金プラチナ短期相場観
2017年第2四半期:世界の金需要~8四半期ぶりの低水準
更新日:2017年8月4日(金)
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した「Gold Demand Trends Q2 2017」によれば、2017年第2四半期の世界の金需要は953.4トン。前期比-97.0トン(-9.2%)となり、2015年第2四半期(921.0トン)以来8四半期ぶりの低水準へと減少。前年同期比でも-102.2トン(-9.7%)の大幅減となりました。
内訳は、
宝飾品:480.8トン、前期比-5.9トン(-1.2%)、前年比-102.2トン(-9.7%)、シェア50.4%。
産業用:81.3トン、前期比+2.6トン(+3.3%)、前年比+1.2トン(+1.4%)、シェア8.5%。
投資:269.9トン、前期比-105.9トン(-26.3%)、前年比-153.4トン(-34.1%)、シェア31.1%。
公的機関:94.5トン、前期比+12.3トン(15.0%)、前年比+16.1トン(+20.5%)、シェア9.9%。
世界の金需要全体の8割前後を継続的に占める宝飾品と投資需要が減少したことが、そのまま全体の需要減に反映された形となっています。
シェア8%前後をコンスタントに継続する産業用需要では、ワイヤレス充電やLED、スマートフォン端末などの需要が好調を支える要因となっているようです。
シェア10%前後での上下動が続く公的機関の金保有量では、継続的に買い増しが続くロシア中銀と今年から買い転換したトルコ中銀の買い越し量が突出し、今回の増加に貢献しています。
投資需要の内訳は、コインやバーなどの現物投資が240.8トンで前期比-50.1トン(-17.2%)、前年比+27.9トン(+13.1%)。ETF関連は56.0トンの買い越しも前期比-55.9トン(-50.0%)、前年比-181.4トン(-76.4%)の大幅減。
現物投資需要は2四半期連続の減少で3四半期ぶりの低水準にとどまり、ETF関連では2四半期連続の買い越しながら、今年前半の金価格の上昇が限定的となったこともあり、2016年第1四半期から第3四半期までの記録的な買い越し増加幅と比較すれば、大きく見劣りする状況もやむなし、といったところでしょうか。
ただし、金ETF保有量の地域別内訳では、全体の5割強を占める北米が前年同期比で-94トン(-7.1%)となったのに対し、全体の4割強を占める欧州では前年同期比+215トン(+28.2%)となり、欧州でのシェアは飛躍的に伸びています。
金消費需要(宝飾+現物投資)としては721.6トンとなり、総需要の75.7%を占め、前期比-56トン(-7.2%)、前年比+61.9トン(+9.4%)となっています。
このうち、宝飾需要でインドと中国の2カ国が占める割合は55%、現物投資需要は42.9%。
世界の金消費需要の半分を占める中国とインドの需要はやや減速傾向となり、特に現物投資需要でインドを大きく上回る水準となっていた中国も足下では急減速となっています。
なお、インドで7月から導入された物品・サービス税(GST)により金購入時の税率も引き上げられることになり、この影響による駆け込み需要分が下期に計上される見通しで、第3四半期にはインドの金消費需要増との見方も。
金消費需要で中国(200.3トン)、インド(167.4トン)に続く上位10カ国は、米国(37.1)、トルコ(34.4)、ドイツ(23.2)、タイ(17.7)、インドネシア(15.8)、サウジアラビア(14.1)、UAE(13.6)、ベトナム(12.7)。ちなみに日本は5トンで19位。
前期からはトルコが7位から4位へ、インドネシアが10位から7位へとランクアップ、サウジアラビアが圏外から7位へランクイン。代わってイランが11位と圏外へ。トルコでは景気回復と高インフレ、通貨トルコリラの安定化などが大きく影響しているものと見られます。
