金プラチナ短期相場観
完全雇用に黄色信号?NFP年間平均は9年ぶり低水準
更新日:2019年6月8日(土)
低インフレが一時的と見る背景の一部には、完全雇用の状態なればこそ、という面もあったはずです。しかし、その完全雇用にボトムアウト警戒感も漂い始め、黄色信号が点灯したかもしれない状況にもなってきました。
ネガティブ・サプライズとなった米5月雇用統計で、非農業部門雇用者数(NFP)の伸びは前月比+7.5万人とADPの低調な結果に追随。
ADPはブレやすく、NFPとは一致しないケースも多い、とたかをくくっていた向きには厳しい現実を突きつけられた格好です。
NFPもしばしば大幅下振れとなり、前月比1桁台の増加にとどまるケースも散発的に見られます。しかし、2月(+5.6)に続いて3カ月ぶりの1桁台となり、今年に入って2度め。2018年には1桁台は1回もなく、2017年には1回、年2回の1桁台は2016年以来。しかし、年間平均で比較すると2016年は+19.3万人、今年は5月時点で+16.4万人にとどまります。これは2010年(+8.6)以来、9年ぶりの低水準。
失業率は市場予想どおりの3.6%となりましたが、1969年12月(3.5)以来、49年4カ月ぶり低水準となった4月から横ばい推移で下げ渋り。以前、回復見通しとされた5%、3月FOMCでの長期見通し4.4%のいずれも大きく下回る水準にあり、ここからさらに低下する確率と、上昇し始める可能性とを比較したくなる状況です。数カ月後にはこれが底打ちの兆しだったことになる可能性も否定はできません。
止むを得ずパートタイム労働に従事する人なども含めたU6失業率は7.1%となり、2000年12月(6.9%)以来18年5カ月ぶり低水準。以前、回復目安とされた8.8%を大幅に下回る水準となり、過去最低(2000年10月、6.8%)に迫る最低レベルに到達しました。
長期失業者の割合は22.4%で昨年9月(22.8%)以来、8カ月ぶりの高水準。2008年7月(18.9)以来10年半ぶり低水準となった1月の19.3%からは反発基調。回復目安とされた19.1%付近まで低下した後の反発で12カ月平均21.46%も上抜けてきました。
平均時給ベースの賃金上昇率も前年比+3.11%にとどまり、8カ月ぶり低水準。3カ月平均でも+3.20%となり、7カ月ぶり低水準。+3.3%付近で伸び悩む状態が続き、減速し始めたようにも見えます。
「完全雇用を維持するための利下げ」が正当化される可能性も高まってきそうです。
「適切に行動する」と言ったパウエルFRB議長の心を揺さぶる結果となったかもしれません。
7日のNY金相場は+3.4ドル、0.25%高となって1年5カ月ぶりとなる8日続伸。終値ベースでは今年高値となった2月20日(1347.9)に迫る3カ月半ぶり高値水準となり、高値では一時1350ドルを超え、昨年4月19日(1357.7)以来、1年2カ月ぶり高値水準。前日NY引け後には1340ドルを割れて調整の動きも雇用統計前というタイミングでは下げ渋り、1340ドルまで戻して迎えた米5月雇用統計のネガティブ・サプライズに10ドルほどの急騰。早期利下げを織り込んでいく状態にもなり、目先予想される調整も控えめにとどまる可能性も。ただし、目先はいったん1350ドルラインが抵抗水準となる可能性もあり、20日移動平均+2.5%の水準1330ドル付近までの調整はいつ入ってもおかしくはない状況か。
週間ベースでは+35ドル、2.67%高で3週続伸。2018年3月19日からの週(+37.6ドル、2.87%)以来、1年2カ月ぶりの大幅上昇。
NYプラチナは+2.4ドル、0.3%の小幅続伸。800ドルの大台ラインで下値を固めつつ、雇用統計後の金の急騰に連れての上値トライ局面では810ドル超えも一時的。短期的な流れは反発方向優勢の状況ながら、上値も重い状態も継続。810ドルから右肩下がりの20日移動平均線(817.4)までが目先の抵抗水準にも。これが反発局面本格化への壁となり、攻防ポイントにも。これを突破して820ドル超へと抜け出すことができれば一段高の展開へも。金との価格差は3日連続で過去最大を更新、540ドルに。
週間ベースでは+11.9ドル、1.5%高となり7週間ぶりの反発。
ドル円は20銭ほど水準を切り下げて4日ぶりの反落。6月に入って底打ち、反発への可能性を示すジリ高推移の展開はこの日も続き、雇用統計前には108円60銭台まで上昇し、6月高値を更新。しかし、雇用統計後の急落で108円を割り込んで107円90銭割れ。ただし、6月に入って3日連続下値を支えた107円80銭台がこの日もサポート。NY時間にはジリジリと値を戻す展開となって108円10銭台を回復。10日発動予定となっていたメキシコへの関税についてはトランプ米大統領が無期限見送りを表明。週明けのサポート材料となり、上方向に108円半ばを超えることができれば109円台回復トライへも。
週間ベースでは-0.09円、0.08%の小幅安で3週続落。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場6/7終値とチャート
- 2019年6月8日(土)時点の相場
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国内金 : 4,975 円 6/7(金) ▲11(0.22%) 国内プラチナ : 3,001 円 6/7(金) ▼20(0.66%) NY金 : 1,346.1 ドル 6/7(金) ▲3.4(0.25%) NYプラチナ : 806.1 ドル 6/7(金) ▲2.4(0.30%) ドル円 : 108.19 円 6/7(金) ▼0.19(0.18%)
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