い、ドル高方向への流れが少しづつ進行する可能性も。115円60銭の節目超えが一時的な行き過ぎでなければ今年高値更新トライへ、当面の上値目標は116円半ば辺りまで。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場3/8終値とチャート
9日の国内金価格は+219円、2.71%高となって4日続伸。4日連続で今年10回めの過去最高値更新。上げ幅としては今年の絶対値平均47円の4.6倍超、今年最大で2020年7月27日(+229円、3.31%)以来、1年7ヵ月ぶりの大幅高。RSIは93まで上昇し、2020年1月8日(99.6)以来、2年2ヵ月ぶりの高水準。想定可能な行き過ぎ警戒水準、2021年3月安値(6413)、2020年11月安値、2021年8月安値と2021年6月高値(7335)で形成する逆三尊からの最大上昇目安8257円近辺にもいきなり到達。次に意識される高値警戒水準としては2020年3月安値(5648)から8月高値(7676)までの値幅(2028)を2021年3月安値(6413)を起点にN計算値を適用した場合の水準=8441円。当面の調整目安としては1月末安値からここまでの23.6%戻し(8050)近辺まで。
プラチナ価格は+141円、3.11%の大幅反発。上げ幅としては今年の絶対値平均50円の2.8倍、今年3番めの急騰となって昨年5月18日(4744)以来、10ヵ月ぶりの高値。短期トレンド好転後の堅調推移を維持する形での一段高、短期上値目安11月高値(4320)から12月安値(3694)までの161.8%戻し(4707)近辺まで、もう少しの上昇余地。若干の行き過ぎで昨年5月高値4750円が意識される可能性も。下値サポートは4530円、割れるようだと4400円程度までの一段安も。
※参考:
金プラチナ国内価格3/9とチャート
2022年03月09日(水)時点の相場
国内金:8,299 円 3/9(水)
▲219(
2.71%)
国内プラチナ:4,678 円 3/9(水)
▲141(
3.11%)
NY金:2,043.3 ドル 3/8(火)
▲47.4(
2.37%)
NYプラチナ:1,153.2 ドル 3/8(火)
▲36.6(
3.28%)
ドル円:115.66 円 3/8(火)
▲0.35(
0.30%)
3/8(火)のその他主要マーケット指標
世界のプラチナ需給-2021年第4四半期 03/10(木)ロシアの世界シェア37%、供給不安のパラジウムは一時3300ドル 03/08(火)ウクライナ危機で注意すべき想定可能な国内金価格の高値目安 03/07(月)雇用は良好も賃金上昇率鈍化でドル高限定的、金は一段高 03/05(土)
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