3日のNY金相場は0.31%の小幅続落。NYダウは今年2月の12日続伸に次ぐ8日続伸での最高値更新、この下支え要因の一つともなっているドル安基調も続き、対ユーロでも対円でもドル安が進行し、ドルインデックスは近年のドル高推移の最下限92.70ポイント付近で下値トライの動き。ドル安に支えられるNY金も時間外の大幅調整局面から反発し、1260ドル前半から1270ドル台へ。NY市場では7月のISM非製造業景況指数が予想外に11カ月ぶり低水準へと下振れ、引け後にはモラー特別検察官がワシントンの大陪審を選定との報道なども下支え材料に。もう一段のドル安リスクも高まり、雇用統計もそれほどの好結果は予想されない状況から、過熱感をわずかに下げたNY金を押し上げる展開も予想され、目標水準1290ドル近辺に向けての再トライも。ポジティブ・サプライズの場合には1260ドル近辺までは下げやすく、その度合によっては1250ドル近辺までの大幅調整も警戒される。
NYプラチナ相場は1.13%の大幅高となって1年ぶりの6日続伸。4月21日(977.6)以来3カ月半ぶりの高値圏となり、短期上値目標970ドル近辺に到達。高値では5月高値969ドルと6月高値969.5ドルにほぼ並ぶ968ドルまで上昇し、重要な節目水準となりうるこの970ドル近辺ではいったん上値を押さえられやすく、ここを突破するためにはそれなりのエネルギーときっかけが必要。この水準を超えた場合、5月安値894.5ドルと7月安値891.4ドルとで構成するダブルボトムが完成し、中期スパンでは1040ドル近辺を目指す流れとなる可能性も。雇用統計はそのきっかけにはなりうるが・・・。
ドル円は3日ぶりの反落で0.59%のドル安円高。BOEの金融政策委員会(MPC)では現状維持も前回の5対3から6対2の決定となり、成長見通しも引き下げ、カーニー総裁の発言もややハト派寄りとなってポンドが急落、ポンド円の下落に連れてドル円も110円台前半へと下落。ISM非製造業景況指数は想定外の下振れで110円割れへと急落、モラー特別検察官の大陪審選定報道にはロシアゲート疑惑問題の進展観測も高まり109円80銭台まで下落。今朝の東京市場では110円台回復も7月末安値110円20銭台を下回っており、下値トライ進行の兆しも。雇用統計が予想を上回る結果とならない限り、予想通りの場合でもドル売りが進行しやすい状況となり、下値目安としては6月安値圏109円前後まで。ポジティブ・サプライズで111円台回復なら112円近辺までの反発も。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/3終値とチャート
4日の国内金価格は0.17%の小幅続落。4830円の節目突破を目前に調整局面が続き、上値トライに向けての勢いも失速気味に。想定シナリオとしては、雇用統計はややネガティブな結果となってドル安へ、NY金の上昇に連れて国内価格は節目突破再トライへ。上値トライスタートとなった場合の当面の目標水準は今年高値更新で4900円近辺までに下方修正。ポジティブな結果となった場合には逆の展開で国内価格はもう一段の調整となって上値トライは仕切り直し、4750円台から4830円までのレンジ内推移継続へ。
週間ベースでは-5円(0.1%)となって3週間ぶりの小反落。
プラチナ価格は1.11%の大幅高となって5日続伸。6月半ばから続いた長期鍋底保ち合い上抜けに伴う上昇トレンドが加速し、5月30日(3665)以来2カ月ぶりの高値水準、5カ月ぶりの200日移動平均線(3668)超えも目前に。金との価格差は5月17日(1150)以来2カ月半ぶりとなる1153円まで急縮小、節目の1200円を大きく割り込んで価格差もピークアウトの流れ加速の兆し。NYプラチナの一服感により、続伸は途切れる可能性もあるものの、既に流れが変わっており、もう一段の上昇傾向は持続見込み。当面の上値目標は5月高値を超えて3700円台回復、3710円台辺りまで。
週間ベースでは+102円(2.87%)の大幅反発。週間上昇率では年初の+5.74%以来、7カ月ぶりの大幅上昇。
※参考:金プラチナ国内価格8/4とチャート
- 2017年8月4日(金)時点の相場
-
国内金 : 4,810 円 8/4(金) ▼8(0.17%) 国内プラチナ : 3,657 円 8/4(金) ▲40(1.11%) NY金 : 1,274.4 ドル 8/3(木) ▼4.0(0.31%) NYプラチナ : 964.6 ドル 8/3(木) ▲10.8(1.13%) ドル円 : 110.04 円 8/3(木) ▼0.66(0.59%)
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