ユーロ圏のリスク要因?微妙に低調なイタリア経済指標
更新日:2018年08月07日(火)
最近、ハワイのキラウエアや中米のグアテマラの火山噴火による大きな被害が報道されていますが、ニューズウィークの「世界の危険な火山ビッグ5」という記事によると、ビッグ5のうち2つが存在するイタリアを、特に危ない国として挙げています。
イタリアの2つの危険な火山は、イタリア第3の都市ナポリの東西両隣に位置しており、いずれかが噴火した場合でも大きな災害となるリスクが指摘されています。
ユーロ圏第3の経済大国でもあるイタリアの主要都市付近で甚大な被害が発生した場合には、ユーロ圏経済にも大きなマイナス要因となることも警戒されます。
しかし、自然災害がなくても最近のイタリアはユーロ圏経済にとってのリスク要因となっている可能性もありそうです。
最近、ユーロ圏の景気低迷が指摘されていますが、そのなかでもイタリアがその牽引役の一部を担う構図となっている様子も見受けられます。
ユーロコイン指数(Euro Coin:Euro Coincident Indicator)は、ロンドンの経済政策研究センターとイタリア中央銀行が共同算出する経済指標で、実態経済の動向をリアルタイムに示す指数です。鉱工業生産や景況感、物価、株価等も加味し、ユーロ圏の経済動向を包括的に示す指数として開発されたものです。
そして、ユーロコイン指数のイタリア版がイタコイン(Ita-Coin)として、イタリア中銀から発表されています。
ユーロコインは今年2月に0.96となり、2000年5月(1.00)以来17年9カ月ぶり高水準を記録した後、4カ月連続の急低下で6月には0.48。2016年11月(0.45)以来、1年7カ月ぶり低水準まで落ち込みました。そして7月には0.49とわずかに反発。ユーロ圏経済の失速状態もいったん下げ止まりの可能性を示す状態となっています。
これに対してイタコインは、2月に0.56と2004年2月(0.62)以来14年ぶり高水準となった後、7月の0.00まで5カ月連続の低下で2016年10月(-0.02)以来、1年9カ月ぶり低水準。マイナス圏入り目前の状態となっています。
この傾向は他の指標でも同様で、
欧州委員会発表の景況感指数でも、イタリアは7月に109.0となり、フランスはもちろん、オランダ、オーストリア、ポルトガルなどを下回り、ユーロ圏のなかでは下位に低迷。
マークイット発表の製造業PMIでもイタリアは7月に51.5と21カ月ぶり低水準となり、調査対象8カ国のなかではスペイン(52.9)やギリシャ(53.5)などにも水を空けられての最下位となっていました。
イタリアでは3月の総選挙を経て、かつて「ユーロ離脱」を標榜していた「五つ星運動」と右派の「同盟」が連立政権を樹立、5月にはばらまき色の濃い経済政策を発表するなどしてEUの厳格な財政規律に反するとして市場の警戒感も高まりました。これを受けてイタリア10年債利回りは5月末にかけて1%台後半から3%台へと急騰していました。その後はいったん落ち着いたものの、最近では予算案を巡って連立与党内にEUの財政規律を超えて歳出を増やそうとする動きなどもあり、経済・財務相が辞任に追い込まれるのでは、との懸念が高まる場面もありました。
足下のイタリア10年債利回りは先週末に再び3%を超え、今週には2.9%台に落ち着きそうな状況とはなっています。
しばしば政局不安をきっかけにユーロ不安を引き起こすイタリアは、景況感などでもユーロのリスク要因となっている様子です。
ユーロ圏経済の失速状態からの回復とECBの金融政策正常化に向けては、ドラギECB総裁のお膝元、イタリアの政局安定と景気の安定化が必要となり、イタコインの下げ止まりの有無が鍵を握ることにもなりそうです。
