雇用統計による上下のレンジブレイクをウクライナ情勢が揉み消し
更新日:2014年05月03日(土)
ある程度の好結果は予想されていた米4月の
雇用統計は、それを上回るポジティブ・サプライズとなりドル買い・金売りが急加速。しかしこの流れに急ブレーキをかけて逆流させたのは、市場リスクとしては希薄化しつつあったウクライナ情勢の悪化。
非農業部門雇用者数(NFP)は市場予想を大幅に上回り、過去2ヶ月分も上方修正、寒波の影響は1月までに限定され、2月以降は影響がなかったかのような数値に。失業率もリーマン・ブラザースが破綻した2008年9月の6.1%に次ぐ低水準となる6.3%へ。労働参加率が62.8%と3月の63.2%から低下したことなど、若干の懸念材料は残るものの、
NFP増減数は今年の年間平均で+21.4万人へと上昇し、過去10年間でのピークだった2005年の平均値+20.9万人を超える状態。
1-3月期のGDP速報値が0.1%と非常に低調だったことを完全否定するような結果で、今後のGDP改善への期待も高まる状況。
こうなると、緩和縮小の早期完了や利上げ時期の前倒し観測にもつながることとなり、ドル買い圧力が強まりドル円の急上昇も必然。しかし、102円台半ばから急騰し103円台にタッチしてやや押し戻されたところで流れが止まり、やや不穏な動きに。金相場も急落後の急反発でいったん流れがとまる不自然な流れ。
その後、ウクライナの交戦状態が伝わったことで市場の流れは反転、長期金利の低下、株価の下落とともにドル円も急落し、金は急騰。それぞれレンジの上下をいったんブレイクしたはずの流れがすっかり揉み消されてしまった形。
ウクライナ東部のスラビャンスクでは親ロシア派をウクライナ政権が攻撃、ロシアは国連安保理への緊急会合を要請、南部のオデッサでも衝突が起こり、火災により40人以上が死亡。事態の急変により、2週間前の
4者会談によるジュネーブ合意も完全に反故にされた形で、これもまた揉み消し。
欧米側の対応を含め、この連休中の動向にも再び注目が集まります。
NY市場、金相場は5日ぶりの反発で1.52%の大幅高。雇用統計のポジティブサプライズに急落で反応するとサポートラインの1,280ドルを割れて1,272ドルまで下落。しかし下値追いは限定的、すぐさま1,280ドル台へと切り返し、しばしの小康状態をはさみ、ウクライナ情勢悪化が伝わると急騰。10ドルほど下落して30ドル上昇という荒い値動きで、結果的に1,280ドルのサポートラインが大きく作用し、直近レンジ上限の1,300ドルを回復。目先は不安定な状態が予想されるなか、上方向には4月中旬の高値圏1,330ドル近辺までの視界が開けた形。
週間ベースでは+2.1ドル(+0.16%)とわずかに上昇し、2週続伸。
プラチナ相場は金の反発傾向に追随し、3日ぶりの反発で0.92%高。一時4月16日以来となる1,445ドルまで上昇し、直近の
上値メドとしていた1,450ドル手前の水準に到達。雇用統計の好結果には売りで反応しないプラチナのモメンタムは上方向へ。なお、トムソン・ロイターGFMSによれば、今年の平均相場価格は昨年の1,487ドルから2%低下して1,457ドル程度の見込みとのこと。現時点での今年の平均は1,430.6ドル。
週間ベースでは+16.4ドル(+1.15%)の反発。
ドル円は0.13%の小幅反落。
雇用統計に4月8日以来となる103円台まで急騰し、レンジ上限の102円70銭を上回る102円80銭近辺での揉み合い状態が1時間余り続いた後に急落。再びレンジ下限の102円10銭台へ。レンジブレイクが揉み消された形で元の保ち合い水準に戻り、仕切り直しの展開へ。ウクライナ情勢が落ち着けば上値トライ再開か。
週間では+0.04円(+0.04%)とわずかに反発。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場5/2終値とチャート
国内金価格は週間で-34円(-0.75%)となり3週続落、プラチナは+33円(+0.67%)と4週間ぶりの反発。いずれも現状維持なら週明けの大幅上昇も見込まれるものの、NY市場、為替市場ともに不安定な状態が週明けも継続することが予想され、連休明けの国内価格は大きく変動している可能性も。
2014年05月03日(土)時点の相場
国内金:4,517 円 5/2(金)
▼29(
0.64%)
国内プラチナ:4,994 円 5/2(金)
▼7(
0.14%)
NY金:1,302.9 ドル 5/2(金)
▲19.5(
1.52%)
NYプラチナ:1,440.7 ドル 5/2(金)
▲13.2(
0.92%)
ドル円:102.19 円 5/2(金)
▼0.14(
0.13%)
5/2(金)のその他主要マーケット指標
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