6日のNY金相場は-5.5ドル、0.45%の反落。昨年7月13日(1217.3)以来、ほぼ1年1カ月ぶりの安値水準。ユーロ安ドル高基調が続き、ドルインデックスが95ポイント台で高止まりとなるなかで週明け時間外から軟調な流れで節目の1220ドル割れ。安値では1214ドルまでにとどまり、先週末安値を上回り、今年最安値となった7月19日の1210.7ドルも下回らず、1210ドル台では下げ渋る様子も。しかし、ジリジリと水準を切り下げる展開となって7月半ば以降の保ち合いからはわずかに下方ブレイクの兆し、下値模索の展開がもう一段続く可能性。当面の下値目標水準は1200ドルの大台割れから1180ドル台も視野に。
NYプラチナ相場は-10.6ドル、1.27%の大幅安となって3日ぶりの反落。先週末に保ち合い上限付近となる840ドル台半ばまで上昇して反落した流れが週明けも継続。反発方向への流れは金の軟調推移によって伸び悩む展開が続き、その勢いも後退気味。20日移動平均線(830.9)との攻防も続き、7月以降の三角保ち合いのレンジも縮小中。目先の節目は840ドルと810ドル台、上方ブレイクなら6月末高値880ドル台辺りまでが目標水準に。金が一段安となってこれに追随する展開で下方ブレイクとなれば下げ幅拡大の可能性もあり、今年最安値790ドル台までで下げ止まるか、多少の安値更新も。
ドル円は10銭のドル高円安となって4日ぶりの小反発。東京市場では先週末安値111円10銭台での底堅さを確認し、反発の流れとなった欧州時間には111円50銭台までと上値も限定的。材料不足もあり上下40銭にも満たない小動きに終始。米国の対イラン制裁発動や、日米通商協議などを控えて円高リスクが高まる展開も想定されるのに対し、対ユーロや新興国通貨などに対してドル高基調が続いていることもあり、111円台での保ち合い推移の展開はもうしばらく継続か。レンジブレイクとなれば上下それぞれ1円超の値動きにも。
※参考:
金プラチナ相場とドル円 NY市場8/6終値とチャート
7日の国内金価格は-22円、0.47%の反落。2016年12月29日(4602)以来、1年7カ月ぶり安値水準での一段安となって
短期下値目安4630円台に到達。また、
月足・一目均衡表の雲の下限にもピタリと到達。短期的にも長期的にもサポートされてもおかしくない水準に達した状態ながら、NY金の下値警戒感が高まりつつある状態と円高警戒感も強まりやすい現状では、一時的な下振れも想定せざるを得ない状況か。NY金が1200ドル割れを試す展開となれば、大幅ドル高円安とならない限りは4600円割れも。反発方向には、4月以降の下落幅の23.6%戻し、4721円まで戻すことができるかどうかがポイントに。これを超えるともう一段の反発局面形成で38.2%戻しとなる4770円台が次の目安にも。
プラチナ価格は-32円、1%の大幅安となって3営業日ぶりの反落。7月の抵抗水準、9-21日移動平均線(3183-3194)が下げ止まりそうで下げ止まらず、またも抵抗水準となっての反落。7月以降、安値圏での保ち合いが続き、反発基調加速のチャンスをうかがいながらも逆に上値は徐々に切り下がる展開。やはり金の軟調推移が足枷に。目先、3190円と3150円が上下の節目となり、上方ブレイクできれば潮目が変わり始める可能性もある3300円台回復を目指す展開にも。下方ブレイクとなれば一段安の展開も余儀なくされ、7月3日の3117円では下げ止まらず、3000円台半ばも視野に。
※参考:
金プラチナ国内価格8/7とチャート
2018年08月07日(火)時点の相場
国内金:4,638 円 8/7(火)
▼22(
0.47%)
国内プラチナ:3,158 円 8/7(火)
▼32(
1.00%)
NY金:1,217.7 ドル 8/6(月)
▼5.5(
0.45%)
NYプラチナ:826.3 ドル 8/6(月)
▼10.6(
1.27%)
ドル円:111.38 円 8/6(月)
▲0.10(
0.09%)
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